情報機器作業従事職員に係る環境管理、作業管理、健康管理等について
(令和元年10月30日職職―136)
(人事院事務総局職員福祉局職員福祉課長発)
最終改正:令和3年12月27日職職―418
 
 標記については、「情報機器作業従事職員に係る環境管理、作業管理、健康管理等について」(令和元年10月30日職職―135人事院事務総局職員福祉局長)が発出されましたが、その運用に当たっては、別添「情報機器作業従事職員に係る環境管理、作業管理、健康管理等のための手引」により取り扱ってください。これに伴い、平成14年12月16日勤職―347職員課長通知は廃止します。
 
以   上
 
 
 
(別添)
 
情報機器作業従事職員に係る環境管理、作業管理、健康管理等のための手引
 
1 指針の基本的考え方
 (1) はじめに
   近年、ハードウェア・ソフトウェア双方の技術革新により、職場におけるIT化はますます進行しており、情報機器作業に従事する職員(以下「従事職員」という。)の範囲はより広くなり、作業形態はより多様化してきています。これに伴い、従来のように作業を類型化してその類型別に健康確保対策の方法を画一的に示すことは困難で、個々の職場のそれぞれの作業形態に応じきめ細かな対策を講ずることが必要になっています。
   人事院では、これまで「VDT作業従事職員に係る環境管理、作業管理及び健康管理について」(平成14年12月16日勤職―346勤務条件局長)(以下「勤務条件局長通知」という。)により、各府省に対して、従事職員の問題に対処するよう要請してきたところです。
   その後のIT化の進行に伴い、タブレット、スマートフォン等の携帯用情報機器を含めた情報機器が急速に普及し、これらを使用して情報機器作業を行う労働者の作業形態が多様化していることを踏まえて、令和元年7月12日には、厚生労働省から「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(基発0712第3号労働基準局長)(以下「労働基準局長通達」という。)が発出されました。
   人事院においても、勤務条件局長通知発出後の国の職場における情報機器の導入状況等を踏まえ、勤務条件局長通知の基本的な考え方については変更せず、従来の視覚による情報を基に入力操作を行うという作業を引き続き対象としつつ、情報技術の発達や多様な働き方に対応するよう健康管理を行う作業区分を見直すなど、勤務条件局長通知の内容を見直し、新たに「情報機器作業従事職員に係る環境管理、作業管理、健康管理等について」(令和元年10月30日職職―135職員福祉局長)(以下「指針」という。)を発出しました。
   この手引は、指針の趣旨を徹底するため、指針に示した内容の説明、実施に際しての留意事項等を取りまとめ、各府省における情報機器作業に係る環境管理、作業管理、健康管理等の一層の促進を図ることを目的に作成したものです。
 (2) 健康安全管理の取組み
   従事職員の心身の負担を軽減し、情報機器作業を支障なく行い、公務の能率を維持、向上させるためには、従事職員に対し、作業環境を整え、適正な作業管理を行い、健康診断及び健康安全教育を実施する等健康の保持増進及び安全の確保に努めることが重要です。これらを効果的に進めるためには、健康安全管理体制の一層の整備と健康安全管理に携わる職員の一体となった積極的な活動を基本とし、加えて、従事職員や管理監督者を含めた職場全体の取組が大切です。
   国の職場の健康安全管理については、人事院規則10―4(職員の保健及び安全保持)の規定によって、各省各庁の長は、健康安全管理に関する規程を作成し、健康・安全管理者、健康管理医、危害防止主任者等を指名するなど健康安全管理体制の整備を図った上で、勤務環境の整備、有害業務についての健康障害の防止、打鍵作業等の継続作業の制限、健康診断の実施と適切な事後措置など、職員の健康の保持増進及び安全の確保に必要な措置を講ずることとしています。また、業務内容を変更した場合等における健康安全教育の実施や職員の意見を聞くための措置を講ずることについても規定しています。
   従事職員に係る環境管理、作業管理及び健康管理についても、当然、これらの規定に基づく管理体制や各種の措置の一環として実施されることになりますが、更に情報機器作業の特性に配慮した観点から実施しなければなりません。具体的には、職場に情報機器等を導入するに当たっては、その選定に際して、労働衛生学的及び人間工学的な面からの慎重な配慮はもとより、導入後の作業環境の整備、作業形態、作業手順、人員配置、従事職員の健康保持、健康安全教育等について事前に十分な検討及び準備を行い、また、情報機器作業が開始された後においても、常に作業状況等の検討を行い、その結果得られた改善事項については速やかに具体的方策にフィードバックするなど、多方面からの適切な対応が必要です。
 (3) 情報機器作業 
   指針では情報機器作業を「パソコンやタブレット端末等の情報機器を使用して、データの入力・検索・照合等、文書・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業」と定めています。
   ここでは、必ずしもキーボードを備えていなくても、ディスプレイを備えた情報機器であれば対象としています。
   また、ディスプレイとしては、液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、有機エレクトロ・ルミネッセンス・ディスプレイ(有機EL)、プラズマ・ディスプレイ、蛍光表示管ディスプレイ、発光ダイオード・ディスプレイなどがあります。
   情報機器作業における身体的な特徴は「拘束性」という言葉で表されます。これは情報機器作業においては、画面からの情報を正確に得るために頭(眼)の位置が限定されること、さらに、特にキーボードからの入力においては、手の位置も限定されることから、身体の動きが極端に制限されることによります。 
   また、決められた時間内に処理すべき作業量が多い場合などには精神的な負荷も加わり、心身ともに「拘束性」が強くなります。
   情報機器作業は、作業の種類及び作業時間により、作業区分が作業時間又は作業内容に相当程度拘束性があると考えられるもの及びそれ以外のものに区分されますが、それぞれの従事職員がどの作業区分に該当するかは、指針の別紙「情報機器作業の作業区分」に照らして健康管理者等が判断し、所要の措置を講じてください。
   「拘束性」が強いかどうかの判断は容易ではない場合が少なからずあります。従事職員自身が気付かないことも多く、また個人差も大きいことから、健康管理者や健康管理医等の客観的な観察も必要です。
 
