「職員の心の健康づくりのための指針」について

平成16年3月30日
勤 務 条 件 局

人事院は、本日、「職員の心の健康づくりのための指針(勤務条件局長通知)」を発出した。

I 趣旨

職員の心の健康づくりについては、昭和62年7月13日付け福祉課長通知「職場におけるメンタルヘルス対策について」により、その推進に努めてきたところである。
近年、公務において、自殺した職員の数が増加し、長期病休者中の職員のうち精神・行動の障害によるものの数が急増している。このため、専門家からなる「メンタルヘルス対策のための研究会」(座長:吉川 武彦〔きっかわ たけひこ〕中部学院大学大学院教授)を昨年10月に設置し、検討を行ったところである。
本日(3月30日)、その検討結果を踏まえ、新たに「職員の心の健康づくりのための指針」(以下「新指針」という。)を発出したものである。

II 新指針のポイント
1 新指針の基本的考え方
(1) 役割の明確化

人事院、各省各庁の長、管理監督者、職員等の役割を明示し、それぞれが協力して積極的に取り組むことを推進する。特に、各省各庁の長は、組織全体の心の健康づくりに責任を持ち、人事院は、その支援と調査研究を行う。

(2) 三種類の対策

心の三つの状況に応じて、それぞれの対策が必要である。
 (心の状況) : ( 対 策 )
ア 健康なとき : 心の健康の保持増進
イ 不健康なとき : 早期対応
ウ 回復したとき : 円滑な職場復帰と再発の防止

2 新指針の重点項目
(1) 心の健康の保持増進の重視

心が健康なときの健康の保持増進を重視する。そのために、人事院はストレス対処法を備えたストレスチェック表等を作る。

(2) 体系的な教育

心の健康づくりのための教育は体系的に実施する。そのために、各省各庁の長と人事院とが分担して実施し、また、人事院はカリキュラム例、教材等を作成する。

(3) 職務遂行能力の回復計画

職務復帰後の職務遂行能力の回復のためには、計画的に職務内容等を決定することが有効である。計画は、おおむね3か月以内として、各省各庁の長が決定する。

III 新指針の概要
1 はじめに

職員の心の健康づくりは、職員やその家族にとって重要であるばかりでなく、国民に対して公務を効率的かつ的確に提供するという観点からも重要である。

2 指針の目的

職員の心の健康づくりに関し、各省各庁の長、管理監督者、職員本人等の役割の重要性を示し、それぞれが心の健康づくりに積極的に取り組むこと及び人事院が各省各庁を支援し、各省各庁と人事院との協力が促進され、心の健康づくりが効果的に行われることを目的とする。

3 基本的考え方
(1) 心の健康づくりは、職員の心の三つの状況に応じて、それぞれの対策がなされなければならない。

ア 心の健康の保持増進
イ 心の不健康な状態への早期対応
ウ 円滑な職場復帰と再発の防止

(2) 各省各庁の長は組織全体の心の健康づくりに責任を持ち、人事院は、その支援等を行う。

(3) 心の健康づくりのための教育は、各省各庁の長と人事院とが分担して、体系的に実施する。

ア 各省各庁の長は、職員の地位、職種等に応じた体系的な研修カリキュラムを作成し実施する。
イ 人事院は、カリキュラム例、教材等を作成し、各省各庁へ提供する。
ウ 人事院は、健康管理スタッフ及び医療スタッフを対象とした研修を実施する。

(4) 各省各庁の長と人事院は、職員の心の健康の状況及び心の健康づくりのための施策の状況の定期的把握、評価及び改善を行う。

(5) 各省各庁の長と人事院は、相談窓口を設ける。また、相談窓口は、家族も利用できるようにする。

4 心の健康の保持増進
心の健康づくりは、心が不健康になった場合にだけ行うのではなく、心が健康な状態のときに行うことが必要である。

ア 各省各庁の長は、勤務環境の整備、啓発による職員への支援等を行う。
イ  管理監督者は部下のストレス状況の改善等を行う。
ウ 職員本人は心身の健康の積極的な保持増進やストレスのコントロール等を行う。
エ 人事院は、ストレス対処法を備えたストレスチェック表、医師等の専門家の確保のモデル例等を作成する。

5 心の不健康な状態への早期対応
心が不健康な状態になったときには治療など専門家による早期の対応により、早期回復を期待できる。

ア 各省各庁の長は、専門家による対応が必要である可能性があると認められる職員がいる場合は、必要に応じ専門家の支援を得て対応する。
イ 管理監督者は、日常的に部下に接しており、部下の言動等の変化を早期に把握する。
ウ 職員は、積極的に相談窓口等を活用する。
エ 人事院は、早期対応のための職場内の体制のモデル例、具体的な早期対応の事例等を作成する。

6 円滑な職場復帰と再発防止
職場復帰の時期及び復帰後の職務内容等の受入方針は、適切なものでなければならない。

ア 各省各庁の長は、復帰前から職員本人の状況等を把握し、職員の職場復帰にあたっては、復職の時期、職務内容等に関し、事前に職員の意向、主治医の意見、健康管理医等の意見を聴取して具体的な受入方針を決定する。
イ 管理監督者は、復帰後の職員の状況等を把握し、必要に応じ仕事の内容等を調整する。
ウ 職員は、各省各庁の長等と十分連絡を取る。
エ 人事院は、受入方針のモデル例、職場復帰及び再発の防止に関する具体的事例を作成する。

7 自殺防止
自殺を防止するためには、職員の身近にいる管理監督者、同僚、家族等が、健康管理医等の助言を得ながら、各省各庁の長と協力・連携して対応することが必要である。

ア 各省各庁の長は、関係者の啓発と協力・連携を促進し、職務が精神的肉体的に過重な状況にある職員については、配置換することも考慮する。
イ 管理監督者は、職員の状況に注意し、相談等に真摯に対応し、必要に応じ仕事の分担の変更、勤務環境の改善等を行う。
ウ 職員は、一人で悩まずに積極的に家族、友人等に相談する。>
エ 人事院は、自殺防止のための具体的対応例等を作成する。

8 職務遂行能力の計画的な回復
心の健康の問題により長期間休んでいた職員が職場に復帰した際に、職務遂行能力が全面的に回復していることは少ない。職務遂行能力の順調な回復を図るためには、職務復帰後の一定期間計画的に職務内容等を決定していくことが有効である。

ア 計画は、各省各庁の長が、職員、主治医、管理監督者、健康管理医等の意見を聴取して決定する。
イ 計画は、おおむね3月以内とし、勤務内容の段階毎に期間を定める。

以  上    
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