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第1編 《人事行政》

【第2部】女性国家公務員の採用・登用の拡大に向けて

第3章 諸外国における女性国家公務員の採用・登用の状況と課題

第4節 フランス

3 実施した施策の評価と今後の取組

フランスでは、あらゆる分野で女性が責任あるポストに就任する必要性について広く理解されてきており、現状においてクォータ制の導入に対する批判や混乱はないとされている。

現在、公務における女性の登用は、国全体で取り組む優先課題と位置付けられており、新たに任命された高級職に占める女性の割合は、2012年には24%であったが、2013年には29%となっている。2018年までの当初の目標(40%)は達成される見込みであり、今後は、その目標の1年前倒し達成を視野に入れて、女性の登用を積極的に推進することとされている。

コラム:マリークリスティーヌ・ルプティ財務監査院長へのインタビュー

仕事と家庭の両立について

私がキャリアを積んできた租税分野は男性社会と言われているが、女性であることで不利にも有利にもなったことはない。配偶者と3人の子供がおり、仕事と家庭生活との両立は簡単ではないし、多くのエネルギーを要するが、好きな仕事をしているので何とかやり遂げることができている。首相キャビネに勤務していた時は、子供は4歳と5歳と7歳だったが、帰宅時間が遅く、夜中の2時まで働くこともあった。その頃、朝から晩まで家で子供の面倒を見てくれる人を雇っていたが、都合がつかないときは、配偶者、両親、ベビーシッターに子供の世話をお願いしていた。経済的な負担はそれなりに大きかったが、フランスでは子供の預け先が充実していて、用途に応じて種類も豊富であり、子育てと仕事の両立がしやすい環境にある。また、配偶者が私の仕事を理解し、家事や育児に協力してくれたことも大きな要素であった。

クォータ制について

クォータ制は、サルコジ政権、オランド政権と引き続いて行われている施策であり、すばらしい施策と言わなければいけないのかもしれないが、個人的には快く思っていない。私のような考えは少数派だが、クォータ制は女性にとって屈辱的なものだと捉えている。同施策の導入によって女性があるポストに就任したら、女性だから就任できたのだということになる。クォータ制導入の決定に携わった人は、私の見解を理解してくれたが、女性の幹部職員を増やすためには、このような施策を導入しなければならない時期にあったため導入された。しかし、女性の幹部職員を増やすためには、まず女性の幹部要員を採用しなければならない。財務監査官職員群のシェフ・ド・コール(注)として、ENAの卒業者の採用に関与しているが、私の所属するコールに女性を引きつけること、つまり女性の幹部要員を確保することは簡単なことではない。毎年、ENAから5人採用するが、女性は1人か2人で、5人全員が女性だった年もあったが、それは例外である。

私はシェフ・ド・コールとして世代、性別を問わず多くの財務監査官と話す機会があるが、女性の登用に当たって考えなければならないことの一つは、「自分はトップになりたくない」と私に言う男性はいないが、女性にはそのように言う人がいるということである。

(注) シェフ・ド・コールはグラン・コールと呼ばれる威信の高いコールのトップに当たる職員であり、コール所属職員の人事に影響力を有している。財務監査官群もグラン・コールの一つである。


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