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第1編 《人事行政》

【第2部】 東アジア諸国と我が国の公務員制度

第3章 我が国の公務員制度と今後の国際協力

第1節 我が国の公務員制度

3 倫理の保持

我が国の国家公務員の倫理については、職員の高い遵法意識や倫理感を基礎としており、従前は国公法第99条の信用失墜行為の禁止の規定に基づく綱紀粛正通達等を基礎とした個人のモラルの維持によって対応してきた。しかしながら、平成バブルの崩壊後に深刻な公務員不祥事が発生したことから、平成11年に倫理法が制定され、同法に基づき、倫理行動規準に基づく行動のルールが国家公務員倫理規程として定められるとともに、贈与等の報告のルール、違反者に対する懲戒処分の基準が定められた。このように刑事罰はないものの(収賄罪を除く。)、法律で倫理違反を規定しているところに一つの特色がある。

平成12年4月に倫理法が施行されてから15年が経過した。この間、国家公務員倫理審査会では、倫理法及び国家公務員倫理規程等による国家公務員倫理の保持に係る施策を展開し、公務に対する国民からの信頼確保に努めてきた。

平成26年に国家公務員倫理審査会が実施した「公務員倫理に関する市民及び有識者モニターへのアンケート調査」によると、公務員の倫理感についての印象は、市民アンケートで過半数の回答が好意的であり、有識者モニターアンケートでは8割強の回答が好意的であった。

ASEAN諸国では、公務員の腐敗が深刻とされる中、規律を重視する法令遵守アプローチが中心となっているが、我が国では、法令遵守アプローチと清廉性アプローチを組み合わせることで、職員による倫理の保持を図っている。職員の倫理意識を重視する清廉性アプローチの視点からみると、規範意識の定着、保持等について、人事院による公務員意識を高めるための教材の開発や研修の実施等が有効な方策として挙げられよう。さらに、国家公務員倫理審査会では、予防措置を重視しており、不祥事が発生した府省に対しては、必ず再発防止策の策定とその報告を求めている。

また、給与等の適切な処遇や、業績等に応じた昇給、退職金制度等も、我が国において公務員の倫理規範の遵守を促しているものと考えられる。


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