2 環境管理
 (1) 照明及び採光
  ア 室内の照明が不適切だとキーボード面やディスプレイ画面などに明暗が生じ、眼の疲労の原因となります。室内はなるべく明暗の差がなく、かつ、まぶしさを生じさせないようにします。
  イ 「書類上及びキーボード上における照度」とは、書類やキーボードなどに入射する光の明るさをいいます。
    「ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさとの差はなるべく小さくすること。」とは、瞳孔は明るさに応じてその大きさを調節しており、一般的に、ディスプレイ画面や書類・キーボード面と周辺の明るさの差が大きいと眼の負担が大きくなるので、なるべく明るさの差を小さくする必要があるからです。
  ウ 「グレア」とは、視野内で過度に輝度が高い点や面が見えることによって起きる不快感や見にくさのことで、光源から直接又は間接に受けるギラギラしたまぶしさなどをいいます。
    従事職員がディスプレイを注視している時に、視野内に高輝度の照明器具・窓・壁面や点滅する光源があると、まぶしさを感じたり、ディスプレイに表示される文字や図形が見にくくなり、眼疲労の原因となります(眼の明るさに対する調整は網膜の順応や瞳孔の大きさによって行われますが、強い光に対する調整が優先されるためにグレアがあると比較的暗い画面上の文字等は見にくくなります。)。
    また、これらがディスプレイ画面上に映り込む場合も同様です。したがって、ディスプレイを置く位置を工夫して、グレアが生じないようにする必要があります。
    映り込みがある場合には、ディスプレイ画面の傾きを調整することなどにより、映り込みを少なくすることが必要です。
    一般にグレアを防ぐために、近い視野内での輝度比は1:3程度、広い視野内の輝度比は1:10程度が推奨されています。
    その他の映り込みを少なくする方法としては、フィルターを取り付ける等の方法がありますが、フィルターの性能によっては、表示文字の鮮明度が低下したり、フィルター自身の表面が反射したりすることがあるため、反射率の低いものを選ぶなどの注意が必要です。
 (2) 情報機器等
  ア 情報機器の選択
    情報機器には、用途に応じ、デスクトップ型、ノート型、タブレット型、携帯情報端末等の様々な種類があり、その特性等も異なることから、従事職員への健康影響を考慮し、従事職員が行う作業に最も適した機器を選択し導入する必要があります。
    一般に、デスクトップ型は、一定の作業面の広さが必要であるが、キーボードが大きく、自由に移動させることができるため、作業姿勢も拘束されにくく、長時間にわたり作業を行う場合等に適しています。
    また、ノート型は、キーボードが小さく、自由に移動させることができないため、作業姿勢も拘束されやすい反面、作業面の広さは少なくて済むため、作業面の広さが限られている場合等に適しています。
    ただし、作業の内容、作業量等のその他の考慮すべき事項も考えられるため、情報機器の導入に当たっては、必要に応じ関係職員等に意見を聞くことが望まれます。
  イ デスクトップ型機器
   (ア) ディスプレイ
     最近では多くの種類の情報機器用ディスプレイが存在します。通常の情報機器作業においては、市場における一般的なディスプレイで支障なく作業を遂行することができると思われますが、CADや定型書式への入力等の特定の作業においては、画面が小さい又は表示容量が低い場合に、従事職員に過度の負担をもたらす場合があることから、画面サイズは目的とする作業に応じた適切な大きさのものを用いる必要があります。
     反射防止型ディスプレイは、表面につや消し処理を行って散乱性を持たせたものと、多層薄膜コーティングにより反射そのものを減らすものとに大別されますが、前者は外光が明る過ぎると、画面全体が光るようになり、後者は汚れやすいという欠点がありますので、注意を要します。
     なお、労働基準局長通達においては、ディスプレイの人間工学上の要求事項の詳細について、ISO 9241-303(Ergonomic requirements for electronic visual displays)を始めとする、9241-300シリーズ等を参照するよう推奨しています。
     また、情報機器から発せられる青色光(ブルーライト)は、概日リズムに影響を与えるとの研究があり、睡眠障害等の懸念が考えられる場合には、その使用に留意する必要があります。
   (イ) 入力機器(キーボード、マウス等)
     入力機器としては、キーボード、マウスが代表的ですが、マウス以外のポインティングデバイス(トラックボール、パッド、スティック等)、音声入力、イメージスキャナー、バーコードリーダー等もあります。また、画面を直接指でタッチするタッチパネル方式の機器も入力機器の一種です。
     これらの入力機器を利用することによって、情報機器作業を効率化でき、従事職員の負担を大きく軽減できる場合もありますので、目的とする情報機器作業に適した入力機器を使用できるようにする必要があります。
     なお、労働基準局長通達においては、キーボード及びその他の入力機器についての人間工学上の要求事項の詳細について、JIS Z8514(人間工学-視覚表示装置を用いるオフィス作業-キーボードの要求事項)、JIS Z8519(人間工学-視覚表示装置を用いるオフィス作業-非キーボードの入力装置の要求事項)等を参照するよう推奨し、最新の入力装置に関する情報について、ISO 9241-400シリーズ等を参照するよう推奨しています。
  ウ ノート型機器
    ノート型機器には、携帯性を重視した設計(画面が小さい、キーストロークが短い、キーピッチが小さいなど)のものがあり、それらを長時間の情報機器作業に使用する場合には、人間工学上の配慮が必要です。
    小さいキーボードを、手が大きい従事職員が使用する場合には、連続キー入力作業で負担が大きくなることがありますし、小型の画面は文字が小さく視距離が短くなり過ぎる傾向があります。また、キーボードとディスプレイが一体となっている構成は、デスクトップ型に比べてディスプレイと頭の位置及びキーボード等入力装置と手の位置の関係において自由度が小さくなるため、従事職員に特定の拘束姿勢を強いることや過度の緊張を招くことなどがあります。したがって、使用する従事職員や目的とする情報機器作業に適した機器を使用させる必要があります。
    多くのノート型機器は外付けのディスプレイ、キーボード、マウス、テンキー入力機器などを接続して、利用することが可能なので、小型のノート型機器で長時間の情報機器作業を行う場合には、これらの外付け機器を利用することが望まれます。
