第1編 人事行政

第2部 グローバル社会を切り拓く国家公務員を育てるために

第1章 複雑・高度化する国際関係業務等の現状

3 国内の行政におけるグローバル化の進展

ICT技術などの目覚ましい発達はグローバル化の一層の進展をもたらしており、米国のGAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)や中国のBAT(Baidu, Alibaba, Tencent)など様々な世界的企業は国境を越え、SNSでのコミュニケーション、インターネット上での情報伝達やモノ・サービスの売買・移動等を可能にする場を提供し、各国における経済活動や人々の生活にも大きな影響を与えている。一方、国際的にICT技術の開発競争が進んでおり、これを悪用した情報の毀損及び漏えい、金銭の窃取・詐取等の損害や業務・機能・サービス障害といった脅威に対応するためのサイバーセキュリティの確保も国際的な連携が欠かせなくなっている。このため、国内の経済活動や生活の安心・安全に関わる政策を検討する際には、これらの技術の世界的な動向や国内への影響を考慮しつつ、国際的な条約やルールなども把握した上で適切な行政運営を行っていくことが求められている。このように我が国の多くの行政分野において国際的な関わり合いが避けて通れなくなっている。

日本国内の状況を見ても、我が国への関心の高まりに加え、ビザの発給要件の緩和等により、訪日する外国人旅行者数は、平成21年の約679万人から令和元年には約3,188万人(369.5%増)となるなど、近年大幅に増加している(日本政府観光局資料)。こうした状況を背景に、例えば、税関、出入国管理、検疫(※2)の業務に従事する職員の定員は10年前の平成21年度と令和元年度とで比べて見ると、税関は8,713人から9,617人(10.4%増)、出入国管理は3,565人から5,432人(52.4%増)、検疫は2,258人から2,745人(21.6%増)と、それぞれ大幅に増加している。新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響により国際社会全体で人の移動が制限され、訪日外国人旅行者数は前年同月比で2020年2月が58.3%減、3月が93.0%減(日本政府観光局資料)となっており、先行き不透明な状況ではあるが、これらの業務の重要性は、今後も増していくものと思われる。さらに近年、外国人材の適正・円滑な受入れの促進に向けた取組とともに、外国人との共生社会の実現に向けた環境整備が講じられてきており、防災や保健・医療等の危機管理においても、外国人を念頭に置いてそれぞれの国・地域の文化的背景を踏まえた適切な情報提供を行うなどの対応をすべき行政も多くなってきている。

※2 検疫の業務に従事する職員は厚生労働省の検疫所並びに農林水産省の植物防疫所及び動物検疫所の職員をいう。

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