第1編 人事行政

第1部 人事行政この1年の主な動き

第6章 グローバル社会における人事行政分野の取組

 行政を取り巻く環境が複雑・高度化する中、国際性・開放性が必要との観点から、人事院は、人事行政分野において、国際社会に貢献し、他国の経験から示唆を得るために、事業を展開した。

 人事行政に関する諸外国等の最新の実情について、情報交換を行い、国民にも広く知ってもらうため、令和3年度は、駐日オーストラリア大使及び東急株式会社代表取締役社長を迎え、「ダイバーシティ&インクルージョン講演会~個々が強みを発揮できる働き方の実現に向けて~」をテーマとするオンライン講演会を実施した。

 人事行政分野における日中韓三国の協力関係を推進するため、中国及び韓国の中央人事行政機関と日中韓人事行政ネットワークを構築し、各種取組を実施している。令和3年度は、「デジタル技術を使った人事管理」をテーマとする三国共催シンポジウム、三国若手・中堅職員合同研修を、それぞれオンライン形式で実施した。

 米国連邦政府職員に対し、各府省等における日常業務を通じた研修の機会を与えることにより、日本について深い理解を持った米国連邦政府職員を育成し、日米の公務における人的交流を促進するマンスフィールド研修に協力している。新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により、研修員の派遣が延期されていたが、感染状況が改善に向かう中で、令和3年4月に行われた日米首脳会談における合意を受けて研修が再開された。

 開発途上国の公務員制度改善のための支援として、独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じて研修への協力や個別の支援を行っている。令和3年度は、オンライン形式により、開発途上国の中央政府機関の上級幹部職員を対象とした研修等を実施した。

内外の情勢変化が激しく、行政を取り巻く環境が複雑・高度化していく中、行政組織としてその時々の情勢に適切に対応していくためには、常に世界の動向に目を向け、新しい多様な考え方に触れ、柔軟に取り込んでいく国際性と開放性を持つ必要がある。

人事院では、人事行政分野において国際社会に貢献する観点から国際交流を推進するとともに、我が国の公務員制度が直面する課題に関し、他国の経験や取組から示唆を得ることを目的として事業を展開している。令和3年度は、特に、我が国にとって重要課題である女性の採用・登用の推進や行政のデジタル化も念頭に、以下の事業等を実施した。

(1)ダイバーシティ&インクルージョン講演会

諸外国政府機関等との交流を通じ、人事行政に関する最新の実情について、情報交換を行い、国民にも広く知ってもらうことを目的として、毎年度、諸外国の政府機関幹部職員等を招き、講演会を開催している。令和3年度は、女性の採用・登用の推進等が我が国全体としての重要課題であることも踏まえ、より多くの国民の関心を得るため、新たな取組として、外国政府機関幹部職員に加えて我が国の民間企業幹部を招き、講演会を開催した。

具体的には、令和4年2月に、ジャン・アダムズ駐日オーストラリア大使及び髙橋和夫東急株式会社代表取締役社長を迎えて、「ダイバーシティ&インクルージョン講演会~個々が強みを発揮できる働き方の実現に向けて~」をテーマとしたオンライン講演会をライブ配信で開催した。また、視聴者の利便性を考慮し、講演後一定期間、録画配信を行った。

講演会においては、アダムズ大使から、オーストラリア政府における女性の採用・登用の推進の取組、新型コロナウイルス感染症が拡大する中での働き方の変化等について、髙橋社長から、東急株式会社におけるダイバーシティ実現のための風土・マインドの醸成に関する取組等について説明があった。また、講演に引き続いて行ったパネルディスカッションや質疑応答では、組織の多様性・包摂性を推進する上でトップが果たす役割の重要性、多様性が増す中での心構え等について、それぞれの経験を踏まえて意見交換を行った。

(2)日中韓人事行政ネットワーク事業

人事行政分野における日中韓三国の協力枠組みとして、平成17年1月に、中国人事部(現:国家公務員局)及び韓国中央人事委員会(現:人事革新処)との間で日中韓人事行政ネットワークを発足させ、協力関係の強化に努めている。現在は、令和元年9月に三国間で取り交わされた3年間の協力を定める覚書及び同年6月に策定された第9次協力計画に基づき、各種取組を実施している。

令和3年度の各事業は、本ネットワークにおける新たな取組として、オンラインツールを活用して実施した。

ア 第13回三国共催シンポジウム

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の経験を経て、三国のいずれにおいても、テレワーク等の柔軟な働き方の推進や行政のデジタル化が重要な課題となる中で、令和3年9月、「デジタル技術を使った人事管理」をテーマに第13回三国共催シンポジウムを開催した。同シンポジウムは、韓国が実施を担当し、初めてオンラインで開催された。人事院事務総局審議官、中国国家公務員局公務員管理一局副局長及び国家税務総局人事局副局長、韓国人事革新処国際協力課長が出席し、それぞれ発表を行った。我が国からは人事・給与関係業務情報システムの運用やオンラインを活用した人材確保活動等、中国からは税務職員の人事管理のシステム化に関する取組、韓国からは新型コロナウイルス感染症の感染拡大下における公務員の柔軟な働き方の進展と人事管理のシステム化の現状についてそれぞれ説明があり、意見交換を行った。

イ 第13回三国若手・中堅職員合同研修

令和4年1月、日本が実施を担当し、第13回三国若手・中堅職員合同研修を初めてオンライン形式で行った。三国の中央人事行政機関からそれぞれ3名の若手・中堅職員が参加し、各国が直面する人事行政上の課題及び改善策について発表を行い、意見交換をした。

(3)マンスフィールド研修

米国国務省は、マイク・マンスフィールド・フェローシップ法(1994年4月成立)に基づき、我が国に対する深い理解を持つ同国政府職員の育成を図るための研修(マンスフィールド研修)を行っている。例年、研修員は、連邦政府各機関から幅広く選抜され、約2か月間の石川県でのホームステイの後、約10か月間、我が国の各府省、国会議員事務所、民間企業等に配置され、日常業務を通じた研修を受けている。

人事院は、外務省と協力しつつ、研修員の各府省等への受入れの協議・調整を始め、オリエンテーション、調査見学、公務員研修所の実施する行政研修への参加等を企画・実施している。

新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大を受けて、令和元年度末に第24期の研修は中止され、第25期研修員の日本への派遣も延期されていたが、令和3年4月に行われた日米首脳会談において研修の再開が合意された。これを受け、令和3年度は第25期研修員9人が7月に訪日し、マンスフィールド財団が石川県と協力して実施する日本語や日本文化についてのオンライン研修に参加した後、令和3年9月から令和4年6月までの予定で日本の政府機関等での実務研修に参加している。

(4)開発途上国に対する技術協力

開発途上国にあっては、国家の発展に向け、行政の基盤である公務員制度を整備し、ガバナンスを向上させることが共通課題となっており、我が国の例に学びたいという要望が数多く寄せられている。こうした要望を受け、人事院は、独立行政法人国際協力機構(JICA)が主催する開発途上国の政府職員を対象とした研修の実施等に協力している。令和3年度は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、研修は初めてオンライン形式で実施された。中でも、開発途上国の中央政府機関の上級幹部職員を対象とした研修においては、政策企画立案能力の向上を目指して様々な政策課題についての討議等を行う中で、各参加者が抱える業務上の課題を踏まえて幹部職員がとるべき行動に関する講義及び意見交換を行った。

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