第1編 人事行政

第2部 風通しのよい職場環境づくりに向けて〜職員の声から見える公務職場の実情を踏まえて〜

第3章 課題と対応

第1節 苦情相談等から見える課題

1 公務をめぐる状況の変化

(1)人員構成の変化

一般職国家公務員のうち、一般行政事務を行っている行政職俸給表(一)適用職員の年齢階層別人員構成比について、平成20年と平成30年の全組織及び地方機関で比較してみると、20代前半で多少増加しているものの、20代後半から30代にかけて大きく割合が減少しており、特に地方機関において顕著な傾向が見られる[人事院「国家公務員給与等実態調査」(図3−1参照)]。

公務の各職場においては、限られた人員で、組織を運営し、業務を処理していかなければならない厳しい状況にある。そのため、長時間労働となってしまったり、年次休暇を取得することも十分にできなかったりすることによって、肉体的・精神的に負担を強いられるようなことにもなりかねない。

そうなると、各人の負担が過大となることによって、かえって十分な能力の発揮が妨げられ、業績を挙げることができなくなることから、結果として組織運営や業務処理に支障を来す事態を招いてしまう。

加えて、そうした余裕のない職場環境からは、無理に成果を出そうと焦りやいら立ちが生じがちであり、精神的に追い詰められることで、業務面で互いにフォローし合うような好循環が生まれにくく、むしろ管理職員によるパワハラなどの深刻な被害を生み出すおそれもある。

管理職員アンケートにおいても、管理職員が負担増加を感じていることがうかがえる。また、若手・中堅職員アンケートにおいても、若手・中堅職員に、部下・後輩職員がいない(少ない)ことで、自分で何でもしなければならないことによる不安や不満が多くなっていることがうかがえる。

行政事務の遂行に当たっては、業務量に見合った適正な人員が確保されることが基本となるが、厳しい職場環境に置かれている実際の職場において、各職員ができる限り健康で能力を最大限発揮できるようにするための方策を講じていく必要がある。

(2)多様な事情を抱える職員の顕在化

近年、公務・民間を問わず、育児や介護など、多様な事情を抱える職員の存在が顕在化してきており、これからもその傾向はますます強まっていくものと思われる。

ア 育児

公務・民間を問わず、育児をしながら働く者が相当程度見られるようになってきており、例えば、育児休業の取得率を見ると、民間においては、平成8年度に男性0.1%、女性49.1%であったものが、平成29年度には男性5.1%、女性83.2%となっている[厚生労働省「雇用均等基本調査」(図3−2参照)]。公務においても、平成8年度に男性0.1%、女性79.6%であったものが、平成29年度には男性18.1%、女性99.7%となっている[人事院「育児休業等実態調査」(図3−3参照)]。

第2章の事例1及び事例4において、「出産、育児を控えた職員を取り巻く職場環境」、「妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメント」の事例を取り上げたが、これらの事例においては、仕事と育児との両立を図ろうとする職員に対し、当該職員の抱える事情を踏まえた対応がなされていないなどの課題が見られた。

平成29年度意識調査においても、30代職員の「仕事に対するモチベーションを特に低下させたことがあるもの」として、「業務多忙や長時間勤務等によりワーク・ライフ・バランスが保てないこと」が最も多い回答となっていた。

今後は、男性職員も含め、子どもが病気になった場合などの一時的な対応のみならず、恒常的な養育とキャリア形成をどう両立させていくかを考えていくことが求められる。

イ 介護

65歳以上人口の割合が、平成7年に14.6%であったものが、平成27年には26.6%となっている[総務省「国勢調査」]など、高齢化が急速に進行している。こうした中で、介護の必要のある家族を持つ職員も、より一層増加していくものと思われる。例えば、平成22年6月に設けられた短期介護休暇を取得した職員について、平成23年は1,234人であったものが、平成29年には2,832人となっている[人事院「介護休暇等使用実態調査」(表3参照)]。

第2章の事例2において、「介護と業務の両立」の事例を取り上げたが、当該事例においては、仕事と介護との両立を図ろうとする職員に対し、当該職員と管理職員との間でコミュニケーションが十分に図られていないなどの課題が見られた。要介護者の介護を必要とする状態によって、介護する職員の勤務時間の割振りや介護に係る両立支援のための諸制度の利用は様々なものとなると思われることから、これらに臨機応変に対処していくことが求められる。

ウ 職員の健康等

第2章の事例3において、「健康に関する問題(メンタルヘルス)」の事例を取り上げたが、当該事例においては、療養している職員に対し、当該職員の抱える事情の把握の在り方などの課題が見られた。職員の健康に関し、例えば、長期病休者(引き続いて1月以上の期間、疾病のため勤務していない者)の職員の割合は、平成10年代において増加した後、近年は2%前後で推移しており[人事院「国家公務員長期病休者実態調査」]、今後、職員自らが疾病を抱えることにより、一定の制約の中で勤務することを余儀なくされるといったことも少なからず生じ得るものと思われる。

また、現在、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、障害者雇用に関し、国の機関における法定雇用率の達成に向けた様々な取組が進められているところであるが、苦情相談において、障害を抱える職員から、仕事を進める上で障害の特性に応じた配慮をしてほしいといった相談が寄せられている。今後、障害者雇用の促進が図られることに伴い、様々な障害を抱えた人々が、それぞれの希望や障害の特性等に応じて、公務において活躍できる場を拡大していくことが求められる。

このほか、非常勤職員について、任期が定められていることや職場における立場などから、任用関係やハラスメント関係を中心として、苦情相談が寄せられており、これらの職員の職場環境にも留意する必要がある。

今後は、意欲と能力がありながらも、勤務を継続することが困難な人や、公務で仕事を続けていくことに不安を感じてしまうような人を、多数生じさせてしまうことのないよう、個々の職員が抱える事情に応じた働き方が可能となるような組織運営や人事管理を行っていくことが求められる。

図3−1 行政職俸給表(一)適用職員の年齢階層別人員構成比
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図3−2 民間における育児休業取得率の推移
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図3−3 一般職国家公務員の育児休業取得率の推移
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表3 一般職国家公務員の短期介護休暇使用者数の推移
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