    なお、労働基準局長通達においては、ノート型機器の使用時の留意点について、日本人間工学会の「ノートパソコン利用の人間工学ガイドライン」が参考になるとしています。
  エ タブレット、スマートフォン等
    ICT(情報通信技術)の進展に伴い、移動中でもタブレットやスマートフォンを用いて仕事をする機会が増えています。これらの機器は、小型化と携帯性を重視して設計されているため、職場等において長時間にわたり使用するには必ずしも十分とはいえません。
    これらの機器の人間工学上の特徴を踏まえ、長時間の情報機器作業に使用することはできる限り避けることが望まれます。
    タブレット、スマートフォン等はこれらの使用と姿勢との関係において、その「拘束性」はパソコンでのキーボード入力作業ほど強くはないと考えられますが、使用形態と健康影響に関する知見は少なく、今後注意深い観察が必要です。
  オ ソフトウェア
    ソフトウェアは、従事職員の作業性及び作業負担に大きく影響するため、目的とする情報機器作業の内容、利用する従事職員の技能、能力等に合ったものを使用することが望まれます。
    また、従事職員が作業中に、操作方法等についてヘルプ機能等により随時参照できること、作業内容に応じて容易に文字等の大きさ、色、行間隔等の設定が変えられるものが望まれます。
    さらに、従事職員の操作の誤りにより、それまでに入力した膨大な量のデータが消失し、復元不可能な場合、従事職員に大きな負担を与えることとなりますので、一旦入力したデータについては、容易に復元可能であることも望まれます。
    なお、労働基準局長通達においては、ソフトウェアが従事職員の特性や情報機器作業の目的に合ったものであるかどうかなどの判断の一助となる以下の三つのJISを示し、参照するよう推奨しています。
   (ア) JIS Z8520(人間工学-視覚表示装置を用いるオフィス作業-対話の原則)
     VDT対話の設計及び評価のための七つの原則が示されており、使用するソフトウェアがそれらに合致しているかの判断に利用できます。
   (イ) JIS Z8521(人間工学-視覚表示装置を用いるオフィス作業-使用性についての手引)
     使用性(ユーザビリティ)の考え方及び測定方法について示されています。使用するソフトウェアは、作業者に受け入れられる水準以上のユーザビリティが確認されていることが望まれます。
   (ウ) JIS X25062(システム及びソフトウェア製品の品質要求及び評価(SquaRE)-使用性の試験報告書のための工業共通様式)
     使用性を判断するための試験報告書の共通様式であり、国際規格ISO/IEC 25062の翻訳JISです。ソフトウェア選定の一助となります。
  カ 椅子
    適正な作業姿勢で作業をするための椅子は、安定性、移動性があって適当な背もたれを有しており、作業内容によっては肘掛けがあるものが望まれますが、椅子の条件として重要なことは、従事職員が作業しやすい作業面の高さを確保できるものであることです。そのためには、椅子の高さはもちろんのこと、机の高さ、ディスプレイの高さやキーボードの厚さ等も考慮しなければなりません。しかし、椅子以外のものについては高さの調整が難しいので、椅子の高さによって作業面の調整をせざるを得ないわけです。指針では、「床からの座面の高さは、従事職員の体形に合わせて、適切な状態に調整できること。」としています。椅子について、床からの座面の高さ(実際に座って、クッション材が2cmから3cm圧縮された状態の座面の高さのことです。市販されている椅子の座面高の表示は、クッション材が圧縮されていない外形表面の高さが一般的です。)は、37cmから43cm程度の範囲で調整できることが望まれます。
    椅子の調整範囲で調整できない場合については、必要に応じて足台を利用するなどして対応することが望まれます。
    なお、複数の職員が同一の椅子を使用して情報機器作業を行うような場合には、座ったままでも容易に高さの調整ができるワンタッチ式などのものがよいです。
  キ 机又は作業台
    机又は作業台(以下「机」という。)の作業面は、ディスプレイ、キーボード、原稿、その他の情報機器作業に必要なものが適切に配置できる広さが必要ですし、脚周りの空間は、情報機器作業中に脚が窮屈でない大きさが必要です。また、机の高さは、大多数の従事職員が適正な作業姿勢が確保できるようにするため、高さの調整ができない机の場合は、床から作業面までの高さが65cmから70cm程度のものを用い、高さの調整が可能な机の場合は、床から作業面までの高さは60cmから72cm程度の範囲で調整できることが望まれます。
    高さの調整が可能な机を使用する場合には、椅子の高さを最適に調整した後、机の高さを調整するとよいです。
    大型ディスプレイを使用する場合は、十分な奥行きの机を使用し、従事職員の身体にねじれを生じさせないよう、またディスプレイ画面の上端が目の位置より上にならないように、ディスプレイを配置するようにします。また、脚の周囲の空間に荷物等があり、脚が窮屈な場合は、取り除いてください。
    情報機器作業においては、機器と従事職員の姿勢の関係を優先して机及び椅子を選択及び調整することが望まれます。特に、ノート型機器は一般の事務机上で使用することが多く、机・椅子の組合せ及び調整は長時間作業の疲労軽減に重要な因子となり得ます。従事職員自身が最も作業がしやすい姿勢を取るために机や椅子の調整を行うことも必要です。
    なお、労働基準局長通達においては、椅子、机に関する人間工学上の要求事項の詳細について、JIS Z8515(人間工学-視覚表示装置を用いるオフィス作業-ワークステーションのレイアウト及び姿勢の要求事項)を参照するよう推奨しています。
 (3) 騒音の低減措置
   事務室内の騒音は、従事職員の作業への集中を妨げたり、職員の精神・身体的な負担を増大させたりします。情報機器本体やプリンターなどの周辺機器から発生する不快な音の低減を図るためには、遮音及び吸音の機能を有するつい立てで取り囲んだり、機器そのものを消音ボックスに収納したり、床にカーペットを敷いたりするほか、低騒音型機器を使用するなどの方法があります。
 (4) その他
   そのほか従事職員の周辺の環境管理上の配慮としては、換気、温度、湿度、空気調和(空調)及び休憩等のための設備などがあり、これらは、人事院規則10―4第15条の規定により換気その他の空気環境の調整、保温、防湿などの措置を講ずるよう義務付けられており、具体的には、労働安全衛生規則や事務所衛生基準規則等の基準により措置する必要があります。
 
