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第1編 《人事行政》

【第2部】 東アジア諸国と我が国の公務員制度

第3章 我が国の公務員制度と今後の国際協力

第1節 我が国の公務員制度

1 成績主義の原則に基づく採用

前述のように、競争試験を導入して情実を排し成績に基づく採用を確保することは、近代公務員制度の基本である。

我が国においても、日本国憲法の下、公務員は「全体の奉仕者」とされ、これに基づき制定された国公法は、公正性の確保のために成績主義の原則を定めるとともに、内閣から独立して人事行政を担当する専門機関である人事院を設置している。職員の任命は各省大臣によるとされたが、国家公務員採用試験は人事院が責任を持って実施し、合格者を決定し、その合格者の中から任命権者が採用者を決定するという仕組みが採られている。このような仕組みにより、政治等からの職員採用圧力は遮断されることとなって、国家公務員採用試験は、公正に実施されるものとして国民の高い信頼の下、公務に必要とされる多様で有為な人材を確保する役割を果たしてきた。

人事院は、採用試験の体系について、時代の変化に応じて必要な人材を確保できるよう改革に取り組んできている。近年では、平成20年代に入り、採用試験体系を抜本的に見直すことにより能力・実績に基づく人事管理への転換の契機とすることや、専門職大学院等新たな人材供給源に対応し、多様な人材の確保に資する試験体系とすることを基本的な視点として見直しを行い、平成24年度から従来の採用試験体系を総合職試験、一般職試験等に再編した。平成26年度には、22種類25回の国家公務員採用試験(外務省専門職員採用試験を含む。)を実施している。

公務員採用試験については、受験者の能力を的確に判定することができるよう、多肢選択式・記述式の筆記試験、論文試験、面接試験、集団討論試験等の試験種目の中から適切に組み合わせて試験を構成する必要がある。また、各試験種目について、筆記試験等の問題や課題を作成するとともに、面接試験等の試験技法を研究開発し、改善していく必要がある。このような試験の企画設計や問題作成・試験技法の開発には、専門的な技術や知見の蓄積が必要であり、公務員採用試験を企画・実施する専門機関を設置して担当させることが各国において行われているところである。人事院は、人事行政の専門機関として、試験の体系、内容、技法等の整備・見直しを適時適切に行い、公務に必要な優秀な人材の確保に努めてきた。今後も、優秀な人材の確保のため、引き続き、試験の体系、内容、技法を見直していく所存である。

また、我が国においては、官民を通じて新規学卒者の一括採用が採用の中心となっていることから、公務員の採用も、高等学校、大学、大学院を卒業、修了する者を、毎年実施する各府省共通の採用試験によって採用する方式が採られている。平成26年度に実施した国家公務員採用試験では、合計で約14万人の申込みを受け付け、約1万9,000人の合格者を出した。このように数多くの採用試験を全国規模で一斉に実施するに当たり、不正や誤りのない適切な実施を確保するためには、専門機関がその経験と知見に基づき実施の任に当たることが必要である。


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