前(節)へ 次(節)へ

第1編 《人事行政》

【第2部】 東アジア諸国と我が国の公務員制度

第1章 東アジア諸国等における公務員制度改革の取組と人事院の支援

第2節 中国及び韓国との協力・交流(日中韓人事行政ネットワーク)

2 日中韓人事行政ネットワークによる協力関係(平成17年度~)

平成17年に日中韓三国の人事行政ネットワークが発足し、従前の日中・日韓の二国間での協力関係は、三国の合同研修やシンポジウム、共同研究、情報交換等に変化し、人事行政分野における三国間の緊密な連携や交流が進められている。この背景には、この間、中韓両国とも公務員法制の整備が進み、現在では、日中韓の相互交流を通じた知見の共有により各国の公務員制度の運用改善を図ることに重点が置かれるようになってきている事情もある。

(1)三国間プログラム

平成17年に日中韓人事行政ネットワークが発足後、本ネットワークの協力計画に基づき、若手・中堅職員合同研修や共催シンポジウム、共同研究、情報交換等を実施してきている。

ア 若手・中堅職員合同研修

日中韓三国の中央人事行政機関の若手・中堅職員の相互理解を深めるため、若手・中堅職員の合同研修を行い、各々の機関の抱える課題等について情報交換及び意見交換を行っている。

この合同研修は、平成19年4月に日本で第1回を5日間の日程で実施して以降、三か国持ち回りで開催し、平成26年5月には日本において第7回目を実施し、これまでに日中韓三国から延べ61人が参加した。

イ 三国共催シンポジウム等

三国の人事行政における関心事、主要問題、改革推進事例等について、発表・評価する場として三国共催シンポジウムを持ち回りで開催しており、これまでに8回実施している。自国の人事行政の政策や運用にいかすため、開催国がその時々の課題に応じたテーマを設定しているが、人材確保や処遇への関心が高く、採用、育成、人事評価、給与の制度の運用等が取り上げられている(表3)。

表3 三国共催シンポジウム

ウ 共同研究

これまでに3回にわたって三国で共同研究を行ってきた。第1回は、制度の基本を相互に理解できるよう「日中韓三国の公務員人事基本法比較」(韓国が取りまとめ)を、第2回は、各国が共通して関心を持った「日中韓三国の公務員の成果管理」(中国が取りまとめ)を、第3回は、「日中韓三国の公務員の採用システム」(日本が取りまとめ)をそれぞれテーマとして行われ、三国の人事行政機関が抱える問題等を整理した。

(2)二国間プログラム等

ネットワーク発足に伴う新たな三国間の協力プログラムに加え、従来からの協力プログラムを含めた二国間での相互交流・協力プログラムを引き続き実施してきている。

ア 中国

人事院は平成18年度から平成24年度まで、公益財団法人日中友好会館が実施する中国国家行政学院からの研修員を対象とした、中国政府職員受入れ研修の実施を支援している。この研修は日中両国公務員の相互理解を目的とし、日本の行政制度、国家公務員制度に関する講義を行うとともに、中国側研修員と日本の課長補佐級公務員との意見交換を実施しており、これまで200人を超える中国側研修員が参加した。

また、平成17年度から平成22年度まで、人事院公務員研修所と中国国家行政学院との間で派遣研修を実施し、毎年20人前後の日本側の課長補佐級研修員を中国へ派遣した。

イ 韓国

人事院は従来からの協力プログラムである大韓民国政府職員研修による研修員の受入れを引き続き実施するとともに、新たに平成18年度より毎年、人事院公務員研修所が実施する研修の一環として、20人前後の日本側の課長補佐級研修員を韓国中央公務員教育院に派遣する研修を実施している。

また、平成16年度に人事院職員1人を研究員として韓国中央人事委員会に派遣し、約5か月間にわたって韓国の採用試験や研修制度等の公務員制度について研究を行った。一方、平成18年度には韓国中央人事委員会から研究員1人を人事院に受け入れ、約半年間、人事院の各課に順次席を置き、職員からの説明や意見交換を通じて我が国の人事行政の各分野について知見を深めた。

さらに、人事院は、幹部公務員制度の改革に取り組んでいる韓国の実情について計4回にわたって現地調査を行った。一方、韓国からもほぼ毎年我が国に調査団が派遣されてきており、最近では、平成26年(2014年)の韓国フェリー転覆事故に端を発して行われた韓国公務員制度の改革の実施に際し、日本の公務員制度についても調査することとされ、職級・職種別給与の実情、不利益処分に対する審査請求、定年延長・再任用制度等をテーマとした調査団が人事院を訪問している。


前(節)へ 次(節)へ
©National Personnel Authority
Back to top