3 作業管理
  情報機器作業には多くの種類があり、それぞれ作業形態や作業内容は大きく異なっています。
  また、情報機器作業が健康に及ぼす影響は非常に個人差が大きいので、画一的な作業管理を行うことは好ましくありません。
  したがって、各職場においては、個々の従事職員の特性に応じた情報機器、関連什器等を整備するほか、情報機器作業の実態に基づいて作業負担の少ない業務計画を策定すること等、細かく配慮することが望まれます。
 (1) 作業時間等
  ア 1日の作業時間
    指針では、「情報機器作業が過度に長時間にわたり行われることのないように指導すること。」としており、管理監督者は、適切な作業時間管理を行い、情報機器作業が過度に長時間にわたり行われることのないようにする必要があります。
    「相当程度拘束性があると考えられる作業」の情報機器作業については、一般に自由裁量度が少なく、疲労も大きいため、それ以外の作業を組み込むなどにより、1日の連続情報機器作業時間が短くなるように配慮する必要があります。
    1日の作業時間の上限について定めていないのは、①職場において情報機器作業に関する適切な環境管理、作業管理及び健康管理が行われるとともに、従事職員各人が自らの健康の維持管理に努めれば大多数の従事職員の健康を保持できるとされていること、②各職場における情報機器作業の作業形態、作業内容、作業条件等がまちまちで従事職員への負担が一様でなく、情報機器作業が健康に及ぼす影響についても個人差が大きいことなどの理由からです。
  イ 一連続作業時間及び情報機器作業に従事しない時間
    指針では、「一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分から15分の情報機器作業に従事しない時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1、2回程度の小休止を設けるよう指導すること。」としています。
    「情報機器作業に従事しない時間」は、ディスプレイ画面の注視、キーの操作又は一定の姿勢を長時間持続することによって生じる眼、頸肩腕、手指、腰背部等への負担による疲労の蓄積を防止することを目的とするものです。この「情報機器作業に従事しない時間」とは、一般的には、情報機器作業を中止し、リラックスして遠くの景色を眺めたり、席を離れるなどして作業中使用しなかった身体の各部を適度に動かすなどの軽い運動を行ったり、他の業務を行ったりするためのものです。この時間の一部を職場体操に充てることも考えられます。
    一連続作業時間の目安として1時間としているのは、パソコン作業がおおよそ1時間以上連続した場合には誤入力の頻度が増すことやフリッカー値が低下する(フリッカー値とは光の点滅頻度のことで、この値の低下は覚醒水準の低下に起因する視覚機能の低下を反映していると考えられます。)、すなわち大脳の疲労と関連する指標値に変化が見られたという研究結果に基づいています。
    「小休止」を設けた趣旨は、同一作業を20分から30分継続すると疲労が見られるという研究データに基づき、連続作業の途中で、1、2分程度作業を休止し、背を伸ばすなどして気分転換を図り、疲労の回復や緊張の緩和に役立てようとするものです。「小休止」は、時刻を定めないで、従事職員が自由に取れるようにする必要があります。
    なお、従事職員の視覚負担を始めとする心身の負担を軽減するため、情報機器作業の一連続作業時間内におけるディスプレイ画面を注視する時間やキーを操作する時間ができるだけ短くなるよう配慮することが望まれます。
  ウ 業務量への配慮
    個々の職員の能力を超えた業務量の作業を指示した場合、従事職員は作業を休止したくても休止することができず、無理な連続作業を行わざるを得ないこととなるため、業務計画を策定するに当たっては、無理のない適度な業務量となるよう配慮する必要があります。
 (2) 調整
   情報機器作業は、自然で無理のない姿勢で行うことが重要であるため、極端な前傾姿勢やねじれ姿勢を長時間継続させないよう、機器の位置を調整させる必要があります。
  ア 作業姿勢
    デスクトップ型パソコンで好ましいとされている作業姿勢は、ディスプレイの上端が眼の位置より下になるようにし、視距離は40cm以上確保する、上腕と前腕の角度は90度以上で、キーボードに自然に手が届くようにする、とされています。また、これまでの調査研究から①首の凝りや痛みは頭の前傾が大きくなると増加し、②打鍵の際に腕や手首を乗せる支持台がないと肩の凝りや痛みは増加し、③手の側屈(尺側変位)が大きいと腕の疲れや痛みが増加するといわれています。
    一方、ディスプレイとキーボードが一体になっているノート型パソコンを一般の事務机上で使用する際には上述のような姿勢を取ることは容易ではありませんが、上述の「好ましいとされている作業姿勢」を参考にしながら個人差も考慮した対応が必要になります。
    必要に応じて足台を利用することとしたのは、足台によって調整することにより、足を疲れさせないだけでなく、背中や腰の疲れを防ぐ効果も有するためです。
  イ ディスプレイ
    ディスプレイ画面と眼の視距離をおおむね40cm以上としたのは、眼に負担を掛けないで画面を明視することができ、かつ、眼とキーボードや書類との距離の間に極端な差が生じないようにするためです。
    ディスプレイ画面とキーボード又は書類を眼からほぼ等しい距離にすることとしたのは、情報機器作業における眼球運動から生じる眼疲労(視線を移動させるたびにいちいち焦点調節を行っていると眼疲労を招きます。)を軽減するためです。
    さらに、ディスプレイは、個々の従事職員にとって好ましい位置、角度、明るさに各自が必要に応じて調整するとともに、ディスプレイに表示する文字の大きさは、小さ過ぎないように配慮することが必要です。一般に、文字の大きさは、従事職員が、10ポイント、12ポイントなどと自由に設定できる場合が多いのですが、そのポイント数はディスプレイのサイズや種々の設定条件によって、必ずしも文字の物理的な大きさとは一致しません。文字の大きさはおおむね3mm以上とすることが推奨されます。
  ウ 入力機器
    多くの情報機器において、マウス等のポインティングデバイスのポインタの速度、ダブルクリックのタイミング等を変更することができるので、これを活用し、従事職員の技能、好み等に応じた適切な速度に調整する必要があります。
  エ ソフトウェア
    最近の情報機器はソフトウェアによって、種々の条件の設定・調整が可能ですが、それらの方法が知られていないために、適切でない条件で使用している例が少なくありません。
    ここに掲げているようなソフトウェアによる設定を徹底することによって、情報機器作業の改善を図ることが可能であるため、従事職員への教育などで周知する必要があります。
 (3) 情報機器等及び作業環境の維持管理
   情報機器等や作業環境について基準に則して適切に設定したとしても、その後の維持管理が良好に行われなければ、従事職員に対する健康安全管理が十分になされたことにはなりません。それだけに、平素から維持管理に努めることが大切であり、従事職員と管理監督者との連携はもとより、健康・安全管理者等とが一体となって進める必要があります。例えば、ディスプレイの傾き(前後又は左右)や高さ、椅子の高さ等の調整機構に支障が生じて容易に調整できなくなった場合に、従事職員が無意識のうちに不適切な姿勢のまま作業を行うことにもなります。
   このようなことを防ぐために、従事職員に対し日常業務の一環として、作業開始前又は1日の適当な時間帯に採光、グレア防止、換気等について点検させるほか、ディスプレイ、キーボード、椅子、机等の調整を行わせるなどによって不備を早期に発見するよう努め、連絡体制を密にして発見された不備については速やかに改善措置を講じなければなりません。
   また、管理監督者や健康・安全管理者等としては、照明及び採光、グレアの防止、騒音低減措置、換気、空気調和等の措置状況並びにディスプレイ、キーボード、椅子、机等の調整状況について定期的に点検するなど保全措置に努める必要があります。
   なお、ディスプレイ画面やフィルターにほこりや手の汚れが付着したり、室内の湿度低下により静電気を帯びた粉じんが付着したりすると、画面が見えにくくなり、眼の疲労の原因ともなりますので、このような場合には、専用のクリーナーや柔らかな布等で軽く拭き取ることなど、常に情報機器等の清掃に努めることが大切です。
 
