分限処分に当たっての留意点等について
(平成21年3月18日人企―536)
(人事院事務総局人材局長発)
 
最終改正:平成26年5月29日人企―657
 
職員の分限処分については、国家公務員法(昭和22年法律第120号)(以下「法」という。)第74条から第81条まで、人事院規則11―4(職員の身分保障)(以下「規則」という。)及び「人事院規則11―4(職員の身分保障)の運用について(昭和54年12月28日任企―548)」(以下「運用通知」という。)のほか、下記のとおり、留意点等について整理しましたので、平成21年4月1日以降、これによってください。各府省等におかれては、これを参考として、引き続き、分限制度の趣旨に則った対処に努めていただき、公務の適正かつ能率的な運営のより一層の確保をお願いいたします。
なお、「 職員が分限事由に該当する可能性のある場合の対応措置について」(平成18年10月13日人企―1626人材局長通知)は廃止します。
 
 
Ⅰ 勤務実績不良及び適格性欠如の場合の留意点(法第78条第1号及び第3号関係)
1 規則第7条第1項第2号の勤務実績不良又は同条第4項の適格性欠如と評価することができる事実の例
(1) 勤務を欠くことにより職務を遂行しなかった。
① 長期にわたり又は繰り返し勤務を欠いたり、勤務時間の始め又は終わりに繰り返し勤務を欠いた。
[例]
ア 連絡なしに出勤しなかったり、遅刻・早退をした。
イ 病気休暇や年次休暇が不承認となっているにもかかわらず、病気等を理由に出勤しなかった。
ウ 上司の指示を無視し、資料整理に従事するなどと称して出勤しなかった。
② 業務と関係ない用事で度々無断で長時間席を離れた(欠勤処理がなされていない場合でも勤務実績不良と評価され得る。)。
[例]
ア 事務室内を目的もなく歩き回り、自席に座っていることがほとんどなかった。
イ 勤務時間中に自席で又は席を外して職場外に長時間私用電話をした。
(2) 割り当てられた特定の業務を行わなかった。
[例] 所属する係の所掌業務のうち、自分の好む業務のみを行い、他の命ぜられた業務を処理しなかった。
(3) 不完全な業務処理により職務遂行の実績があがらなかった。
① 業務のレベルや作業能率が著しく低かった。
[例]
ア 業務の成果物が著しく拙劣であった。
イ 事務処理数が職員の一般的な水準に比べ著しく劣った。
② 業務ミスを繰り返した。
[例] 計算業務を行うに当たって初歩的な計算誤りを繰り返した。
③ 業務を1人では完結できなかった。
[例] 他の職員と比べて窓口対応等でトラブルが多く、他の職員が処理せざるを得なかった。
④ 所定の業務処理を行わなかった。
[例]
ア 上司への業務報告を怠った。
イ 書類の提出期限を守らなかった。
ウ 業務日誌を作成しなかった。
(4) 業務上の重大な失策を犯した。
(5) 職務命令に違反したり、職務命令(規則第14条の受診命令を含む。)を拒否した。
(6) 上司等に対する暴力、暴言、誹謗中傷を繰り返した。
(7) 協調性に欠け、他の職員と度々トラブルを起こした。
 
なお、個々の例が規則第7条第1項第2号の勤務実績不良又は同条第4項の適格性欠如のいずれに該当するかについては、諸般の要素を総合的に検討して判断する必要がある。
 
2 資料収集
(1) 規則第7条第1項第2号の勤務実績不良又は同条第4項の適格性欠如に該当するか否かの判断は、単一の事実や行動のみをもって判断するのではなく、一連の行動等を相互に有機的に関連付けて行うものであるので、運用通知第7条関係第4項に掲げる客観的な資料を収集した上で行う必要がある。
 
(参考)運用通知第7条関係第4項に掲げる資料
① 職員の人事評価の結果その他職員の勤務実績を判断するに足ると認められる事実を記録した文書
② 職員の勤務実績が他の職員と比較して明らかに劣る事実を示す記録
③ 職員の職務上の過誤、当該職員についての苦情等に関する記録
④ 職員に対する指導等に関する記録
⑤ 職員に対する分限処分、懲戒処分その他服務等に関する記録
⑥ 職員の身上申告書又は職務状況に関する報告
 
