第1編 人事行政

第1部 人事行政この1年の主な動き

第1章 適正な公務員給与の確保等

1 勧告・報告

人事院は、令和2年10月7日、国会及び内閣に対し、特別給に関する報告及び勧告を行い、同月28日には、同様に月例給に関する報告を行った。

(1)給与勧告の意義と役割

人事院の給与勧告は、労働基本権制約の代償措置として、国家公務員に対し、社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保する機能を有するものである。給与勧告においては、従来より、国家公務員の給与水準の改定のみならず、俸給制度及び諸手当制度の見直しも行ってきている。

労働基本権が制約された国家公務員の給与について、人事院は、労使当事者以外の第三者の立場に立ち、民間給与との精確な比較により国家公務員と民間企業従業員の給与水準を均衡させること(民間準拠)を基本に労使双方の意見を十分に聴きながら、勧告を行っている。勧告が実施され、適正な処遇を確保することは人材の確保や労使関係の安定に資するものであり、能率的な行政運営を維持する上での基盤となっている。

民間準拠を基本に勧告を行う理由は、国家公務員も勤労者であり、勤務の対価として適正な給与を支給することが必要とされる中で、公務においては、民間企業と異なり、市場の抑制力という給与決定上の制約が存しないこと等から、その給与水準は、その時々の経済・雇用情勢等を反映して労使交渉等によって決定される民間の給与水準に準拠して定めることが最も合理的であると考えられることによる。

(2)民間給与との較差に基づく給与改定等

人事院は給与勧告を行うに当たり、毎年、「国家公務員給与等実態調査」及び「職種別民間給与実態調査」を実施している。「職種別民間給与実態調査」は、企業規模50人以上、かつ、事業所規模50人以上の事業所を調査対象として実施し、これらの事業所の民間企業従業員の給与との比較を行っている。

令和2年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を考慮し、勧告の基礎となる「職種別民間給与実態調査」について、例年より時期を遅らせた上で2回に分けて実施した。特別給等に関する調査については、6月29日から7月31日までの期間で実地によらない方法により先行して実施し、実地調査が基本となる月例給に関する調査については、感染予防対策を徹底した上で、8月17日から9月30日までの期間で実施した。なお、新型コロナウイルス感染症に対処する医療現場の厳しい環境に鑑み、病院は調査対象から除外した。

ア 月例給

国家公務員の給与と民間企業従業員の給与との比較においては、主な給与決定要素を同じくする者同士の4月分の給与額を対比させ、精密に比較を行っている。

給与は、一般的に、職種を始め、役職段階、勤務地域、学歴、年齢等の要素を踏まえてその水準が定まっていることから、国家公務員の給与と民間企業従業員の給与との水準比較については、両者の給与の単純な平均値ではなく、給与決定要素を合わせて比較(同種・同等比較)することが適当である。

また、調査対象については、企業規模50人以上の多くの民間企業は公務と同様、部長、課長、係長等の役職段階を有しており、公務と同種・同等の者同士による給与比較が可能であること等から、現行の調査対象が適当である。

このような考え方の下、令和2年も、全国の民間事業所のうち、企業規模50人以上、かつ、事業所規模50人以上の事業所を調査対象とし、その事業所に勤務する従業員の春季賃金改定後の給与実態を把握するため、「職種別民間給与実態調査」を行った。また、「国家公務員給与等実態調査」においては、給与法が適用される常勤職員約25万人の給与の支給状況等について全数調査を行った。

両調査により得られた令和2年4月分の一般の行政事務を行っている国家公務員(行政職俸給表(一)適用職員)とこれに類似すると認められる事務・技術関係職種の民間企業従業員の月例給について、主な給与決定要素である役職段階、勤務地域、学歴、年齢を同じくする者同士の給与を対比させ、精密に比較(ラスパイレス方式)を行い、官民較差を算出したところ、国家公務員給与は民間給与を平均164円(0.04%)上回っていた。

官民給与の較差が小さく、俸給表及び諸手当の適切な改定を行うことが困難な場合には、従来から月例給の改定を見送っており、令和2年についても、同様の事情が認められることから、月例給の改定を行わないこととした。

イ 特別給

令和元年8月から令和2年7月までの1年間において、民間事業所で支払われた特別給は、年間で所定内給与月額の4.46月分に相当しており、国家公務員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数(4.50月)が民間事業所の特別給の支給割合を0.04月分上回っていたことから、支給月数を0.05月分引き下げ、4.45月分とすることとした。

ウ 給与改定の内容

前記のとおり、国家公務員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数が民間事業所の特別給の支給割合を0.04月分上回っていたことから、支給月数を0.05月分引き下げることとした。支給月数の引下げ分は、民間の特別給の支給状況等を踏まえ、期末手当から差し引くこととした。