4 健康管理
  国の職場における健康管理については、人事院規則10―4に職員の健康の保持増進のための措置が規定されています。具体的内容としては、健康診断の実施とその結果に基づく適切な事後措置、健康安全教育等の実施などがあり、これらは職場の健康管理者や健康管理担当者と健康管理医、看護師などの医療関係者の間の協力によって、その充実を図らなければなりません。
  従事職員の自覚症状としては、「眼が痛い」、「眼が疲れる」、「眼がかすむ」等の視覚系のもの、「首が痛い」、「肩が凝る」、「腕が疲れる」等の上肢帯系のもの、「いらいらする」、「頭が重い」といった精神神経系のものがあるとされています。
  これらの状況を踏まえ、指針では情報機器作業についての環境管理や作業管理を図るとともに、従事職員に対して新たに情報機器作業に従事(再配置の場合を含む。以下同じ。)する前及び情報機器作業に従事した後一般定期健康診断(人事院規則10―4第20条第2項第1号に定めるもの)を実施する際に併せて必要な検査を行うこととしています。
 (1) 健康診断
   従事職員に対して新たに情報機器作業に従事する前に行う健康診断は、職員の視機能などの健康状態を把握し、情報機器作業に適しているか否かを診るとともに、情報機器作業に適正な状態で従事させるために行うものです。また、この健康診断は、当該作業に従事した後の健康状態を継続的に観察するための基礎資料となるほか、従事職員が健康を保持していく上で配慮すべき事項の明示や指導をするための資料にもなります。
   情報機器作業に従事した後に一般定期健康診断を実施する際に併せて行う健康診断は、職員の健康状態を継続的に観察することにより、作業への適応状態、作業による健康影響の有無など情報機器作業との関連で生じるおそれのあるものを早期に発見し、適正な保健指導を行うためのものです。この結果は個人的な就業上の措置に生かされるのみならず、集団的観察によって使用機器や作業条件など、環境管理及び作業管理にも生かされることになります。
   それぞれの健康診断については、「作業時間又は作業内容に相当程度拘束性があると考えられるもの」(注)に該当する作業に従事する職員に対しては、健康障害防止の観点から実施する必要があります。また、「上記以外のもの」に該当する作業に従事する職員で自覚症状を訴える者に対しては、指針の7(2)に従って実施してください。
 
