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第1編 《人事行政》

【第2部】女性国家公務員の採用・登用の拡大に向けて

第1章 女性国家公務員の在職・採用・登用の状況

第4節 女性国家公務員の採用・登用に関する意識

2 管理職員、女性職員の意識

人事院は、平成26年2月、「女性の採用・登用の拡大に関する職員の意識調査」を実施した。調査は管理職員約450人(本省課室長・地方機関の長相当職(行政職俸給表(一)7級以上)の職員の中から男女問わず抽出)、女性職員約950人(女性管理職員全員及び係長・本省課長補佐・地方機関の課長相当職(行政職俸給表(一)3~6級)の女性職員の中から抽出)を対象にそれぞれ無記名のアンケート方式で実施した(調査票の回収率は、それぞれ87.1%、79.8%)。結果の概要は、次のとおりである。

なお、女性職員調査の結果は、女性管理職員(191人)と係長・本省課長補佐・地方機関の課長相当職(564人)を合わせた結果であるが、両者の回答傾向に大きな差は見受けられなかった。

(1)女性の能力の活用について

女性の能力の活用に関しては、「十分に活用していない」と回答した者が管理職員調査で64.6%、女性職員調査で56.8%となっている。一方、「十分に活用している」と回答した者は管理職員調査で23.9%、女性職員調査で24.2%であり、調査対象に相違があるものの、平成13年2月に実施した同様の調査における管理職員調査で13.4%、女性職員調査で10.8%という結果からは増加している。

女性の能力を十分に活用できていない原因に関しては、管理職員調査、女性職員調査ともに「職場に拘束される時間が長い実態にあること」を回答した者が最も多く、「能力・適性に見合った計画的な育成が行われていないこと」も両調査において多く回答されている。しかし、管理職員調査では「出産、育児、介護等の事情に配慮した制度が未整備であること」、「女性に自らの能力を活用しようとする意識が薄いこと」と回答した者が多数みられた一方、女性職員調査ではいずれの回答もそれほど多くなく、これらの点については、管理職員と女性職員に認識の相違が若干見受けられる(資料3)。

(2)女性が能力を発揮するために必要な方策について

女性国家公務員が能力を一層発揮し、公務で更に活躍していくために必要なことに関しては、管理職員調査及び女性職員調査のいずれにおいても「職場全体の超過勤務や深夜勤務の縮減」が最も多くなっている。このほか、両調査における上位5位までの回答をみると、「多様な職務経験の付与を通じた育成」、「女性職員自身の意識の啓発」及び「託児所、保育施設の整備、民間サービスを活用した育児・介護の支援」については、管理職員調査及び女性職員調査で共通して5位以内に入っている。一方、「育児休業中の代替要員の確保」については管理職員調査では5位以内に入っているが、女性職員調査では入っておらず、「組織のトップや管理職員の意識の啓発」については女性職員調査では5位以内に入っているが、管理職員調査では入っていない。これらの点については管理職員と女性職員の間の認識の違いが大きいものと考えられる(図12)。

図12 女性国家公務員が能力を一層発揮するために必要な方策

(3)育児休業等への配慮について

育児休業中の職員及び育児休業から復帰した職員に対して何らかの配慮が必要だと思うかという問いに関しては、管理職員調査及び女性職員調査のいずれの調査においても、「思う」と「多少思う」と回答した者を合計すると90%近くなっている。必要な配慮の内容については、いずれの調査においても「家庭生活に配慮した配置(短時間勤務制度等の活用を含む)」が最も多く、「能力・成果に基づく人事管理の徹底」が続いている(資料3)。

(4)管理職の登用に一定の人数や割合を割り当てる方式(クォータ制)について

クォータ制に関しては、「賛成である」が管理職員調査で19.8%、女性職員調査で29.1%であるのに対して、「反対である」が管理職員調査で69.0%、女性職員調査で50.6%となっており、いずれの調査においても、反対が賛成を上回る結果となっている。なお、下記(5)の登用に対する考え方において、「指定職まで登用されたい」と回答した女性職員においては、賛成、反対の割合がそれぞれ41.6%、47.7%となっていた。

賛成の理由については、いずれの調査においても「社会や職場の意識の変革のためには強制的な手段が必要である」、「女性職員自身の登用への自覚が高まり、意識改善が進む」と回答した者の割合が高くなっている。女性職員調査では前者を回答した者の割合がより高くなっているが、管理職員調査ではわずかながら後者を回答した者の割合が高くなっている。

また、反対の理由については、いずれの調査においても「適材適所ではない人事配置が増えて仕事の遂行に支障が生ずる」、「能力や適性に見合っていない地位に昇格させられることが女性自身の負担となる」と回答した者の割合が高くなっている。一方、「実力で昇進した場合でもクォータ制のおかげで昇進したと思われてしまう」と回答した者の割合は女性職員調査でのみ高くなっており、管理職員と女性職員の意識の違いが見受けられる(資料3)。

(5)将来の登用に対する考え方について(女性職員のみ回答)

現在の役職段階を超えて登用されることに関して、係長級の女性職員(行政職俸給表(一)3、4級)の回答をみると、「指定職まで登用されていきたい」、「本省課室長相当職まで登用されていきたい」がⅠ種試験等採用者で55.4%、Ⅱ種試験等採用者で24.8%、Ⅲ種試験等採用者で15.9%であるのに対し、「現在の役職段階(係長)を超えて登用されたいが、本省課長補佐相当職までで十分」、「現在の役職段階(係長)を超えた登用を望まない」が、Ⅰ種試験等採用者で25.7%、Ⅱ種試験等採用者で61.6%、Ⅲ種試験等採用者で72.7%であった。「本省課長補佐相当職までで十分」、「現在の役職段階(係長)を超えた登用を望まない」を選択した理由としては、「自分の能力が足りないと感じている」が、Ⅰ種試験等採用者で63.2%、Ⅱ種試験等採用者で74.3%、Ⅲ種試験等採用者で72.9%、「昇進すると家庭生活との両立が困難である」が、Ⅰ種試験等採用者で68.4%、Ⅱ種試験等採用者で60.6%、Ⅲ種試験等採用者で45.8%であった。

今回の意識調査結果からは、次のような課題が読み取れるものと考える。

  • 超過勤務への問題意識は、管理職員、女性職員の双方において非常に高い。能力・実績に基づき、男性職員と女性職員が公正に競争して昇進していく環境を作るためには、ワーク・ライフ・バランスを意識しつつ、公務の職場における働き方を大きく変えていくことが求められている。
  • 育児休業取得後復帰した者への配慮については、家庭生活への配慮に加え、能力・実績に基づく人事管理を徹底するよう留意することが必要であると感じている者が多い。すなわち、能力に応じた仕事を付与するとともに、育児等で勤務時間が制限される中で、勤務した時間ではなく仕事の成果による評価が必要とされている。
  • クォータ制を導入して女性を優先的に抜擢することについては、賛否両論が示されているが、公務遂行において支障が生ずる可能性があることに加えて、能力・実績に基づいて昇進した女性職員が周囲から「クォータ制のおかげで昇進した」との評価を受けたり、能力・適性に見合わない地位を負担に感じる女性職員が生じる可能性があるなどの懸念が示されている。
  • Ⅱ種試験等採用職員、Ⅲ種試験等採用職員においては、本省課室長相当職以上に登用されることを望んでいない者が多く、その理由として家庭生活との両立よりも自分の能力が足りないことを挙げている。今後、多様な職務経験の付与を行うとともに、能力開発やキャリアアップについて考える機会を積極的に与えていくことが必要である。

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