官民人事交流インタビューVOL.3~環境省九州地方環境事務所~

官民人事交流制度を積極的に活用されている環境省九州地方環境事務所の交流採用者、人事担当者の皆様に、官民人事交流の魅力についてお伺いしました。

1 環境省九州地方環境事務所地域脱炭素創生室 再エネ促進区域推進専門官 柿本 大典 氏
 (一般財団法人九州環境管理協会から交流採用)



(人事院)現在勤務している、環境省九州地方環境事務所地域脱炭素創成室での業務内容について教えてください。
(柿本)地方公共団体や事業者への情報発信などにより、脱炭素施策を普及させていくということをテーマに業務に取り組んでいます。

(人事院)どのような期待を受けて、出身企業から環境省に送り出されたのでしょうか。
(柿本)環境分野の政策をいち早く入手することや、環境省とのコネクションを築くことを期待され、送り出されました。また、異なる文化を体験することで人間としても成長し、復帰後に組織や部下後輩に刺激や好影響を与えてほしいといった期待も感じていました。

(人事院)国と民間とで文化の違いを感じた点はありますか。
(柿本)お金に対する考え方の違いを強く感じました。民間企業では、売上げや利益など、金額の目標がありますが、脱炭素社会の実現という目標には、明確なゴールがあるものではありませんので、仕事に対する向き合い方も異なりました。

(人事院)国の業務で苦労した点はありますか。
(柿本)出身企業におけるこれまでの業務では、社内で必要な情報共有を行えば業務を進めることができましたが、国の業務では、情報共有や連携を行うべき範囲が全く異なります。多くの関係者との情報共有や連携は、時間をかけて丁寧に行う必要がありますので、苦労した点です。

(人事院)官民人事交流中の勤務環境はどうですか。
(柿本)休暇取得や在宅勤務がしやすい環境で働くことができています。

(人事院)違う組織を経験したことで、出身企業の見え方は変わりましたか。
(柿本)出身企業は、人材育成に力を入れていることを改めて感じました。丁寧に新人を育てていく手法や文化は、出身企業の強みであると強く感じています。

(人事院)官民人事交流により、得られたものや成長を感じている点はありますか。
(柿本)環境省内や地方自治体、事業者など様々な関係者との連携のノウハウや考え方は、ぜひ出身企業に持ち帰りたいです。出身企業において、対外的な情報発信はより力を入れてやっていかないといけないですし、他企業や地方自治体と連携した取り組みにも挑戦していきたいです。また、ノウハウや知識の習得だけではなく、今の部署には様々な業種の民間企業出身者をはじめ、多様な人材がいますので、自分にはない感性や発想などの学びを得ることができ、この点でも成長を感じています。
 

2 環境省九州地方環境事務所地域脱炭素創生室 再エネ促進区域推進専門官 本田 卓也 氏
 (西部瓦斯株式会社から交流採用)



(人事院)どのような期待を受けて、出身企業から環境省に送り出されたのでしょうか。
(本田)出身企業の業務の中で、環境省や地方自治体と連携することもあるので、連携のノウハウの獲得や、人脈形成などを求めているとの説明を受け、送り出されました。

(人事院)環境省九州地方環境事務所地域脱炭素創成室には、様々な企業の出身者がいらっしゃるとのことですが、価値観の違いを感じることもあるのでしょうか。
(本田)本当に多様な人材がいますので、価値観の違う方々が集まっていますが、得意な分野を補い合ったり、刺激を与え合ったりしながら仕事ができる環境だと思います。

(人事院)官民人事交流中の出身企業からのフォローについてはどうですか。
(本田)官民人事交流の期間中も出身企業から業績評価を受けていますので、適宜面談を行い、官民人事交流期間中の目標やその達成状況について、出身企業と共有しています。このほか、メンタル面のケアを目的として、面談を行うこともあります。また、出身企業と環境省との組織同士のコミュニケーションも円滑に行われていると感じており、これが仕事のやりやすさにもつながっています。

(人事院)違う組織を経験したことで、出身企業の見え方は変わりましたか。
(本田)外部から出身企業やその業界を見ることで、10年後、20年後の社会を見渡せるような視点を得ることができましたので、出身企業の仕事の意義に対する捉え方も変わったと思います。

(人事院)官民人事交流により、得られたものや成長を感じている点は何かありますか。
(本田)多様な関係者と合意形成を行いながら仕事を進めていく必要があるため、これまで経験してきた業務よりも調整の幅が広く、合意形成能力や調整能力が高まったと思います。出身企業では営業部門の経験が長く、企画職の経験はあまりなかったのですが、省内で合意形成し、地方自治体を巻き込んで企画を形にしていく業務は、とても貴重な経験でした。また、法律や制度を事業者や国民の皆様に周知をしていくことも一つの大きな仕事ですが、自分自身が法律や制度の仕組みをしっかりと理解した上で説明を行う必要があることから、法制度に関する確かな知識も得ることができました。


3 環境省九州地方環境事務所地域脱炭素創生室 脱炭素地域づくり専門官 中原 夢楽咲 氏
(株式会社肥後銀行から交流採用)


(人事院)どのような期待を受けて、出身企業から環境省に送り出されたのでしょうか。
(中原)脱炭素事業のノウハウを学んでくることや、熊本の企業や地方自治体とのコネクション作りを行ってくることを期待されて送り出されました。

(人事院)国と民間で文化の違いを感じた点はありますか。
(中原)国の業務では、慎重にスケジュール管理を行う点や、一言一句の言葉に込める意味を慎重に検討する点に文化の違いを感じました。