(2) 特に、職員の職務上の過誤や当該職員についての苦情等の具体的な事実が発生した場合には、その都度、詳細に記録を作成しておく。
(3) また、運用通知第7条関係第3項(1)の指導や同項(4)の措置を行った場合は、その内容を記録しておく。
 
3 問題行動が心の不健康に起因すると思われる場合の対応
問題行動が心の不健康に起因すると思われる場合には、管理監督者は、職員に積極的に話しかけて事情を聞くほか、必要に応じ同僚等に職員の状況の変化の有無を聞き、また、健康管理者、健康管理医、専門家等と対応を相談するものとする(「職員の心の健康づくりのための指針について(平成16年3月30日勤職―75)」参照)。
 
4 懲戒処分との関係
問題行動の中には懲戒処分の対象となる事実も含まれている場合もあることから、当該事実を把握した任命権者は、分限処分と懲戒処分の目的や性格に照らし、総合的な判断に基づいてそれぞれ処分を行うなど厳正に対応する必要がある。
 
Ⅱ 心身の故障の場合の留意点(法第78条第2号関係)
1  治癒し難い心身の故障があるとの診断がなされなかった場合の対応
規則第7条第3項により任命権者が指定した医師2名のうち、少なくとも1名が同項に規定する診断をしなかった場合には、法第78条第2号に該当すると判断することはできず、職員本人及び主治医、健康管理医等と相談した上で、円滑な職場復帰を図っていくなどの対応を行う必要がある。
 
2 医師による適切な診断を求める努力
職員の心身の故障の回復の可能性及び職務遂行の可否を判断するための医師の専門的診断は、職場の実態や職員の職場における実情等に基づく必要がある。そのため、診断する医師にその実情を十分に伝え、適切な診断を求めていくことが必要である。
 
3 病気休職期間満了前からの準備
3年間の病気休職の期間が満了する場合には、その期間満了前から、当該職員や主治医と緊密に連絡を取って病状の把握に努め、運用通知第7条関係第5項(1)により医師2名の診断を求める必要があるかどうか検討しておく。
 
4 病気休暇又は病気休職の累計が3年を超える場合の対応
運用通知第7条関係第5項(3)に該当する場合(病気休暇又は病気休職を繰り返してそれらの期間の累計が3年を超え、そのような状態が今後も継続して、職務の遂行に支障が有ると見込まれる場合)には、規則第7条第3項の医師の診断を求めることとなるが、当該病気休暇や病気休職の原因である心身の故障の内容が明らかに異なるときには、これには該当しないものとして取り扱う。
[例] 精神疾患の病状が回復し、職場復帰した後に、交通事故による外傷によって病気休職等とされた場合
 
Ⅲ 受診命令違反の場合の留意点(法第78条第3号関係)
規則第14条の受診命令に従わない場合に行われる分限免職は、法第78条第3号に基づく処分であるから、職員が正当な理由なく受診命令を拒否したことのほか、 ①当該職員が有していると思われる疾患又は心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない状況にあると認められること及び ②受診命令拒否その他の行動、態度等から、当該職員が官職に必要な適格性を欠くと認められることを運用通知第7条関係第4項に掲げる客観的な資料により確認して行うものとする。
 
Ⅳ 行方不明の場合の留意点(法第78条第3号関係)
原則として1月以上にわたる行方不明の場合は、法第78条第3号による免職とする。被処分者となる職員の所在を知ることができない場合においては、人事院規則8―12(職員の任免)第56条に基づき、官報に処分内容を掲載するものとする。
 
Ⅴ 人事院への報告
規則第13条及び運用通知第13条関係に基づき、任命権者が、職員をその意に反して、降任させ又は免職したときは、当該処分の発令の日から1月以内に、法第89条第1項に規定する説明書の写1通を人事院に提出することとされているが、このほか職員が法78条第1号から第3号に該当するとして、規則、運用通知及びこの通知に基づき分限処分に係る対応や手続を行っていたところ、当該職員から辞職の申し出がありこれを承認した場合又は当該職員の同意に基づき降任を行った場合は、その旨を人事院へ報告するものとする。
 
以   上
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