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第1編 《人事行政》

【第1部】 人事行政この1年の主な動き

第2章 適正な公務員給与の確保

1 職員の給与等に関する報告


平成25年8月8日、人事院は国会及び内閣に対し、一般職の職員の給与等について報告を行った。その内容は以下のとおりである。

(1)民間給与との較差に基づく給与改定

ア 月例給

人事院は給与勧告を行うに当たり、例年、春季賃金改定後の民間企業の給与実態を把握するため、「職種別民間給与実態調査」を行っている。平成25年は、民間給与の状況をできる限り広く把握し、公務員給与に反映するため、従来、調査対象としてこなかった「農業、林業」、「宿泊業、飲食サービス業」等の産業も含め、調査対象を全産業に拡大して調査を実施した。また、「国家公務員給与等実態調査」を実施し、給与法が適用される常勤職員約26万人の給与の支給状況等について全数調査を行った。その際、平成25年も、国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律(平成24年法律第2号、以下「給与改定・臨時特例法」という。)により、平成24年4月1日から平成26年3月31日までの2年間、「我が国の厳しい財政状況及び東日本大震災に対処する必要性に鑑み」給与減額支給措置が講じられていることを踏まえ、平成25年4月における平均給与月額について、当該措置による減額前の額と当該措置による減額後の実際の支給額の双方を把握した。

両調査により、給与法に定める本来の給与額に基づく官民較差を算出したところ、国家公務員給与が民間給与を平均76円(0.02%)上回っており、他方、給与改定・臨時特例法に基づく給与減額支給措置による減額後の給与額に基づく官民較差を算出したところ、国家公務員給与が民間給与を平均29,282円(7.78%)下回っていた。

勧告の前提となる官民比較については、給与減額支給措置が国公法第28条に基づく民間準拠による給与水準の改定とは別に東日本大震災という未曾有の国難に対処するため、平成25年度末までの間、臨時特例として行われているものであることを踏まえ、平成24年と同様、給与減額支給措置による減額前の給与額に基づき行うこととした。その結果、官民較差が極めて小さく、俸給表及び諸手当の適切な改定を行うことが困難であることから、平成25年は、月例給の改定を行わないこととした。

イ 特別給

平成24年8月から平成25年7月までの1年間において、民間事業所で支払われた特別給は、年間で所定内給与月額の3.95月分に相当しており、給与法の定めによる国家公務員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数(3.95月)と均衡していた。

期末手当・勤勉手当についても給与減額支給措置の対象となっているが、この給与減額支給措置は、上記のとおり、民間準拠による給与水準の改定とは別に東日本大震災という未曾有の国難に対処するため、臨時特例として行われているものである。

これらを踏まえ、平成25年は、特別給の改定を行わないこととした。

ウ 適正な給与の確保の要請

平成25年は、給与減額支給措置による減額前の月例給及び特別給の水準が民間給与と均衡していたことから、給与水準改定のための勧告は行わないこととしたが、労働基本権制約の代償機関として、給与減額支給措置が終了する平成26年4月以降の国家公務員の給与については、民間準拠による水準が確保される必要がある旨表明し、国会及び内閣に対し、人事院勧告制度の意義や役割に深い理解を示し、民間準拠による適正な給与を確保するよう要請した。

(注) 平成24年4月から平成26年3月末まで、給与法適用職員について講じられた給与減額支給措置の概要は次のとおりである。

1 俸給月額

(1)本省課室長相当職員以上(指定職、行(一)10~7級)
△9.77%
(2)本省課長補佐・係長相当職員(行(一)6~3級)
△7.77%
(3)係員(行(一)2、1級)
△4.77%

その他の俸給表適用職員については、行(一)職員に準じた支給減額率

2 俸給の特別調整額(管理職手当)
一律△10%
3 期末手当及び勤勉手当
一律△9.77%

(2)給与制度の総合的見直し

平成18年度から平成22年度にかけて、給与構造改革において俸給及び諸手当の制度全般にわたる改革を行うなど、これまでも必要な取組を進めてきたところであるが、その後の社会経済情勢の変化を踏まえると、一層の取組を進めるべき課題が種々生じてきている。

平成25年は、民間の産業構造の変化への対応として「職種別民間給与実態調査」の調査対象産業の拡大を行ったところであるが、引き続き民間企業の組織形態の変化への対応が必要である。また、民間賃金の低い地域を中心に、地域の公務員給与が高いのではないかとの指摘が依然としてあることを踏まえると、地域間の給与配分の見直しを進める必要がある。さらに、50歳台後半層の給与水準については、公務が民間を上回っている状況が続いており、このような官民の給与差等を踏まえると、世代間の給与配分を更に適正化する観点から、給与カーブの見直し等が必要である。このほか、昇給効果の在り方、技能・労務関係職種の給与や諸手当の見直しについて検討する必要がある。

また、国家公務員の給与の在り方を中心に、基本に立ち返って検討を行うため、平成25年4月から人事院において開催した、各界の有識者から成る「国家公務員の給与の在り方に関する懇話会」(座長:清家篤慶應義塾長)においては、国家公務員の給与の在り方について、その役割や仕事にふさわしい適正な処遇を行うという観点から検討を行うべきである等の意見が示されている。

こうした状況を踏まえ、人事院としては、国家公務員の給与に対する国民の理解を得るとともに、公務に必要な人材を確保し、職員の士気や組織の活力の維持・向上を図っていくために、給与カーブの設定等の俸給表構造の在り方、俸給を補完する諸手当の在り方を含め、給与制度を総合的に見直していくこととし、給与減額支給措置終了後に見直しを実施することができるよう、所要の準備を進めることとした。

(注) 平成26年3月に上記懇話会の報告が取りまとめられ、同報告においても、国民にとっては、国家公務員に国民の生活を支え、安全・安心を守る等の役割をしっかりと果たしてもらうことが重要であり、国家公務員の給与水準については、その役割や仕事にふさわしい適正な処遇を行うという観点から考えるべきである等の意見が示されている。

(3)雇用と年金の接続

国家公務員の雇用と年金の接続については、平成25年3月に閣議決定された「国家公務員の雇用と年金の接続について」によって、現行の再任用の仕組みにより年金支給開始年齢に達するまで希望者を再任用するものとされた。年金支給開始年齢が62歳に引き上げられる平成28年度までには、平成26年度からの再任用の運用状況を随時検証しつつ、人事院が平成23年に行った意見の申出に基づく段階的な定年の引上げも含め再検討がなされる必要があるが、それまでの間、同閣議決定を踏まえ、雇用と年金の確実な接続を図るためには、各府省において、再任用の円滑な実施に向けた取組を行う必要があるとともに、能力・実績に基づく人事管理を徹底するなどの60歳前の職員も含めた人事管理全体の見直しや、中長期的な人事配置を見据えた行政事務の執行体制の再構築等の取組を行う必要がある。

また、再任用職員の給与については、同閣議決定において、人事院に対し、再任用職員の今後の職務や働き方の実情等を踏まえ、給与制度上の措置について必要な検討を行うよう要請がなされている。民間においては、公的年金が全く支給されない再雇用者の給与水準を公的年金が一部支給される再雇用者の給与水準から変更しないとする事業所が多くなっており、また、再雇用者が転居を伴う異動を行う場合に単身赴任手当を支給する事業所が大半となっている。再任用職員の俸給水準や手当の見直しについては、「平成26年職種別民間給与実態調査」において公的年金が全く支給されない再雇用者の給与の具体的な実態を把握した上で、再任用職員の職務や働き方等の実態等を踏まえつつ、必要な検討を進めることとしている。


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