(人事院)国と民間とで、仕事の仕方に違いを感じた点はありますか。
(中原)いろいろありますが、一つは会議の進め方でしょうか。会議を行う場合、出身企業では、ゴールを設定した上で時間を区切って進行させていましたが、国では、最初にみんなで意見を出し合ってから物事を決める事が多いと感じています。

(人事院)適応に苦労したことはありますか。
(中原)私の出身企業はこれまで環境省との官民人事交流を行っていなかったこともあり、環境省での働き方のイメージがつかめず、不安の中で着任しましたが、実際に着任してみると、丁寧に仕事を教えてもらえる環境だったので、困ることはありませんでした。

(人事院)官民人事交流中の出身企業からのフォローについてはどうですか。
(中原)月に1回は報告も兼ねて出身企業を訪問する機会があり、メンタルチェックも含め、目配りいただいています。

(人事院)違う組織を経験したことで、出身企業の見え方は変わりましたか。
(中原)業務を行う中で、地方自治体の関係者の方から、出身企業に関する話を耳にすることも多く、これまであまり意識していなかった出身企業が社会で果たしていた役割や貢献活動について気づかされることがありました。

(人事院)官民人事交流により、得られたものや成長を感じている点は何かありますか。
(中原)これまでと異なる環境で、新たな分野の業務に携わることができ、成長と充実を感じています。環境省九州地方環境事務所地域脱炭素創成室は、他の企業の出身者も多く、各業種の価値観の違いや各組織で培われた考え方や働き方について学びを得ることができる環境でもあります。また、環境省九州地方環境事務所地域脱炭素創成室は、令和4年に設置された新しい組織であるため、立ち上げからの業務に関与できたことも、とても貴重な体験でした。

4 環境省九州地方環境事務所地域脱炭素創生室 室長補佐 大嶋 恭子 氏
 (環境省九州地方環境事務所において官民人事交流をはじめとする人事実務を担当)

(人事院)環境省九州地方環境事務所地域脱炭素創成室においては、官民人事交流制度により、多くの民間企業の方を受け入れていらっしゃいますが、受け入れによって、組織に生じた変化や学びについて教えてください。
(大嶋)まず、官民人事交流により、熱意や能力のある民間の方を受け入れることで、行政特有の縦割り主義にとらわれない活発なコミュニケーションの意識が醸成され、組織の活力が向上し、既成の概念にとらわれない企画の実現がこれまで以上に図られるようになったと感じています。また、官民人事交流により来てくださった方は、魅力的な方ばかりでしたので、組織、とりわけ若手職員はよい刺激を受け、組織の雰囲気に大きな変化が生まれています。
次に、総合的な企画力の向上などの業務体制の強化にもつながっています。企画調整段階における新たな発想、問題点の発見、妥当性の検証、コスト管理などの点で、民間企業の優れた業務マネジメント手法や厳密な検証の元で企画調整を行う意識を業務に取り入れることができました。
さらに、これは実益的な点となりますが、例えば、経済団体や業界団体とのコネクションができることで、団体との連携の強化につながったり、民間企業で活用されている便利なサービスやデジタルツールを業務に取り入れたりすることもできました。

(人事院)そうすると、民間企業の方々を受け入れることで、組織はもちろん、周囲の職員にもよい変化が生じているということでしょうか。
(大嶋)そうですね。特に若手の職員にとっては、民間出身の方と接することが、多様な働き方のスタンスを自分の中で見出すきっかけにもなっており、若手の定着支援や夢を持って働いてもらうという意味でも、官民人事交流制度活用の効果があったと感じています。

(人事院)官民人事交流制度による民間企業での勤務を希望する職員も出てきているのでしょうか。
(大嶋)民間企業出身者と接する中で、環境省での経験を民間企業の中で生かしてみたいといった考えを持つ職員も出てくると思われ、双方向の人事交流の活性化につながっていくのではないかと考えています。

(人事院)交流採用者の受け入れにおいて組織として苦労したことはありますか。
(大嶋)共通言語や共通認識が違っている点は苦労しました。行政特有の表現が伝わらないことも当然あるので、こちらは当たり前だと思っていることでも丁寧に説明したり、なんでも質問してもらうよう念押ししたり、緻密なコミュニケーションを怠らないよう日々心がけています。このほか、文書作成などの業務に必要な基本的知識についても、当たり前だと思わずに、丁寧な指導を心がけています。また、公文書管理、勤務時間管理や利害関係者との付き合い方などの公務員倫理の保持といった点については、しっかりと守っていただくよう周知徹底を図っています。特に、公文書の管理については、個人で管理するのではなく、組織で共有すべき公的な財産であるということを理解してもらうことに難儀したことがありました。

(人事院)こうした組織としての経験が、プロパー職員の初期研修の場面などで役立つこともあるのではないでしょうか。
(大嶋)そうですね。中途採用も増えていますが、中途採用職員に対する研修や受け入れ体制の構築においてもこうした気づきは生かしていけると思います。

(人事院)最後に、交流採用者に対するサポート体制について、心がけていることをお伺いさせてください。
(大嶋)環境省内の民間企業出身者同士のネットワークを作り、相談し合える体制の構築を目指しています。また、九州地方環境事務所内に部署横断ゼミを設け、担当業務以外の分野の知見も得られるような機会も提供しています。
業務においては、環境省の職員だからこそ行ける場所があったり、話を伺うことができる方がいらっしゃったりしますので、積極的に現場に連れて行き、現場での実体験から得られる知見を今後のキャリアに生かしてもらえるよう、工夫をしています。一方、プロパー職員が行うべき仕事については、プロパー職員を中心に行い、過度の負担が生じないよう配慮しています。
 

(本インタビューは令和5年9月に実施しました。所属等は令和5年9月時点のものです。)

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