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第1編 《人事行政》

【第1部】 人事行政この1年の主な動き

第2章 人事行政の公正の確保

3 改正国公法等の下での任用、採用試験及び研修等


(1)任用及び採用試験

改正国公法において、人事院は、職員の公正な任用の確保に関する事務を引き続き所掌することとされた。また、採用試験については、現行の採用試験体系を前提として、総合職試験及び一般職試験に係る対象官職及び種類を法定した上で、採用試験の方法、試験科目、合格者の決定の方法等に関する事務を引き続き人事院が所掌することとされた。

一方、各府省の特別なニーズにより行われる専門職試験等の対象官職及び種類の詳細並びに採用試験の種類ごとに確保すべき人材に関する事項等については、公正確保の観点から人事院の意見を聴いて政令により定めることとされた。このため、「採用試験の対象官職及び種類並びに採用試験により確保すべき人材に関する政令」の制定に際して、人事院は内閣総理大臣に対し、平成26年4月18日、採用試験における対象官職及び種類について、現行の規則等で規定している内容を示した上で、その内容を適切に政令で規定するよう意見を申し述べた。

5月20日、内閣総理大臣から政令案が提示され、これに対し、人事院は、5月22日、採用試験の対象官職及び種類に関する事項は人事院が事前に申し述べた意見を踏まえた内容となっていること、また、採用試験により確保すべき人材に関する事項は、公正な採用試験の設計の観点から特に問題ないものと認められることから、案のとおり制定されることに異議はない旨の意見を提出した。その結果、5月29日に「採用試験の対象官職及び種類並びに採用試験により確保すべき人材に関する政令」(平成26年政令第192号)が制定された。

また、改正国公法において、採用試験の対象官職及び種類に関する基本的事項が法定されたこと等に伴い、規則において定められていたこれらの事項に係る規定を削除するなどの任免及び採用試験に係る規則及び公示の改正等をパブリックコメント(意見公募手続)を経て行った。

(2)幹部職員人事の一元管理

  • ア 改正国公法において、幹部職員人事の一元管理等に関する事務は内閣総理大臣が担うこととされたが、適格性審査及び幹部候補者名簿に関する政令を定めるに当たっては、公正確保の観点から、人事院の意見を聴くこととされた。

    これに伴い、新たな幹部職員の任用制度の施行に向けた政令の制定に際して、平成26年5月20日、内閣総理大臣から人事院に対して政令案が提示され、これに対し、人事院は、5月22日、政令の制定についての意見を提出し、5月29日に「幹部職員の任用等に関する政令」(平成26年政令第191号)が制定された。

    この意見においては、現に国家公務員である者を対象とする適格性審査については、人事評価の結果を活用するなど具体的に基準を規定する必要があること、国家公務員でない者を対象とする適格性審査については、人事評価の結果を活用することができないことから、手続の公正性を確保するために、公務員人事に関する高い識見を有する第三者を含む有識者の意見を聴く仕組みとする必要があるとの考え方を示した上で、提示された政令案は、全体として人事院の考え方と相違がないと認められることから、案のとおり制定することに異議はない旨の意見を述べた。また、幹部職員人事の一元管理に関する制度について適切な運用を行っていく上での留意点等や今後、同政令の委任を受けて内閣官房令その他の定めを行う場合に、必要と認めるときは、人事行政の公正確保の観点から意見を申し述べる旨を併せて述べた。

  • イ 上記の政令第191号において、国家公務員でない者を採用する際の適格性審査に際し、「人事行政に関し高度の知見又は豊富な経験を有し、客観的かつ中立公正な判断をすることができる者の意見を聴くものとする」と規定されており、このような枠組みの下、内閣官房長官より、公務外からの採用者に関して、上記に該当する者として人事院人事官に見解を求められ、平成26年度においては3件について人事官が意見を申し述べた。
  • ウ 改正国公法において幹部職員の任用に関する新たな制度が設けられたことに伴い、一元管理の対象となる幹部職員については、従前規則で規定されていた直近3年間の人事評価が一定基準以上であること等の昇任の要件や、他府省での勤務経験を有すること等の要件は、政令に基づく内閣官房長官決定等で定められ、これらに相当する要件が適格性審査において確認されていることから適用除外とする等の規則の改正を行った。

(3)特例降任

改正国公法において、任命権者が事務次官や局長等の幹部職に他の適任者を就けたい場合に、幹部職員が①人事評価等に照らし、同一の任命権者の下で同じ職制上の段階に属する他の幹部職員と比べて勤務実績が劣っていること、②人事評価等や適性に照らし、幹部職員となり得る他の特定の者が、当該幹部職員より優れた業績を挙げることが十分見込まれること、③転任させるべき適当な官職がないこと等の要件のいずれにも該当する場合には、国公法第78条各号に掲げる「勤務実績がよくない場合」等の事由に該当しない場合であっても、その意に反して幹部職の範囲内において直近下位の段階の官職に降任を行うことを可能とする特例降任の制度が導入された。

人事院は、幹部職員人事における公正の確保に留意し、恣意的な運用がなされることがないよう、改正国公法において規則に委任されたそれぞれの要件の詳細を定める規則の改正を行った。

(4)官民人事交流

改正法においては、国公法の改正と併せて、官民人事交流法が改正され、人事交流の対象となる法人(以下「対象法人」という。)が拡大された。これを受けて、パブリックコメントを経た上で、一般社団法人、一般財団法人等を新たな対象法人として規則で規定した。また、公務の公正性を確保しつつ、官民人事交流制度の趣旨に沿った交流が行われるよう、新たな対象法人のうち、その事業による収益の主たる部分が、国等の事務又は事業の実施等によるものであると認められる部門との交流について制限するなどの交流基準(規則)の改正を、パブリックコメント及び人事院に置かれる交流審査会(会長:宇賀克也東京大学大学院教授)への諮問を経て行った。

さらに、今般の改正により、毎年、国会及び内閣に対して行うこととされている官民人事交流の状況に関する報告事項が拡大され、平成27年3月27日、平成26年における官民人事交流の状況に関する報告事項を取りまとめ、国会及び内閣に報告した。

新たな対象法人として規定された法人

監査法人、弁護士法人、医療法人、学校法人、社会福祉法人、日本赤十字社、消費生活協同組合、特定非営利活動法人(NPO法人)、一般社団法人(公益社団法人を含む)、一般財団法人(公益財団法人を含む)

(5)研修

改正国公法において、人事院は、国民全体の奉仕者としての使命の自覚及び多角的な視点等を有する職員の育成並びに研修の方法に関する専門的知見を活用して行う職員の効果的な育成の観点から行う研修の計画の樹立及び実施を引き続き行うとともに、公正確保の観点から内閣総理大臣及び関係庁の長が行う研修の計画の樹立及び実施に関しての監視、内閣総理大臣又は関係庁の長に対する研修の実施状況についての報告要求、法令に違反して研修を行った場合の是正指示等をつかさどることとされたことに伴い、人事院が行う研修に関する事務の具体的な内容等を規定する内容の規則を制定した。


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