保有個人情報の開示・不開示等の決定基準について

・法第78条第1項第6号(審議、検討等に関する情報)関係
 
国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、開示することにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの
 
1.趣旨
  (1) 本号は、審議、検討等情報の不開示情報としての要件を定めるものであ る。
  (2) 行政機関等としての最終的な決定前の事項に関する情報を開示すること によってその意思決定が損なわれないようにする必要があるが、意思決定前の情報をすべて不開示とすることは、可能な限り開示可能な情報は開示するという観点からは適当ではない。そこで、開示することによって行政機関の適正な意思決定に支障を及ぼすおそれの有無及び程度を個別具体的に考慮し、不開示とされる情報の範囲を画することとしたものである。
 
2.解釈
  (1) 「国の機関」とは、国会、内閣、裁判所及び会計検査院並びにこれらに属する機関を指す。これらの国の機関、独立行政法人等及び地方公共団体等(国の機関等)について、それぞれの機関の内部又は他の機関との相互間における審議、検討又は協議に関する情報が本号の対象である。具体的には、国の機関等の事務及び事業について意思決定が行われる場合に、その決定に至るまでの過程においては、例えば、具体的な意思決定の前段階としての政策等の選択肢に関する自由討議のようなものから、一定の責任者の段階での意思統一を図るための協議や打合せ、決裁を前提とした説明や検討、審議会等又は行政機関が開催する有識者等を交えた研究会等における審議や検討など、様々な審議、検討及び協議が行われており、これらの各段階において行われる審議、検討又は協議に関連して作成され、又は取得された情報を指す。
  (2) 「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」とは、開示することにより、外部からの圧力や干渉等の影響を受けることなどにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合を想定したもので、適正な意思決定手続の確保を保護法益としている。
  (3)

「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」とは、未成熟な情報や事実関係の確認が不十分な情報などを開示することにより、誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある場合をいう。適正な意思決定を行うことそのものを保護するのではなく、情報が開示されることによる国民への不当な影響が生じないようにする趣旨である。

  (4) 「特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれ」とは、尚早な時期に、あるいは事実関係の確認が不十分なままで情報を開示することにより、不正な投機を助長するなどして、特定の者に不当に利益を与え又は不利益を及ぼすおそれがある場合を想定したもので、(3)と同様、事務及び事業の公正な遂行を図るとともに、国民への不当な影響が生じないようにする趣旨である。
  (5) (2)から(4)までにおいて「不当に」とは、審議、検討等途中の段階の情報を開示することの必要性を考慮してもなお、適正な意思決定の確保等への支障が看過し得ない程度のものであることを意味する。予想される支障が「不当」なものかどうかの判断は、当該情報の性質に照らし、開示することによる利益と不開示にすることによる利益とを比較衡量した上で判断される。
 
3.運用
  (1) 行政機関は、国会等から取得し又は自ら作成した国会等に関する様々な情報を保有しており、本号は、「行政機関」でなく「国の機関」と表現することにより、行政機関の保有する国会等に関する情報であって、行政機関の場合における第6号及び第7号に相当するものを不開示情報としている。これらの情報を開示することによる支障の有無及び程度を行政機関が判断するに当たっては、必要に応じ、国会等から情報の提供を受け、適宜な形式で意見を聴くなどして的確に判断するように努めるとともに、当該機関、団体の憲法上の地位に照らして、開示を不適当とする意見が述べられた場合にはこれを十分斟酌するなど、慎重な考慮に基づく運用が必要である。
  (2) 本号は、審議、検討又は協議に関する情報を開示することによって、当該意思決定に不当な支障を及ぼす場合に限られるものである。
  (3) 審議、検討等に関する情報については、国の機関等としての意思決定が行われた後は、一般的には、当該意思決定そのものに影響が及ぶことはなくなることから、本号の不開示情報に該当する場合は少なくなるものと考えられるが、当該意思決定が全体として一つの政策決定の一部の構成要素であったり、当該意思決定を前提として次の意思決定が行われる等審議、検討等の過程が重層的、連続的な場合には、当該意思決定後であっても、政策全体の意思決定又は次の意思決定に関して本号に該当するかどうかの検討が行われるものであることに注意する必要がある。また、審議、検討等が終了し、意思決定が行われた後であっても、当該審議、検討等に関する情報が開示されると、国民の間に混乱を生じさせたり、将来予定されている同種の審議、検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがあれば、本号に該当し得る。
  (4) 研究会等に関する情報についても、上記の審議、検討又は協議に関する情報の一般原則が適用される。すなわち、研究会等に関する情報の開示・不開示は、当該研究会等の性質、審議事項の内容に照らし、個別具体的に、率直な意見の交換等を「不当に」損なうおそれがあるかにより判断されることとなる。


人事院
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