第1編 人事行政

第2部 風通しのよい職場環境づくりに向けて〜職員の声から見える公務職場の実情を踏まえて〜

第2章 個別の苦情相談の内容

2 セクシュアル・ハラスメント、パワー・ハラスメント

【事例5】セクシュアル・ハラスメント

私の部署のトップから、呼び捨てにされることに疑問を感じている。20代、30代の女性職員に対しては、仕事中でも「○○ちゃん」などの愛称で呼び、40代の女性職員に対しては、「おばちゃん」と呼ぶこともある。

また、早期退職した女性職員について「ワガママなおばちゃん達」などと侮辱したりする。

これまで、呼び捨てにされたことはなく、女性職員のことをおばちゃんと言う上司もいなかった。管理職の意識がこのようなものでいいのか。

(関連制度)

セクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」という。)は、規則10−10(セクシュアル・ハラスメントの防止等)において「他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び職員が他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動」と定義されている。「性的な言動」は、性的な関心や欲求に基づく言動をいい、性別により役割を分担すべきとする意識に基づく言動や、性的指向又は性自認に関する偏見に基づく言動も含まれるとされている。また、各省各庁の長には、セクハラの防止及び排除に関し、必要な措置を講じること、苦情を申し出た職員の不利益を防止すること、職員に対して必要な研修を実施すること等が義務付けられているほか、セクハラに起因する問題が生じた場合は必要な措置を迅速かつ適切に講じなければならないとされている。

(本事例から見える課題)

本事例については、部署のトップが年齢により職員の呼称を変えるなど、侮辱的な発言をしたものであるが、このような発言は性別により差別しようとする意識等に基づく発言に該当し、発言を受けた職員等が不快に感じていることから、セクハラに該当するものとすることが相当である。

本来、管理職員は、部下職員が働きやすい職場環境を作る責務を有するが、本事例では、部署のトップがセクハラに該当する行為を行っている。管理職員にとっては、コミュニケーションの一端として、部下職員を愛称で呼んだりしたとしても、相手方や周囲の職員が不快に感じる可能性があることを認識すべきである。一方で、セクハラとなることを警戒し、コミュニケーションを取らないことは、業務運営や組織の活性化という面で問題である。そういった意味で、管理職員は、適切にコミュニケーションを取ることが求められる。また、組織としては、セクハラ相談員の活用や管理職員への研修等の取組を実施することが肝要である。

【事例6】パワー・ハラスメント

上司は、通常上司と部下の間で行われる情報共有等の業務管理をせず、仕事の案件を上げると、その都度何かしら指摘し、大声で「何でこんなことができないのか。」などと言い、長時間にわたり部下を立たせたまま叱責をする。また、事前に報告している案件について、スケジュールが差し迫ってから、「こう指示しているはずだ。」と怒鳴ったり、指示したりするため、対応が困難な状況となっている。

このような状況を課長も知っているが、上司は自分の考えが絶対で、課長の言うことも聞かない。

このような上司への対応で、体調が悪くなっており、他の職員も疲弊している。業務運営に支障が生じるばかりか、自分を含め、職員の健康にも悪影響が出ることとなるため、早急に何とかしてほしい。

(関連制度)

人事院が平成27年7月に作成した「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」においては、パワハラの概念として、「一般に「職務上の地位や権限又は職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、人格と尊厳を侵害する言動を行い、精神的・身体的苦痛を与え、あるいは職場環境を悪化させること」を指すといわれています。」と紹介している。特にパワハラと指導の境界が問題となるが、パワハラとならないためには、①人格を尊重し、常に「育てる」という意識を持って指導する、②業務の必要性を示した上で指導する、③業務の内容や量、指導のタイミングや場所、指導方法など状況に応じて適正に指導することが必要である。さらに、職場全体で、職員一人ひとりがパワハラになり得る言動を認識し、パワハラが生じないよう取り組むことが必要である。

(本事例から見える課題)

本事例については、業務管理をしない上司が、頻繁に部下を叱責しており、その態様はパワハラに該当し得るものと考えられる。また、その上司である課長もその状況の改善を試みないものであり、実際に体調が悪くなっている職員も出ている。

本来、上司となる職員は、部下職員が働きやすい職場環境を作る責務を有するが、本事例では、パワハラに該当し得る行為をすることで、他の職員を含め、組織全体の職場環境を悪化させており、加えて、職員の健康にも悪影響を及ぼす可能性も生じている。パワハラについては、その行為自体について、上司自身は職務上の必要性や部下職員への指導のためと認識して行っている場合が多いが、本事例では、その手法が適当ではなく、業務管理や的確な指示といった求められる能力が欠如している。さらに、本事例では、パワハラに該当し得る行為をしている職員の上司である課長も、当該職員の行為を改善するための効果的な指導等をしておらず、その責務を果たしていない。

また、パワハラの背景として、業務分担の不均衡により特定の職員のみに業務が集中し、当該職員やその周囲の職員が余裕を持って業務に当たることができず、組織内に不平・不満が溜まっていくこともその一因と考えられるため、必要に応じ業務そのものの在り方を組織全体で見直すことが求められる。