倫理審査会では、倫理の保持の施策の参考とするため、倫理制度や公務員倫理をめぐる諸問題について、各界から幅広く意見を聴取しており、また、各府省等における倫理法・倫理規程の運用実態、倫理法・倫理規程に対する要望等の把握にも努めている。
(1)有識者との懇談会等
倫理審査会では、倫理法・倫理規程が施行されて以降、各界の有識者から、職員の倫理の保持の状況や倫理制度に対する評価、倫理の保持のための施策などについての意見聴取を続けており、平成25年度においては、東京都及び広島市において、企業経営者、学識経験者、報道関係者等の各界の有識者と倫理審査会の会長や委員との懇談会を開催した。また、前記のとおり各府省等の官房長等との会議を開催し、各府省等における倫理法・倫理規程の運用状況や業務への影響、倫理法・倫理規程に対する要望事項などを聴取した。
<有識者との懇談会における主な意見>
【東京都】
- ●日本の国家公務員の倫理水準はかなり高いと思う。処分が厳正であることが予防的な意味において大変大きな効果を上げている。
- ●倫理的な組織風土をいかに構築するかということは組織にとって一番大事なことである。特に幹部が常にそのことを意識して職員に示すことが重要である。
- ●通報制度は重要。民間と比べて通報が非常に少ない印象。通報窓口の周知については改善した方がよい。
- ●現在の規制内容は適正だと思う。全体的に見ると、倫理法の制定後は、倫理上あまり大きな問題は生じることなく済んでいると思う。
- ●倫理法の制定によってルールは明確になったと思うが、過度に萎縮させないようにうまく運用していただきたい。
- ●いかに積極的に良い仕事ができるか、いかに本当に国民の公僕としてベストを尽くすのかという積極的な倫理を推進していただきたい。
【広島市】
- ●公務員の在り方、モラル、倫理というのは、単に利害関係人と飲食してはいけないとかに特化していくと、必ずしも問題が見えてこない。公務員がいかに給料に見合った良い仕事をしているかを国民にしっかり伝え、理解してもらう努力なくして、国民の公務員に対する信頼は回復しないとの印象を受けている。
- ●一般的に、民間企業の方が倫理感が高くCSR(企業社会貢献活動)等の取組も進んでいるように思われているが、国家公務員の違反件数は非常に少なく、その点で、倫理審査会のやっている倫理保持施策が一定の成果を上げているものと評価できると思う。
- ●倫理を説くことで公務員が萎縮してしまったり、そのことによって仕事の実効性が上がらないということであれば、むしろ問題であり、倫理の積極的な視点も取り入れていかないといけない。
(2)各種アンケート調査結果
倫理審査会では、倫理保持のための施策の立案のため、例年、国民各層に対するアンケート調査を実施している。
平成25年度における各種アンケート調査結果の概略は、次のとおりである。
・市民アンケート
国民各層から年齢・性別・地域等を考慮して抽出した1,000人を対象に、平成25年11月に実施(アンケートリサーチ業者を通じて実施)
・有識者アンケート
倫理審査会が公務員倫理モニターとして委嘱した各界の有識者200人(学識経験者、企業経営者、報道関係者、地方自治体の長、労働組合役員、市民団体役員、弁護士等)を対象に平成25年11月から12月にかけて実施(回答数198(回答率99.0%))
・職員アンケート
一般職の国家公務員のうち、本府省以外に勤務する係長級以下(行政職俸給表(一)4級相当以下)の職員から抽出した3,001人を対象に平成25年7月に実施(回答数2,687(回答率89.5%))
ア 国家公務員の倫理感についての印象(市民・有識者・職員アンケート結果)
「国家公務員の倫理感の印象」について質問したところ、市民アンケートでは、好意的な見方をしている者(「倫理感が高い」又は「全体として倫理感が高いが、一部に低い者もいる」と回答した者)が45.8%で、厳しい見方をしている者(「全体として倫理感が低いが、一部に高い者もいる」又は「倫理感が低い」と回答した者)が23.6%であった。また、有識者アンケートでは、好意的な見方をしている者が78.3%で、厳しい見方をしている者が7.1%であった。