  (注) パソコン作業者の調査研究から、1日の作業時間が4時間から5時間を超えると中枢神経系の疲れを訴える作業者が増大し、また、筋骨格系の疲労が蓄積するという調査報告があります。また、疲労測定に関する別の調査研究からは、点滅光の識別度合いを示すフリッカー値が5%以上の低下を示して疲労を示す対象者が作業者の25%を超えないことを目標とすると、1日の作業時間は300分が望ましいとされています。
 
  ア 新たに情報機器作業に従事する前に行う健康診断(以下「配置前の健康診断」という。)
    (ア)、(イ)及び(ウ)の調査並びに(エ)及び(オ)の検査の各項目については、それぞれの実施日が異なっても差し支えありません。
   (ア) 業務歴の調査
     問診票等を用い、過去の情報機器作業業務歴等について把握します。
   (イ) 既往歴の調査
     問診票等を用い、既往歴について把握します。
   (ウ) 自覚症状の有無の調査
     業務歴及び既往歴の調査の結果を参考にしながら、問診票等を用いて問診により行います。
     自覚症状の有無の調査は、情報機器作業による視覚負担、上肢の動的又は静的筋労作等、心身に与える影響に着目して行う必要があります。
     問診項目としては、眼の疲れ・眼の乾き・眼の異物感・遠くが見づらい・近くが見づらい、首・肩の凝り、頭痛、背中の痛み、腰痛、腕の痛み、手指の痛み、手指のしびれ、手の脱力感、ストレス症状等の自覚症状の有無等が挙げられます。また、眼の疲労等に関しては、眼科定期受診及び点眼薬など治療薬の継続的な使用の有無も聴取します。軽快の兆しが見えず自覚症状が継続している場合は、当該症状に応じて、眼科学的検査又は筋骨格系に関する検査を行い、その結果に基づき、医師の判断により、保健指導、作業指導等を実施し、又は専門医の精密検査等を受けるように指導します。
     筋骨格系疾患については、自覚症状が検査所見よりも先行することが多いことに留意してください。
     ストレス等の症状が認められた場合については、必要に応じて、カウンセリングの実施、精神科医や心療内科医への受診勧奨等を行います。
     なお、健康診断の実施場所における受診者のプライバシー保護についての配慮を十分に行う必要があります。
   (エ) 眼科学的検査
    a 視力検査
     (a) 遠見視力の検査
       ふだんの遠方視時(外を歩くなど)の屈折状態(裸眼、眼鏡、コンタクトレンズ)で検査を行い、5m視力を測定します。
     (b) 近見視力の検査
       ふだんの作業時の屈折状態(裸眼、眼鏡、コンタクトレンズ)で検査を行います。通常、50cm視力を測定しますが、ふだんの情報機器作業距離がより近い場合には30cm視力を測定することが望まれます。
       近見視力の検査はディスプレイの視距離に相当する視力が適正なレベルとなるよう指導することが目的であり、近見視力は、片眼視力(裸眼又は矯正)で両眼ともおおむね0.5以上となることが望まれます。
    b 屈折検査
      裸眼又は眼鏡装用者は、裸眼での屈折状態をオートレフラクトメータにて測定します。コンタクトレンズ装用者は、着脱可能な場合は裸眼で、困難な場合はレンズ装用下で測定します。
      また、使用眼鏡の度数測定をレンズメーターで行います。コンタクトレンズ装用者は、可能であれば使用レンズの度数を聴取します。
      検査の結果、現在の矯正状態かつ情報機器作業距離で十分な視力が得られていないと判断された場合は、配置前に眼科医の受診を指導します。
      なお、問診において特に異常が認められず、遠見視力、近見視力がいずれも、片眼視力(裸眼又は矯正)で両眼ともおおむね0.5以上が保持されている者については、屈折検査を省略して差し支えありません。
    c 眼位検査、調節機能検査
      眼位検査については、交代遮蔽試験又は眼位検査付き視力計で斜位の有無を検査します。
      調節機能検査については、ふだん情報機器作業を行っている矯正状態での近点距離を測定します。
      前記aからc以外の高度な眼科学的検査等については、専門医に依頼します。
      また、ドライアイは、情報機器作業により症状が発現する可能性がありますので、 問診において眼乾燥感、異物感、痛み、間欠的な見づらさを訴える場合は、程度に応じて専門医の受診を指導します。ドライアイの悪化要因としては、コンタクトレンズの装用、湿度の低下、眼に直接当たる通風、ディスプレイ画面が高すぎて上方視することにより、過度にまぶたを開く場合、読み取りにくい画面の凝視等によるまばたきの減少等が影響しますので、これらに留意して、職場環境の改善、保健指導等を行います。
   (オ) 筋骨格系に関する検査
     この検査項目は、上肢に過度の負担が掛かる作業態様に起因する上肢障害、その類似疾病の症状の有無等について検査するためのものです。
    a 上肢の運動機能、圧痛点等の検査
     (a) 指、手、腕等の運動機能の異常、運動痛等の有無
     (b) 筋、腱、関節(肩、肘、手首、指等)、頸部、腕部、背部、腰部等の圧痛、腫脹等の有無
      問診において、当該症状に異常が認められない場合には、医師の判断で省略することができます。
      検査の結果、上肢障害やその他の整形外科的疾患、神経・筋疾患などが疑われる場合は、専門医への受診等について指導します。
  イ 一般定期健康診断を実施する際に併せて行う健康診断(以下「定期の健康診断」という。)
    (ア)、(イ)及び(ウ)の調査並びに(エ)及び(オ)の検査の各項目については、それぞれの実施日が異なっても差し支えありません。
   (ア) 業務歴の調査
     現在従事している情報機器作業の概要について調査するほか、必要に応じて作業環境や職務への適応性についても把握するように努めます。
     なお、前記「配置前の健康診断」における調査を参照してください。
   (イ) 既往歴の調査
     前記「配置前の健康診断」における調査を参照してください。
   (ウ) 自覚症状の有無の調査
     具体的調査の方法、判断基準及び措置については、前記「配置前の健康診断」における調査を参照してください。
     なお、受診者の問診における訴えの項目や内容の変化をチェックします。問診票は前記「配置前の健康診断」で用いられたものと同一のもので差し支えありません。
   (エ) 眼科学的検査
     具体的検査の方法、判断基準及び措置については、前記「配置前の健康診断」における検査を参照してください。
   (オ) 筋骨格系に関する検査
     前記「配置前の健康診断」における検査を参照してください。
     筋骨格系に関する検査については、上肢の運動機能、圧痛点等の検査を行いますが、問診において、当該症状に異常が認められない場合には、医師の判断で省略して差し支えありません。
 (2) 健康診断の結果に基づく措置
   配置前の健康診断又は定期の健康診断の結果把握された健康阻害要因を調査、分析し、医師が異常又は異常が生じるおそれがあると認めた職員については、健康保持のための適切な措置を講じるとともに必要な保健指導を行います。
   なお、健康障害や疲労症状の職場外要因としては、家庭における長時間にわたるインターネットの利用、ゲームを長時間行う等の直接的な眼疲労の原因となるもののほかに、生活習慣、悩みごと等の間接的な疲労要因が考えられます。
   また、眼鏡等の使用者については、視力矯正の不適切な状態で情報機器作業に従事しないように十分保健指導を行う必要があります。近見視力が、片眼視力でおおむね0.5以上となるよう指導を行うことが望まれます。
   情報機器作業を継続させることが適当でないと判断された職員や情報機器作業の作業時間の短縮を要すると認められた職員に対しては、健康保持のために配置転換や情報機器作業の作業内容を変更するなどの措置を講じます。
 (3) 健康相談
   従事職員が自分の健康状態等について気軽に相談ができ、適切なアドバイスを受けられるように必要に応じて健康相談の機会を設けることが必要です。常勤の健康管理医がいて、作業形態や職務内容を十分に把握した上で健康相談に応じられれば一番良いのですが、それが難しい場合には健康管理者等が窓口になって、従事職員の訴えを受けたり、問題があると判断されるものについては専門医に相談したり、健康相談日等を設けて直接専門医等に相談させたりすることになります。
 (4) リラクゼーション等
   静的筋緊張や長時間の拘束姿勢、上肢の反復作業などに伴う疲労やストレスの解消には、アクティブ・レストとしての体操やストレッチを適切に行うことが重要です。また、就業中にも背伸び、姿勢の変化、軽い運動等を行うように指導することが望まれます。
 
