第1編 人事行政

第2部 風通しのよい職場環境づくりに向けて〜職員の声から見える公務職場の実情を踏まえて〜

第2章 個別の苦情相談の内容

3 人事評価

【事例7】人事評価の手続

勤勉手当が支給されたが、勤勉手当の成績区分を決定する根拠である業績評価の結果が開示されず、期末面談も実施されていない状況にあり、評価結果に関して苦情を申し出る機会を逸してしまった。

(関連制度)

人事評価は、能力評価及び業績評価により行われる。能力評価は、1年間の評価期間(10月1日〜翌年9月30日)において職務遂行に当たり発揮した能力を評価するものであり、職制上の段階及び職務の種類に応じて定められた「職務上発揮することが求められる能力(標準職務遂行能力)」に照らし、職員が実際に職務上取った行動がこれに該当するかどうかを評価する。業績評価は、半年間の評価期間(10月1日〜翌年3月31日、4月1日〜9月30日)において職務遂行に当たり挙げた業績を評価するものであり、職員が果たすべき役割を「目標」として期首に設定した上で、その果たした程度を評価する。人事評価の手続の流れは、次のとおりである[図2参照]。

① 業績評価の評価期間の開始に際し、評価者(被評価者の監督者)は被評価者と面談を行い、業務に関する目標の設定等により、被評価者が評価期間において果たすべき役割を確定する(期首面談)。

② 被評価者は、評価の参考とするため、評価期間において発揮した能力及び挙げた業績に関する自らの認識等について申告を行う(自己申告)。

③ 評価者は、能力評価・業績評価のいずれも、S(最上位)、A(上位)、B(通常)、C(下位)、D(最下位)の5段階の絶対評価により評価を行う(一般職員の場合)。この評価は、調整者(評価者の監督者)による調整と、実施権者(所轄庁の長等)による確認を経て、確定される。

④ 実施権者は、評価結果を被評価者に開示する。その後、評価者は被評価者と面談を行い、評価結果及びその根拠となる事実に基づき指導・助言を行う(期末面談)。

このほか、人事評価に関する職員の苦情に適切に対応するため、人事評価に関する苦情全般を対象とする「苦情相談」と、開示された評価結果に関する苦情及び苦情相談で解決されなかった苦情のみを対象として所定の手続にのっとり処理を行う「苦情処理」の仕組みが設けられている。

図2 人事評価の手続の流れ

(本事例から見える課題)

本事例は、期末面談の実施予定日に職員が不在であり、評価者の人事異動も重なったことから当該職員について期末面談が行われず、その後も業務多忙のため期末面談が行われないままとなっていたもので、不適切な対応である。

評価者にとって人事評価は、期首面談に始まり、期中での被評価者の職務遂行の把握や、評価、期末面談に至るまで、一定の手間と時間を要するものであり、負担に感じるとの声も聞かれる。しかしながら、人事評価は、その結果が職員の任用、給与等に活用されるとともに、評価を契機として職員が自らの強み・弱みを把握して自発的な能力開発に役立てることができるなど、人事管理面で重要な役割を担っている。また、人事評価の過程において、管理職員が、組織目標等を踏まえて部下職員の果たすべき役割について当該職員と認識を共有することや、部下職員の職務遂行の状況を把握すること、部下職員の職務遂行の結果を踏まえて今後に向けた指導・助言をすることは、組織・業務管理面でも重要な意義を有するものである。

管理職員は、人事評価を単なる作業としてとらえるのではなく、自らのマネジメントを支えるツールとして活用するとの意識を持つことが肝要である。

【事例8】人事評価を通じたコミュニケーション等

精神疾患のために3か月の病気休暇の取得と1か月半の休職をし、直後の能力評価と業績評価の結果は共にDであった。理由は「休んだから」とだけ言われ、「頑張ればいくらでも挽回できるから」と言うだけで詳しい説明がなかった。

(関連制度)

事例7参照。

(本事例から見える課題)

本事例では、職員が長期間休んだことをもって低い評価がなされたとされているが、長期間休んだことのみをもって低い評価をすることは適当ではなく、職員が評価期間において短期間であっても勤務している場合には、当該期間において職員が発揮した能力や挙げた業績を適切に把握し、これらについて的確に評価しなければならない。

また、本事例では、評価の根拠について十分な説明がなされなかったとされているが、人事評価は人材育成の意義も有するものであり、本来、評価者は、期末面談において、評価結果及びその根拠となる事実に基づき、個別の評価項目や目標ごとにコメントするなどし、今後の業務遂行に当たっての具体的な改善点や期待する行動等についてアドバイスすることが求められる。このようにきめ細かな指導・助言を行うことによって、被評価者の評価に対する満足度を高めることが期待できるとともに、被評価者が評価結果を今後の業務遂行に反映していくことにより、職員個々の、ひいては組織としてのパフォーマンスの向上につながることとなる。

さらに、本事例は、精神疾患を有する職員についてのものであるが、このほか職場には育児や介護など多様な事情を抱えて一定の制約の下に勤務する職員が存在する。これらの職員については、それぞれの事情を踏まえた上で、個々の職員が有する能力を発揮し、知識・経験を活用することができるよう、期首面談での目標設定や、期末面談での指導・助言などを行う必要がある。そのためには、評価者と被評価者とが、期首・期末の面談時に限らず、育児や介護などの事情の変化を含めて十分なコミュニケーションを取る必要があることは言うまでもない。

【事例9】人事評価結果の勤勉手当(給与)への活用

業績評価の結果がAと開示された後、異なる府省間の異動となったが、直後の勤勉手当の成績区分は「良好(標準)」とされ、評価結果が全く反映されていなかった。府省を超えて異動した場合でも、評価結果の引継ぎを行い、勤勉手当に反映させるべきである。

(関連制度)

職員が異なる府省間の異動をした場合、異動元府省から異動先府省へ人事評価記録書の写しを送付するなど、任用、給与等への活用のための対応を行うこととなっている。

また、職員の採用年次や合格した採用試験の種類等にとらわれず、能力・実績に基づく人事管理が行われるよう、人事評価の結果を任用(昇任、転任等)、給与(昇格、昇給、勤勉手当等)、分限(降任、免職、降給)等へ活用するための仕組みが設けられている。

業績評価の結果の勤勉手当への活用については、直近の業績評価の結果がS又はAである職員の成績区分は、全体評語が上位の者から順に「特に優秀」、「優秀」、「良好(標準)」と決定され、また、Bである職員は「良好(標準)」、C又はDである職員は「良好でない」と決定される。その際、法定された勤勉手当の支給総額の枠内で決定する必要があることから、業績評価がS又はAである職員の数によっては、本事例のように業績評価の結果がAであっても勤勉手当の成績区分が「良好(標準)」となる場合がある。

(本事例から見える課題)

人事評価は、その結果が任用、給与等へ活用され、人事管理の基礎となるものであることから、各府省においては、職員が異なる府省間の異動をした場合、人事評価記録書の送付等の適切な対応を行うことが求められる。

また、本事例は、職員が勤勉手当の成績区分の決定方法を十分に理解していなかったとも考えられるが、このような場合、職員は自らの働きぶりがきちんと給与に反映されなかったと感じ、そのことで今後の業務遂行に対するモチベーションを低下させてしまうことにつながるおそれがある。このため、各府省人事当局は、人事評価に関する研修を実施する際や人事評価の実施について職員に連絡する際などに、人事評価結果を任用、給与等へ活用する仕組みについても周知等することが望ましい。