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第1編 《人事行政》

【第1部】 人事行政この1年の主な動き

第1章 国家公務員制度改革

2 国家公務員法等の一部を改正する法律による改正の内容


今回の改正により、内閣総理大臣が幹部職員人事の一元管理等を行うこととなり、その事務を担うとともに、政府としての人材戦略を推進していくため、新たに内閣人事局が設置された。人事院と内閣総理大臣との機能分担は、以下のように整理された。

人事院としては、今回の国家公務員法等の改正に当たり、人事行政の公正の確保及び労働基本権制約の代償機能を引き続き担うこととされた趣旨を踏まえ、公務の民主的かつ能率的な運営の保障という国家公務員法の目的の実現に今後とも努めることとする。

(1)任用に関する事項

改正法により一部改正された国家公務員法(以下「改正国公法」という。)においては、任免の根本基準の実施について、従前は全て人事院の所掌とされていたが、職員の公正な任用の確保に関し必要な事項は、引き続き人事院の所掌とする(改正国公法第33条第2項第1号及び第4項)一方、内閣総理大臣は、行政需要の変化に対応するために行う優れた人材の養成及び活用の確保に関し必要な事項を所掌する(同条第2項第2号)こととされた。なお、同号の事項の確保に関するものとして、職員の採用、昇任、降任及び転任に関する制度の適切かつ効果的な運用の確保に資する基本的事項を、現行の採用昇任等基本方針(閣議決定)の中に加えて定める(改正国公法第33条の2)こととされている。

(2)採用試験に関する事項

改正国公法においては、現行の採用試験体系を前提として、総合職試験及び一般職試験という対象官職及び種類を法定した上で、採用試験の方法、試験科目、合格者の決定の方法その他採用試験に関する事項については、引き続き人事院が所掌することとされた。一方、各府省の特別なニーズにより行われる専門職試験等の対象官職及び種類の詳細並びに採用試験の種類ごとに確保すべき人材像等については、人事院の意見を聴いて政令により定めることとされている。

(3)幹部職員人事の一元管理

本府省の事務次官・局長・部長等の官職である幹部職を占める職員(以下「幹部職員」という。)は、大臣等を直接補佐し、政治主導の下で所管行政の事務執行に責任を持つ立場にあり、行政運営に与える影響が大きいことから、その人事については、情実人事を求める圧力や不当な影響を受けることなく、適材適所の人事が行われることが極めて重要である。このため、能力実証やそれに基づく人事は客観的な基準やあらかじめ定められた手続の下で公正に行われることが求められる。

改正国公法においては、内閣総理大臣の委任を受けた内閣官房長官は、現に幹部職員である者及び幹部職員にふさわしい能力を有すると見込まれる者について、幹部職に属する官職に係る標準職務遂行能力を有することを確認するための審査(以下「適格性審査」という。)を公正に行い、確認を受けた者について幹部候補者名簿を作成するものとされている。

適格性審査及び幹部候補者名簿に関する政令を定めるに当たっては、公正確保の観点から、人事院の意見を聴くこととされている。

さらに、幹部職に係る任命は、任命権者が、幹部候補者名簿に記載されている者のうち、人事評価等に基づき、当該任命しようとする幹部職についての適性を有すると認められる者について、あらかじめ内閣総理大臣及び内閣官房長官に協議した上で、当該協議に基づき行うこととされている。

(4)研修に関する事項

研修については、これまで各府省がその主体とされるとともに、人事行政の公正確保の事務を担う中央人事行政機関である人事院が専門機関としてその主体とされていたところである。

改正国公法においては、中央人事行政機関としての内閣総理大臣も研修の主体として認められ、各府省、内閣総理大臣及び人事院の三者が研修を実施することとなった。また、人事院は、国民全体の奉仕者としての使命の自覚及び多角的な視点等を有する職員の育成並びに研修の方法に関する専門的知見を活用して行う職員の効果的な育成の観点から、自ら研修を計画し実施することとされ、人事院が専門機関として行う研修に変更はなかった。

法律で定められた研修の根本基準の実施につき必要な事項は、人事院の意見を聴いて内閣総理大臣が政令で定めることとされ、これまで人事院が行ってきた各府省が実施する研修の総合的企画・調整については、政府としての人材戦略を進めていくために全省的調整を行うことがふさわしいとの観点から、内閣総理大臣が行うこととされた。

また、人事院は、これまでと同様に、国家公務員の研修における公正確保の事務を担うこととされ、①内閣総理大臣及び各府省が行う研修の計画の樹立及び実施に関して監視を行うこと、②研修の実施状況の報告を求めること、③法令に違反した研修が行われていた場合には、是正のため必要な指示を行うことができることとされている。

(5)幹部職員の特例降任

改正国公法においては、任命権者が事務次官や局長等の幹部職に能力等に秀でた別の者を就けたい場合、当該幹部職に任用されている職員は、国公法第78条第1号に規定する「勤務実績がよくない場合」に該当しない場合であっても、改正国公法第78条の2に定める要件のいずれにも該当すれば、意に反して幹部職の範囲内において直近下位の段階の官職に降任を行うことができるという特例降任の制度が導入された。同条には、①同一の任命権者の下で、同じ職制上の段階に属する他の官職を占める幹部職員と比べて勤務実績が劣っていること、②当該幹部職員が現に任命されている官職に他の特定の者を任命すると仮定した場合において、当該他の特定の者が、当該幹部職員より優れた業績を挙げることが十分見込まれること、③転任させるべき適当な官職がないこと等の要件が定められているが、詳細については人事院規則に委任された。

(6)級別定数等に関する事項

職務の級の定数は、職員の給与決定の土台となる勤務条件であることから、これまでその設定及び改定は、労働基本権制約の代償機能を担う人事院が所掌してきた。

今回の改正では、級別定数の設定・改定が、組織管理の側面を持つことから、改正法により一部改正された一般職の職員の給与に関する法律第8条第1項において、内閣総理大臣の所掌に属するものとされた。しかしながら、同時に、級別定数は勤務条件の側面を持つものであり、その設定・改定に当たって、代償機能が十分に確保される必要があることから、人事院の意見を聴取し、これを十分に尊重することが定められた。この人事院の意見は、憲法上保障された労働基本権の制約の代償機能として、職員の適正な勤務条件を確保する観点から内閣総理大臣に提出するものであり、国会及び内閣に対し、その完全実施を要請している人事院勧告と同様の性格のものである。

また、級別定数の設定・改定の運用については、代償機能を確保するため、各府省要求に始まる予算編成過程において、人事院が、労使双方の意見も聴取して作成した設定・改定案を意見として内閣総理大臣に提出し、内閣総理大臣はそれに基づいて級別定数の設定・改定を行うこととなる。

指定職俸給表の適用を受ける職員の号俸の決定の方法についても、組織管理の側面を持つという観点から、内閣総理大臣の所掌に属することになったが、これについても、勤務条件の側面を持つものであることから、人事院の意見を聴取し、これを十分に尊重して定めることとされた。

(7)官民人事交流

改正法により一部改正された国と民間企業の間の人事交流に関する法律においては、人事交流の対象となる法人の拡大、交流派遣に当たり職員を人事院に異動させる手続を廃止し、任命権者自らが交流派遣を実施する仕組みの導入、国会及び内閣に対する報告事項の拡大等が定められた。


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