第1編 人事行政

第1部 人事行政この1年の主な動き

Ⅰ  職員一人一人が躍動でき、Well-beingが実現される公務を目指して

第1章 公務員人事管理における主な課題の取組状況

第1節 公務組織を支える多様で有為な人材の確保のための一体的な取組

 民間企業等における多様な経験や高度な専門性を有する人材をより一層公務に誘致し、確保するため、実務の中核を担う人材の積極的誘致に向けた取組、官民人事交流の促進のための発信強化、公務組織への円滑な適応支援(オンボーディング)の充実のための取組を進めた。

 国家公務員の志望者の減少が続く中、「一般職試験(大卒程度試験)における専門試験を課さない新区分の創設」の検討等、令和4年度から取り組んでいる採用試験の改革を引き続き進めた。

 優秀な人材確保に資する採用戦略の検討を行うため、令和5年12月から令和6年3月にかけて、有識者との意見交換を実施した。

 優秀な人材確保に資する処遇を実現するため、給与制度見直しに向けて取組を進めた。

1 民間と公務の知の融合の推進

(1)実務の中核を担う人材の積極的誘致

経験者採用試験では従来、府省合同の試験は主に総合職試験(大卒程度試験)採用者等が従事する政策の企画立案等を担う係長級の職員として採用するための試験のみ実施してきた。しかし、各府省における係長級の層の職員が少なくなってきていること及びその候補となる若年層職員の離職者数が増加していることを踏まえ新たに、主に一般職試験(大卒程度試験)採用者等が従事する政策・事業の実施等を担う係長級の職員として民間人材等を採用するための府省合同の試験を創設することを念頭に、各府省に対し、当該試験新設のニーズ等の意見聴取を実施した。また、総務省の要望を踏まえて総務省経験者採用試験(係長級(事務))を令和6年度に実施することなどを内容とする人事院公示の改正を行った。

(2)官民人事交流の促進のための発信強化

官民人事交流を更に促進する観点から、官民の人事交流を経験した者及び人事担当者等から意見を聴取するとともに、アンケートを行った。この取組を通じて、官民人事交流を経験した者の成長、交流者を受け入れる職場や復帰後の職場にもたらされる好影響等、官民人事交流を通じて得られる効果や魅力等を把握し、意見聴取の記事やアンケートの結果を官民双方に向けて発信した。このほか、民間情報発信サイトに官民人事交流のバナー広告を掲載するとともに、同サイトの公式メールマガジンで配信するなど、情報発信の強化を図った。

(3)公務組織への円滑な適応支援(オンボーディング)の充実

今後ますます民間人材等の採用が増加していくことが見込まれる状況においては、各府省において採用者が職場や業務に早期に適応し、その能力や知見を存分に発揮できるようにするための体制づくりがより重要になる。そのため、各府省の本府省に採用された民間人材等を対象とした実務経験採用者研修の実施回数を毎年度1、2回程度から3回に増やしたほか、地方支分部局で採用された民間人材等のための研修を試行実施した。

さらに、各府省における取組を支援するため、民間企業における先進的なオンボーディングのプログラムの内容、作成過程、課題等の内容を含んだ好事例集を作成し、提供した。

2 採用試験の実施方法の見直し

国家公務員の志望者の減少が続く中、令和4年度から採用試験の改革に取り組んできており、必要な制度改正等を実施してきたところである。

改革を行った施策については採用試験の応募者数等を踏まえ効果を検証し、さらに、令和4年の公務員人事管理に関する報告で表明した採用試験改革のうち、「一般職試験(大卒程度試験)における専門試験を課さない新区分の創設」等についても、各府省の意見を聞きながら検討を進めた。

3 今後の公務に求められる人材の戦略的確保に向けた取組

(1)優秀な人材確保に資する採用戦略の検討

公務における人材確保が危機的な状況にある中、優秀な新規学卒者や民間人材等を獲得するためには、戦略的な人材確保に向けた取組が一層求められている。今後の採用戦略の在り方について多角的な観点から意見を聴取するため、人事行政諮問会議(後記Ⅱ参照)の議論も踏まえつつ、令和5年12月から令和6年3月にかけて、学識経験者、民間企業の採用担当者や実務研究者等、20名/社の有識者との意見交換を行った。今後、この意見交換の結果等を踏まえつつ、具体的な施策を検討していくこととしている。

(2)人材確保を支える処遇の実現

人材確保に当たっては、処遇面の取組も不可欠であり、潜在的な公務志望者層の公務員給与に対する従来のイメージを変えていく必要がある。

人事院は、令和5年の公務員人事管理に関する報告において、新卒初任給の引上げ、若手・中堅優秀者の処遇引上げ、民間人材の採用時給与のベース引上げ、採用時からの新幹線通勤・単身赴任に対する手当支給等の措置を検討する方針を示し、令和6年の給与勧告を念頭に、各措置事項の具体化に向けた作業に取り組んでいる。

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