第1編 人事行政

第2部 風通しのよい職場環境づくりに向けて〜職員の声から見える公務職場の実情を踏まえて〜

第3章 課題と対応

第2節 対応策

1 働きやすい職場環境の整備

(1)両立支援のための各種制度等の周知の徹底

多様な事情を抱える職員が、仕事との両立を円滑に図ることができるよう、これまでに様々な制度や体制が整備されている。例えば、育児や介護に関してであれば、フレックスタイム制や育児短時間勤務、子の看護休暇や短期介護休暇などが措置されており、メンタルヘルスに関してであれば、健康管理者や健康管理医などの保健スタッフに相談できる体制が設けられている。

しかしながら、実際にこうした事情を抱えている職員自身が、これらの各種制度等を知らない、あるいはどのように利用すればよいか分からないということであれば、そもそも活用することができない。

また、職員が各種制度等を活用して、仕事との両立を図りたいと考えたとしても、上司や周囲の職員が各種制度等を知らない、あるいは活用に関して理解を示さないということであれば、制度等が設けられていたとしても、希望する職員が活用することが難しくなる。

そのため、各種制度等の周知の徹底を図ることが肝要であり、まずは人事当局が、様々な媒体や機会を通じた取組を行うことにより、管理職員を始め、全ての職員が各種制度等の具体的な内容を正確に認識することが必要である。

あわせて、組織のトップから、多様な事情を抱える職員が、各種制度等を活用して仕事との両立を図ることで、職員が生き生きと働くことのできる職場環境が構築されることの意義をメッセージとして伝えることにより、管理職員や各種制度等を活用しない職員も含め、個々の職場に属する職員一人ひとりが各種制度等に対する理解を深めていくことも必要である。

人事院としても、引き続き、両立支援のための各種制度等の周知の徹底、心の健康づくりの推進などを図っていくことにより、働きやすい職場環境の整備に向けた取組を支援してまいりたい。

(2)各職場における取組

これからの公務職場においては、何かしらの事情を抱えた職員が、それと調和させながら働いていくことができるような職場環境を構築するための方策をとっていく必要がある。

その際、個々の職員が抱える事情は、育児、介護、自らの疾病・障害など、多様なものであることが想定される。さらには、例えば育児や介護といっても、子供の成長の度合いや、被介護者の要介護の程度、職員以外の周囲のサポート環境といったことによって、職員の関わり方も大きく異なるものである。

これに対処していくために、そうした事情を抱える職員に対して、一律的、画一的に、定型的な職務を割り当てるとか、短時間勤務などにより軽減を図るといった方法では、これらの職員の能力を引き出すことは難しい。

各職場において、個々の職員が、多様な事情を抱える中でも、最大限の能力を発揮し、それらの力を合わせることにより、組織パフォーマンスの最大化を図るためには、個々の職員の抱える事情に可能な限り対処できるようにしていく必要がある。その前提として、プライバシーに留意しつつ、職員それぞれが自らの抱える事情を明らかにして、それを職場全体で共有した上で、各職員それぞれの職務内容や勤務形態をどうしていくべきかを、職場全体の問題として考えていけるような勤務環境を作っていかなければならない。

例えば、職場内でミーティングを定期的に開催する取組は、様々な職場において行われているが、各職員の業務の進捗状況や、各部門ごとの現在の課題や目標などを共有するだけでなく、各職員の抱えている事情に関して、悩みやサポートしてもらいたいこと、あるいはそうした事情の下でも可能なことなどについて話し合う場としても、活用していくことが可能である。

そうした取組において肝要なことは、多くの職員が何かしらの事情を抱える中でも、それと調和しながら働いていくことが求められることを念頭に、仮に今自分自身がそういう事情を特段抱えていないにしても、いついかなるときにそういう状況に置かれるかもしれないという意識を、全ての職員が持った上で、自らの職場の運営をどうすべきかを考えていくことである。