5 健康安全教育
  職場におけるIT化はますます進行しており、タブレット、スマートフォン等の携帯用情報機器を含めた情報機器が急速に普及し、情報機器の操作が事務作業を行う上で、なくてはならないものとなっています。
  このような状況から、情報機器作業に対する正しい認識をもって適正に作業を行うことができるための教育が重要になりますが、特に、従事職員自身が、作業に伴う疲労の蓄積を防ぐためにどうすればよいかを考え、それを実行する積極的な姿勢を培うよう、自己管理の啓蒙のための教育が大切です。
  職員の健康の保持増進及び安全の確保のために行う健康安全教育については、人事院規則10―4第13条に規定していますが、指針では、従事職員及び管理監督者に対して、作業管理、環境管理及び健康管理の事項について教育を実施することを定めています。
  教育を進める場合には、教育計画を策定し、それを実施し、実施の結果を評価し、更によりよい教育へと新たな教育計画にフィードバックさせて行います。実施に向け教育計画を策定するに当たっては、次の各項目を十分に検討し、効果的に教育を行うよう努める必要がありますが、その際、健康・安全管理者を始め健康管理医、管理監督者等が一体となって教育実施チームを編成し、協力して系統的、効果的な実施に努めることが大切です。
 (1) 教育の目的
   教育の目的は、従事職員及び管理監督者に対して、情報機器作業に係る環境管理、作業管理、健康管理等に関する正しい知識等を付与し、情報機器作業のための環境や方法を改善し、適正な健康管理を円滑に行い、さらには、情報機器作業による心身への負担の軽減を図ることにあります。
 (2) 教育の対象及び時期
   教育の対象を決めるに当たっては、教育しなければならない対象職員が何人いるのかを十分に把握しておくことが必要であり、それに基づいて1回当たりの人員や実施回数などが決められます。その対象人員にもよりますが、教育の対象はきめ細かく分けることが教育効果の面から望ましく、従事職員と管理監督者は分けて行う必要があります。それぞれの組織の実態を十分に考慮し、教育の計画的、継続的な実施が確保されるよう教育の対象を明確に定めておくことが大切です。
   また、教育の時期については、従事職員に対しては新たに情報機器作業に従事する前に行わなければなりませんが、情報機器及び情報処理技術が日進月歩であることを考慮し、配置された後にあっても必要に応じて定期的に行う必要があります。管理監督者に対しても、同様に、教育を行うことが望まれますが、特に新任の場合には、できる限り早い時期に教育が実施できるよう配慮する必要があります。
 (3) 教育の方法及び内容
   教育の方法は、教育の目的、対象、時期等を明確にした上で、教育すべき内容及び時間数、教育指導担当者及び指導方法等が具体的に決定されますが、その場合、効果的な教育が実施できるようなカリキュラムの編成が大切です。
   また、教育を行うべき事項を次に示しますが、その具体的な内容については、情報機器作業の作業形態、使用する情報機器等各職場の実態に則したものが望まれます。
























