第1編 人事行政

第3部 令和2年度業務状況

第3章 職員の給与

第2節 給与法の実施等

2 級別定数の設定・改定等

(1)級別定数の設定・改定等に関する意見の申出等

職員の給与は、その職務と責任等に応じて決められる俸給表及び職務の級に基づいて支給され、職員の職務の級は級別定数の枠内で決定することとされている。級別定数は、府省ごとに、職員の職務をその複雑、困難及び責任の度に応じて各俸給表の職務の級別に分類し、その職務の級ごとの適用職員数(枠)を、会計別、組織別及び職名別に定めたものであり、各府省において、適正・妥当な職務の級の決定が行われるよう、給与格付の統一性、公正性を確保する役割を担っている。具体的には、各俸給表の職務の級ごとに定められた標準的な職務を基準とし、職員の担当する職務の困難度や責任の程度等を踏まえ、当該職務の遂行に必要な資格、能力や経験等の内容も考慮して級別定数が設定される。

級別定数の設定・改定及び指定職俸給表の号俸の決定は、組織管理の側面を持つことから内閣総理大臣の所掌に属するものとされているが、級別定数等は、職員の給与決定の基礎となる勤務条件であり、その設定・改定等に当たって、労働基本権制約の代償機能が十分に確保される必要があることから、「内閣総理大臣は、職員の適正な勤務条件の確保の観点からする人事院の意見については、十分に尊重するもの」と給与法で定められている。この人事院の意見は、憲法上保障された労働基本権制約の代償機能として、職員の適正な勤務条件を確保する観点から内閣総理大臣に提出するものであり、国会及び内閣に対し、その完全実施を要請している人事院勧告と同様の性格を有するものである。

級別定数等については、行政需要の増大や行政の複雑・多様化等に伴う業務の変化に対応し、能率的な行政運営を推進するとともに、適正かつ安定した人事運用を確保するため、毎年、所要の見直しを行ってきている。令和2年度においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、令和3年度の概算要求の提出期限が1か月遅れとなったことを受け、各府省要求に始まる予算編成過程は令和2年9月末からの開始となったが、人事院は、この過程において労使双方の意見を聴取して級別定数の設定・改定等に関する案を作成し、予算概算閣議決定前の令和2年12月18日に意見として内閣総理大臣に提出した。この人事院の意見を反映した予算の成立を視野に、人事院は各府省における級別定数の運用に必要な事項等を加えた級別定数等に係る意見の申出を令和3年3月30日に内閣総理大臣に行った。人事院の意見の申出を受けて、内閣総理大臣は、意見の申出どおり級別定数の設定・改定等を行った。

意見の作成に当たって、人事院は、公務組織の円滑な運営及び職員の士気の維持・高揚を図る必要性並びに職員構成の変化による世代間の大きな不公平や府省間の著しい不均衡が生じないこと等に配慮しつつ、職務・職責の内容・程度、職務の遂行に必要な資格、能力や経験等の内容に応じた適切な給与上の評価を行うとともに、必要性の薄くなった定数については積極的に回収を進めるなど、各府省の実情を踏まえたものとしている。

このほか、令和2年度の年度途中において政府が行った機構の新設及び定員の増減等に対応して、人事院は、級別定数の設定・改定等に関する意見の申出を5件行った。人事院の意見の申出を受けて、内閣総理大臣は、いずれも意見の申出どおり級別定数の設定・改定等を行った。また、指定職の運用に関する見解の申出を2件行った。人事院の見解の申出を受けて、内閣総理大臣は、見解の申出どおり、「指定職の運用について」(平成26年5月30日内閣総理大臣決定)の改正を行った。

(2)職務の級の決定等の審査

職員の採用、昇格、昇給に当たっての給与決定については、規則9-8(初任給、昇格、昇給等の基準)等に定める基準に従い、各府省において決定できることとしている。ただし、本府省の企画官等の標準的な職務の級である行政職俸給表(一)7級以上の上位級への決定において基準どおりでない例外的な給与決定に係る案件や、民間における特に有用な知識・経験を有する者の初任給決定における特例的な決定を行う案件等については、人事院への協議を必要としている。このため、人事院は各府省からの個別の協議に応じ、審査を行った。

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