第1編 人事行政

第1部 人事行政この1年の主な動き

第1章 公務員人事管理における主な課題の取組状況

第3節 多様なワークスタイル・ライフスタイル実現とWell-beingの土台となる環境整備

 フレックスタイム制の見直し、勤務間のインターバル確保に係る努力義務の導入、夏季休暇の使用可能期間及び年次休暇の使用単位の見直し、テレワークガイドラインの策定等、柔軟な働き方を実装するための制度改革等に取り組んだ。

 ワークスタイル・ライフスタイルが多様化する中で職員の選択を後押しするため、在宅勤務等手当を新設したほか、給与制度見直しに向けて取組を進めた。

 勤務時間調査・指導室による調査等を通じて、超過勤務の縮減に向けた取組を行った。

 職員の健康増進を担う各府省の健康管理体制の充実を検討するため、公務における健康管理体制の状況の分析や、民間における健康経営の取組状況等の調査を行った。

 ゼロ・ハラスメントを実現するとの目標を掲げ、幹部・管理職員ハラスメント防止研修の見直し等に取り組んだ。

1 多様なワークスタイル・ライフスタイルを可能とする取組

(1)柔軟な働き方を実装するための制度改革の推進等

学識経験者により構成する「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会」の最終報告(令和5年3月)を踏まえ、同年8月7日、後記第2章第2節1のとおり、フレックスタイム制の見直しに係る勧告を行った。あわせて、順次以下の措置を講じた。

ア フレックスタイム制の見直し

フレックスタイム制の活用により、週1日を限度に、勤務時間を割り振らない日を設定することができる措置を一般の職員にも拡大するための勤務時間法の改正が行われたことを受けて、具体的な基準及び手続の整備を行ったほか、職員が当日の勤務時間の変更を申告した場合において将来に向かっての勤務時間の割振りを変更すること及び期間業務職員についてフレックスタイム制と同様の勤務時間を定めることを可能とした(令和7年4月1日施行)。

イ 勤務間のインターバルの確保に係る努力義務規定の導入

勤務間のインターバルの確保に係る各省各庁の長の努力義務規定を導入した(令和6年4月1日施行)。また、国家公務員の勤務間のインターバル確保状況の実態や課題の把握等をするための調査・研究事業に着手した。

ウ 夏季休暇の使用可能期間及び年次休暇の使用単位の見直し

業務の都合により7月から9月までの間の夏季休暇使用が困難な職員について、6月から10月までの間で使用できることとしたほか、交替制等勤務職員の年次休暇について、日単位及び時間単位に加え、15分単位でも使用できることとした(令和6年1月1日施行)

エ テレワークガイドラインの策定

テレワークを公務職場に更に浸透・定着させていくため、内閣人事局と連携し、テレワークの適正かつ公平な運用を確保するための統一的な基準として、テレワークガイドラインを公表した(令和6年3月8日)。

そのほか、フレックスタイム制や勤務間のインターバル確保に関する周知広報資料の作成など、各府省において制度が円滑に実施できるよう支援を行った。

(2)職員の選択を後押しする給与制度上の措置

働き方のニーズやライフスタイルが多様化する中で、給与制度においても職員の選択を後押しし、様々な形で活躍できるよう必要な措置を講じていくことが必要である。

人事院は、下記(3)のとおりテレワーク関連手当を新設したほか、令和5年の公務員人事管理に関する報告において、扶養手当の見直し、採用時からの新幹線通勤・単身赴任に対する手当支給、新幹線通勤に係る手当額見直し等の措置を検討する方針を示し、令和6年の給与勧告を念頭に、各措置事項の具体化に向けた作業に取り組んでいる。

(3)在宅勤務等手当の新設

新型コロナウイルス感染症の拡大を契機として、官民問わず在宅勤務等の柔軟な働き方が広がってきている中、給与制度についても、こうした社会及び公務の変化に対応し、職員の選択を後押しするよう取り組む必要がある。

人事院は、在宅勤務等を中心とした働き方をする職員の光熱・水道費等の費用負担を軽減するため、当該職員を対象とした在宅勤務等手当を新設することを、令和5年8月7日、国会及び内閣に対し、勧告を行った。

勧告に基づき同年11月に給与法が改正された(令和6年4月1日施行)。

2 職員のWell-beingの土台づくりに資する取組

(1)超過勤務の縮減 ― 負のイメージの払拭に向けて

超過勤務縮減の観点から、国会対応業務等の超過勤務への影響や業務量に応じた要員確保の状況等を把握するために、各府省に対して令和4年度に行ったアンケートの結果を踏まえ、関係各方面の御理解と御協力をお願いした。具体的には、国会対応業務に係る各府省アンケートの結果については、人事院総裁が令和5年4月に衆議院議長及び参議院議長を訪問して説明を行い、その後、衆議院議院運営委員会理事会においても説明を行った。また、業務量に応じた要員確保及び人事・給与関係業務に係る各府省アンケートの結果については、人事院総裁が同月に国家公務員制度担当大臣を訪問して、国会対応業務に係る各府省アンケートの結果とともに説明して御協力をお願いした。

なお、本件について、同年6月、衆議院議院運営委員会理事会において、質問通告に関する申合せがなされた。

また、勤務時間調査・指導室では、令和4年度から各府省を直接訪問して勤務時間の管理等に関する調査を実施し、超過勤務縮減に向け、その基礎となる超過勤務時間の適正な管理やその他の指導・助言等を行っている。令和5年度は、同調査の場において客観的な記録を基礎とした超過勤務時間の適正な管理について指導を行ったほか、他律部署(他律的な業務の比重が高い部署)・特例業務(大規模災害への対処等の重要な業務であって特に緊急に処理することを要する業務)の範囲が必要最小限のものとなるよう指導を行った。

このほか、各府省における超過勤務制度の運用状況を聴取する機会を通じて、超過勤務の縮減に向けた取組について御協力をお願いした。

(2)職員の健康増進 ー 公務版の「健康経営」の推進等

職員のWell-beingを実現するためには、各自の健康増進が極めて重要であり、公務版の「健康経営」を追求していくことは喫緊の課題である。各府省においては、これまで以上に職員の健康管理施策を推進する必要があり、これを担う健康管理体制の充実が重要となることから、人事院では、各府省における健康管理体制の充実のための官民調査(Wellbeing調査)を実施した。具体的には、各府省における、健康管理体制の実態等を調査したほか、そこから判明した公務の健康管理体制の状況を踏まえ、計12の民間企業及び地方自治体にヒアリングを実施して、今後の施策検討の参考となる民間における健康経営の取組状況等を調査した。

また、公務においては、心の健康の問題による長期病休者数が増加していることも踏まえ、心の健康の問題による長期病休者の再発防止に資する職場復帰支援手法の開発について、検討を始めた。

(3)ゼロ・ハラスメントに向けた取組

人事院は、令和5年の公務員人事管理に関する報告において、ゼロ・ハラスメントを実現するとの目標を掲げており、本年度から幹部・管理職員にハラスメント防止対策に関する自身の役割の重要性の理解促進を図る研修を実施するとともに、実務担当者に必要となる行動様式や問題解決のプロセスの理解促進を図る研修を実施した。

また、相談担当者をサポートするための専門家による相談窓口の試行やハラスメント相談に係るアンケート調査等を実施した。今後、この結果も踏まえて相談体制の整備に向けて必要な対応を検討していく。

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