従前は、そうした事情を抱えている職員が職場内にいることをネガティブなものとして捉えがちであったかもしれないが、上司や周囲の職員が積極的に受け止め、どのように対処していけばよいかを一緒になって考えることが何よりも重要である。

それによって、各職場において、多様な事情を抱えている職員が、両立支援に係る各種の制度を活用するなどして、個別の事情に対処しながらも、その中で能力を十分に発揮し、お互いに補完的な役割を果たすことが可能となれば、組織としてのパフォーマンスを確保しつつ、個々の職員が継続して職務に従事することができるものと考える。

さらには、既に多様な事情を抱えていること自体で不安やストレスを感じている職員に安心感を与えることで、職場や組織は自身の置かれた状況についての良き理解者であると好意的に受け止めるようになることにより、職員が仕事に対して前向きに取り組む姿勢を引き出すことにつながる。

将来的に、こうした取組を実践することで、地域活動や自己啓発なども含め、全ての職員の事情を踏まえた上で、各職員の働き方を考えた職場環境づくりがなされることが理想である。これにより、特定の職員に負担が集中することによる不満の解消になる面もあると考える。

○ 民間企業等における取組例

社員間のコミュニケーションの活発化を図る観点から、社員が参加する懇親会・会合等に会社が支援・補助する取組を行っている企業がある。例えば、社内食堂等で部門を超えた懇親会を開催する場合にその費用の一部を補助したり、社員が有する知識・経験等を発表し合うカンファレンスを社員が企画した場合に企業がその場所や飲食物の提供を行ったりするものがある。

また、CSR(企業の社会的責任)の観点から会社として行っている会社周辺の清掃活動が、結果的に社員同士のコミュニケーションの場にもなっているというものもある。

このほか、経営層と社員が1回10人程度で2時間ほどの対話を行い、その後、活発なコミュニケーションを促す観点から懇親会を開催するという取組もある。

(3)各府省における苦情相談体制の活用

各府省において、個々の職員から、自らが抱える人事管理に関する問題などについて、人事担当部局などが窓口となって、相談を受け付けるような取組が行われている。

こうした取組については、相談がなされた職員の悩みや不満等が前提であるために、人事担当部局等が職員への取組の紹介等に消極的になってしまうところがある。しかしながら、自らの職場に対して直接言いづらいような声を取り上げる方法としては、今後とも有効に活用すべきものであり、積極的に周知するなどしていく必要がある。

また、これらの相談については、個々の職員の悩みや不満等を解消させるということが先に立つために、その事案をいかに円滑に処理するかということにとらわれがちである。

相談した職員にとって最善の方策を検討するとともに、よりよい職場環境を整備するためにいかにすべきかという観点から、組織全体の問題として考えていく姿勢が肝要である。

その上で、相談した職員の抱える事情や、その職員が勤務している職場の業務の実態、他の職員の勤務形態などを十分に把握し、組織パフォーマンスを確保しつつ、相談した職員や他の職員が、それぞれの抱える事情に対処しながら、能力を十分に発揮できるような職場環境を構築していくことが求められる。

これにより、個別の案件として、相談した職員からの納得が得られることにとどまらず、こうした事例の蓄積を重ねていくことで、各府省として、多様な事情を抱える職員が、それと調和させながら働けるような職場環境を構築していくことにもつながるものである。

人事院としても、第1章第1節で述べた苦情相談制度において、引き続ききめ細かい対応を行っていくとともに、各府省における苦情相談体制を適切に支援してまいりたい。

○ 民間企業等における取組例

社員等からの相談に関する取組として、優れた人格であるシニアな社員を専任の相談員として対応させるものや、社員のみならずその家族も相談できる窓口を設けたり、弁護士などの社外専門家に相談できる窓口を設けたりするというものがある。

また、育児休業中の職員や取得予定の職員が、子育て経験のある先輩職員に対して相談や情報交換をできる場として座談会を設けるというものがある。