 
対象 教育事項
従事職員








 
1 指針の概要
2 作業管理
 (内容)作業計画・方法、作業姿勢、ストレッチなど
3 環境管理
 (内容)情報機器の種類・特徴・注意点、作業環境
4 健康管理
 (内容)情報機器作業の健康への影響(疲労、視覚への影響、筋骨格系への影響、メンタルヘルスなど)
管理監督者










 
1 指針の概要(労働災害統計を含む。)
2 作業管理
 (内容)作業時間、作業計画・方法、ストレッチなど
3 環境管理
 (内容)情報機器の種類・特徴・注意点、作業環境
4 健康管理
 (内容)情報機器作業の健康への影響(疲労、視覚への影響、筋骨格系への影響、メンタルヘルスなど)、健康相談・健康診断(受け方)、健康診断結果に基づく措置
 
   なお、次に掲げる事項を参考にして、教育を実施することが重要です。
 (1) 従事職員に対する教育内容
  ア 指針の概要
    指針の概要について説明します。
  イ 作業管理
    情報機器作業に関連する障害の最も大きな原因は「拘束的」な長時間に及ぶ作業であることを認識させます。また、情報機器作業の多様性と作業の方法・姿勢等には個人差が大きいことを認識させ、自分自身の作業方法に関して客観的な見方ができるようにします。
  ウ 環境管理
    作業環境が作業の効率や健康に及ぼす影響について理解させます。
  エ 健康管理
    情報機器作業による健康障害の種類及びその可能性について理解させます。また、身体的な症状、精神的なストレスの症状が懸念された場合、それらへの対処方法についても理解させます。
 (2) 管理監督者に対する教育内容
  ア 指針の概要(労働災害統計を含む。)
    指針の概要について説明します。従事職員教育に資する労働災害統計等も理解させます。
  イ 作業管理
    情報機器作業に関連する障害の最も大きな原因は「拘束的」な長時間に及ぶ作業であることを認識させます。また、情報機器作業の多様性と作業の方法・姿勢等には個人差が大きいことを認識させ、管理監督者として従事職員の作業方法や姿勢等を客観的に観察し、指導できるようにします。
  ウ 環境管理
    作業環境(機器の種類、採光、照明、温度・湿度、騒音など)が作業の効率や健康に及ぼす影響について理解させ、管理監督者として作業環境の改善、維持ができるようにします。
  エ 健康管理
    情報機器作業による健康障害の種類及びその可能性について理解させます。また、身体的な症状、精神的なストレスの症状が懸念される従事職員がいる場合、管理監督者として従事職員に適切な助言(健康管理者や健康管理医などへの導きなど)ができるようにします。
 
6 配慮事項
 (1) 見やすい文字の大きさや作業に必要な照度等は、従事職員の年齢により大きく異なります。特に高齢者の職員に対しては、配慮が必要です。従事職員によっては作業の視距離に応じた矯正(眼鏡)が必要になる場合があります。
   多くの情報機器作業の場合、文字サイズ、輝度コントラスト等の表示条件は使用する機器の設定により調整することが可能であり、従事職員にとって見やすいように適合させることが望まれます。
   照明機器等も、天井に配置した全体照明とは別に必要となる場合は、局所に作業用照明機器を配置することにより個人の特性に配慮した照度条件を実現することが可能となります。
   作業時間、作業密度、教育、訓練等についても、高年齢職員の特性に適合させる配慮が望まれます。
 (2) 情報機器作業は、筋力や視力等に障害があっても作業できるように、種々の支援対策が準備されています。このような支援機器や適切な作業環境、作業管理によって、障害を有する場合でも、情報機器作業を快適に行うような措置を講じることが望まれます。
 (3) 職員は、テレワークを行う場合においても、人事院規則10―4等が適用されるため、人事院規則10―4等に基づき健康確保のための措置を講ずる必要があります。
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