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第1編 《人事行政》

【第2部】女性国家公務員の採用・登用の拡大に向けて

第4章 女性国家公務員の採用・登用の拡大に向けて

第2節 登用の拡大に向けて

1 働く環境へのアプローチ

女性職員の登用の拡大を図るに当たっては、現在の公務組織における働き方・マネジメントの在り方の見直しが不可欠である。また、男女の固定的性別役割分担意識の根強さが指摘されることの多い我が国においては、両立支援策の実施等を通じて、家庭における役割分担の見直しを進めていく必要がある。

(1)長時間労働慣行の見直しと効率性重視の働き方への転換

長時間労働が職務遂行に必須の職場では、家庭責任を負うがゆえに勤務時間に制約のある職員が、そのような制約のない職員と同じ条件で能力・実績を競い、キャリアステップを上がっていくことは困難である。

第1章で示した意識調査の結果において、女性職員、管理職員双方とも、女性が能力を発揮できない最大の原因は職場への拘束時間の長さであり、女性の活躍を推進していくためには、超過勤務・深夜勤務の縮減が必要であるとしている者が最多となっていることも、女性職員の登用拡大に当たってこの課題を解決することの重要性を示している。

超過勤務の縮減は、公務の職場における勤務条件改善の課題として長年取り組まれてきたが、いまだ大きな進展は得られていない。今般、女性の登用拡大が政府の重要課題とされるに際して、この課題への抜本的対策を講じることは不可欠である。改めて政府全体として、職員の正規の勤務時間終了後の勤務の実態を洗い出し、それを踏まえた上で、増員を含む職場における業務体制の見直し、不必要な業務の洗い出し等による業務のスリム化、管理者を始めとする職員の意識改革等に真摯に取り組むべきである。また、国会対応業務など、行政部内の努力のみでは対応できない業務については、関係者の理解を求めることにより積極的に改善を図る必要がある。

さらに、このような超過勤務縮減の取組と並行して、組織への貢献度を評価するに当たっては、勤務時間の長さではなく、上げた成果を重視すべきことを評価者に徹底していくことも重要である。

(2)十分な能力発揮を促すような両立支援制度の活用促進

育児休業等の両立支援制度の整備と利用促進は、家庭との両立困難を理由とした離職を減少させ、女性職員の勤務継続に貢献したと考えられる。一方で、先進的な取組を行っている民間企業等では、長期にわたる休業等の利用が、職務経験における空白を生じさせ、女性の職務復帰後のキャリア形成に悪影響を与えているとの見方も生じており、長期間の休業の取得ではなく、むしろ職務復帰を円滑に行うための取組に重点を置きつつある。

公務においても、今後は、両立支援制度の利用前後及び利用中における相談や情報提供などの支援体制を充実させることにより、女性職員がその能力を十分に発揮し得る状態を早期に回復させ、本来の業務に円滑に復帰させることに重点を置いた取組を進めることが必要となる。

さらに、女性職員の登用が進んでいる欧米諸国においては、短時間勤務やフレックスタイムなど柔軟な勤務時間制度やテレワークの利用が進んでいる。我が国の公務の職場においては、欧米諸国と異なり、主に集団執務体制を採っていることや超過勤務が常態化していることから、柔軟な勤務時間制度などは馴染みにくい面もあり、現在、その普及は必ずしも進んでいない。しかしながら、家庭責任を負いながら働く職員については、職場での勤務時間を柔軟に設定することにより、勤務能率ひいては成果の向上が期待できると考えられる。したがって、超過勤務の縮減を進めるとともに、周囲と調整・協議することなく単独で遂行可能な業務などの洗い出しや業務体制の見直しを積極的に進めることにより、柔軟な勤務時間制度の利用を具体化することも課題となる。

(3)家庭における役割分担意識の改革

男性職員の両立支援制度の利用は、近年若干の進展はみられるものの、平成24年度における一般職国家公務員の育児休業の取得状況に関してみると、女性は、96.5%の職員が取得し、その期間も平均14.7月であるが、男性職員の取得率は3.7%で、取得期間も平均3.4月にとどまっている。介護休暇の取得に関しても、依然として取得者の多くは女性職員となっており、女性職員が主に家庭責任を担う状況が続いている。啓発・周知活動を通じ、男性職員の両立支援制度の利用促進を積極的に働きかけること等により、家庭における役割分担意識を徐々にでも変えていくことは、女性の家庭における負担を減らし、職場において十分に能力を発揮することを促すこととなり、我が国における女性の登用促進に寄与すると考えられる。第3章で取り上げたように、スウェーデンやドイツなどにおいても、女性の登用を支えるものとして男性の育児休業取得の促進が重要な課題とされ、取り組まれていることに留意すべきである。


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