第1編 《人事行政》

【第2部】 次世代の行政の中核を担う30代職員の育成と公務全体の活性化 ~意識調査を通じて課題と対策を探る~

おわりに

この報告では、平成28年度報告で相対的に満足度が低いことが確認された30代職員を対象として、キャリア形成や職場でのチャレンジ、業務効率化・人員配置等の職場環境、上司によるマネジメントと職場でのコミュニケーション等について、新たにアンケート調査を行うなどにより、具体的な不満や不安の所在を探り、課題や取組等について考察した。

30代職員の満足度が相対的に低い理由の一つとして、30代職員が、経験の浅い20代職員への指導や40代以上の管理職員との調整を行いつつ、実務の中核として困難な課題に直接対応すべき立場となっていることが考えられるが、こうした状況は、民間企業においても同様に存在する組織上の構造的な問題であるとも推測される。

今回調査の結果からは、多くの30代職員が業務多忙や長時間労働に悩んでいる一方で業務の効率化・合理化を進められる余地があると考えていることや、上司の指導方法等の受け止めや職場でのコミュニケーションの変化に関して30代職員と課長級職員の間で認識に差異があることなどが分かり、長時間労働の是正と柔軟な働き方の促進、マネジメントに関する意識の改善、コミュニケーションの改善等が組織的な課題として明らかとなった。また、30代職員が、将来に向けてのキャリア形成に不安を抱えていることや、自らは新たな提案やチャレンジをしていると考えている一方で、課長級職員は30代職員に更に主体性やチャレンジ精神の発揮を望んでいるという認識のギャップがあることなどから、30代職員のキャリア形成等に関する不安の解消等を図りつつ、全体の奉仕者としての意識の維持・向上やチャレンジ精神の更なる高揚をいかに図っていくかといった育成面での課題も明らかとなった。

これらの課題は、30代職員のモチベーションの維持・向上が公務全体の活性化につながるという観点から、また、30代職員が将来の経験豊富な管理職員又はベテラン実務者として活躍することへの期待を込める観点からも、解決に向けた取組が求められる。加えて、今回調査は、30代職員の意識を切り口として行ったが、見えてきた課題は公務職場全体に係るものと言え、その解決に向けては、関係者が十分に連携して取組を進めるべきものである。

なお、今回調査に対して、短い調査期間であったにもかかわらず、任意の自由記載を含め、30代職員から多数の回答が寄せられていることからは、30代職員が種々の課題を解決し、より能率的で質の高い公務サービスを提供できる公務職場を実現しようとする意識を有していることがみて取れる。

本報告では、それも踏まえ、30代職員など若手職員の意見を取り入れた業務効率化・合理化の推進をはじめとして、職員による自らの適性の見極めとキャリア形成イメージの確立、上司によるマネジメントの向上等について提言を試みた。各府省人事当局や職場の管理職員において職場環境づくり等に取り組む際の一助としていただくことを期待するとともに、人事院としても、各種の対策を検討し実施していく所存である。

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