有識者アンケートの方が市民アンケートに比べて好意的な見方をしている者の割合が高いのは例年の傾向である。このことは、有識者アンケートでは、好意的な見方をしている理由として「日頃接している一般職の国家公務員の倫理感が高いと感じるから」と回答している者の割合が58.1%と高いことにも現れていると考えられる。
なお、職員アンケートにおいては、好意的な見方をしている者は77.6%で、厳しい見方をしている者の合計は4.3%であった(図1、図2)。
イ 倫理規程で定められている行為規制に対する印象(市民・有識者・職員アンケート結果)
「倫理規程で定められている行為規制の印象」を質問したところ、「妥当である」と回答した者の割合は、市民アンケートでは63.7%、有識者アンケートでは69.2%、職員アンケートでは64.9%と、いずれのアンケート結果においても全体の6割を超えた。
また、「厳しい」又は「どちらかと言えば厳しい」と回答した者の割合は、職員アンケートが32.0%と最も高く、次いで有識者アンケート(25.2%)、市民アンケート(11.5%)の順となった。さらに、「どちらかと言えば緩やかである」又は「緩やかである」と回答した者の割合は、市民アンケートが19.0%と最も高く、次いで、有識者アンケート(4.5%)、職員アンケート(3.1%)という結果となった。これらの結果は、概ね例年と同様であり、行為規制の内容が幅広く受け入れられているのではないかと考えられる(図3)。
ウ 職務に必要な行政と民間企業等との間の情報収集等への支障(有識者・職員アンケート結果)
「倫理法・倫理規程により、職務に必要な行政と民間企業等との間の情報収集、意見交換等に支障が生じていると思うか」について質問したところ、有識者アンケート及び職員アンケートのいずれにおいても、「あまりそう思わない」又は「そう思わない」と回答した者の割合(有識者アンケート57.6%、職員アンケート56.8%)が、「そう思う」又は「ある程度そう思う」と回答した者の割合(有識者アンケート38.2%、職員アンケート27.5%)を大きく上回る結果となった(図4)。
エ 国家公務員への期待(市民アンケート及び有識者アンケート結果)
「国家公務員に対する期待」について質問したところ、市民アンケートでは、国家公務員の仕事への取組について期待する見方をしている者(「大いに期待している」又は「ある程度期待している」と回答した者)が52.1%と半数を超えたのに対し、期待できないとする見方をしている者(「あまり期待していない」又は「全く期待していない」と回答した者)は26.9%、どちらとも言えないと回答した者は21.0%であった。
また、有識者アンケートでは、期待する見方をしている者は95.0%に上り、期待できないとする見方をしている者は1.5%(「全く期待していない」とする回答は0%)であった。有識者アンケートの方が市民アンケートに比べて期待する見方をしている者の割合が高いのは、アと同様に例年の傾向である(図5)。
オ 倫理に関する研修の受講状況(職員アンケート)
公務員倫理に関する内容がカリキュラムに組み込まれている研修等に最後に参加してからどのくらいの期間が経過しているか質問したところ、1年未満とする回答が56.5%であり、1年以上3年未満と回答した者を加えると、79.5%に達しており(前年度の同種アンケート結果70.1%)、より多くの職員が比較的高い頻度で研修を受講していることがうかがえる。なお、5年以上及び一度も受講したことがないと回答した者は、13.3%(同20.4%)と依然一定割合いる(図6)。
カ 通報窓口の認知度(職員アンケート)
通報窓口の認知度について質問したところ、所属府省の通報窓口及び倫理審査会の通報窓口(公務員倫理ホットライン)について、両方又はいずれかのみ知っていた者の割合は70.0%、倫理審査会の通報窓口を知っていた者の割合は42.7%であった。通報窓口については、倫理審査会としても周知を図ってきており、職員にもある程度認知されるようになっていると考えられるが、依然として過半の者が倫理審査会の通報窓口を認知しておらず、また、約3割の者がどちらも認知していない(図7)。
このような各種アンケート調査は、国家公務員の倫理感や倫理規程に定められた行為規制などに対する各方面の印象や見方など、公務員倫理をめぐる状況の的確な把握に資するものであり、倫理審査会としては、今後とも継続的にアンケート調査を実施し、今後の倫理保持のための施策の企画等に活用していくこととする。