第1編 人事行政

第2部 風通しのよい職場環境づくりに向けて〜職員の声から見える公務職場の実情を踏まえて〜

第3章 課題と対応

第2節 対応策

2 若手職員等のモチベーションの向上

(1)業務効率化を図るための取組

各府省において、個々の職員からの業務効率化や職場環境改善の方策などについての提案を、総務担当部局などにおいて受け付けるような取組が行われている。

こうした取組については、これまでも、組織パフォーマンスを向上させるものとして、積極的に提案を取り上げ、広く周知するケースも見られるところであり、各職場以外でも貴重な職員の声を取り上げるツールとして、今後とも有効に機能させていくことが求められる。

あわせて、組織のトップが、こうした提案を評価し、より一層の業務効率化を促すメッセージを発することにより、職員の業務改善に関する意識の更なる向上につなげることも肝要である。

業務効率化を図るための取組により、無駄な業務の削減や、業務処理の円滑化が図られることで、超過勤務時間の縮減等が実現することとなれば、若手職員等の不満の解消や勤務意欲の向上につながるものと考える。

○ 民間企業等における取組例

職員からの提案を実現させ、モチベーションを高めていく取組として、職場の雰囲気の改善のための運動と研修を連携させて、若手職員がこの運動に関係するプロジェクトを企画し、組織トップにプレゼンテーションして、採用されたものについて事業化するというものがある。

また、社員全員がアクセスできる社内SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の中に、業務遂行の際に自分が工夫したことなどを写真付きで投稿することができるツールがあり、投稿内容について閲覧者が評価することもできるため、そうした目に見える評価が社員のモチベーション向上につながっているという取組もある。

さらに、会社が社員に求める理念に則した、社員による自主的な活動について、社員からの求めがあれば、その活動の業務関連性にかかわらず、企業活動としてお墨付きを与えるという形で支援する取組があり、これを通じて会社・同僚・自社製品を好きになってもらうとともに、イノベーションにつながっていくことを期待するというものがある。

このほか、意識啓発や仕事に対するやりがいの再認識、幹部との距離感を縮めることなどを目的として、幹部職員の動画メッセージの配信を行うという取組もある。

(2)人事評価の面談等を契機とした取組

公務職場において、育児や介護に携わっていることなどにより働き方に制約がある職員であっても、十分な能力を発揮した職員に対しては、適切な評価を与えるべきである。また、まだ経験の浅い若手職員であったとしても、経験が浅いことのみをもって評価をすることなく、実際に発揮された能力や勤務において達成した実績に基づいて評価することが求められる。

さらに、若手職員には、勤務経験は少ないとしても、柔軟な発想や斬新な考え方で、新しい方策や手法を考え出すことなどが期待されるところである。こうしたアイデアや提案を促す意味でも、これらを積極的に評価し、更なる活躍を奨励するような働きかけをしていくことで、若手職員のモチベーションを高めていくことが求められる。

このような枠組みを構築していくための方策として、例えば、人事評価のうち業績評価について、職員本人と管理職員が期首において面談を行うこととされているが、その中において、各部局の課題や各職員の適性を踏まえることはもとより、各職員が抱える事情なども考慮しつつ、職員の意向も聴取しながら、十分な意思疎通を行い、認識を共有した上で、目標設定を行うべきである。

何らかの事情を抱えている職員に対して、定型的で容易に達成可能な業務目標を設定することは、これらの職員への配慮と捉えがちであるが、職員本人にとっては、場合によっては、自らの業務貢献への期待が大きくないものと理解し、意欲を低下させてしまうおそれがある。

若手職員に対しても、過度にプレッシャーをかけないよう、手の届く範囲で業務目標を設定すれば、達成感が得られ、意欲向上につながるものとも考えがちであるが、当該職員が低いと感じるようなレベルであれば、自身の能力に対してその程度の評価しかなされていないと受け止め、かえってやる気を失わせてしまうおそれもある。

目標設定に当たっては、一律的な物差しで行うのではなく、職員一人ひとりの能力や状況を見極め、過度な負担にならないよう留意しつつ、これまでに職員本人が有していた知識や経験を超える、意欲的な業務目標を立てることも考えていく必要がある。

これにより、各職員が自らの業務目標に納得して日々の業務に臨むことになることから、意欲を持って業務に従事することが期待されるとともに、働き方に制約があるような場合でも、そうした環境下で最大限の能力を発揮することにつながるものと考える。

また、職員が発揮した能力や挙げた業績については、人事評価(能力評価、業績評価)において、的確に評価することが肝要であり、その結果を任用、給与等に適切に反映させることが求められる。

人事評価の結果については、人材育成や配置の観点において有効に活用するとともに、処遇面のインセンティブともすることで、各職員のモチベーションを高め、ひいては組織全体のパフォーマンスを高めることにもなるものと考える。

そのため、職員が業務効率化や職場環境の改善に資するアイデア等について提案を行い、それが一定の効果を挙げたような場合にあっては、人事評価の結果に関し、職員本人と管理職員が期末において面談を行う際に、そのことを積極的に評価する旨を伝えるとともに、更なる貢献を期待することを付言するなどして、職員本人の意欲を引き出すことが求められる。

加えて、職員の潜在能力からすれば、より一層の能力発揮を求めたい場合や、働き方に制約があることなどにより、萎縮しているように見られる場合などにおいては、職員本人が自らの可能性に気付くように、丁寧なフィードバックを行うことで、職員自らが積極的かつ能動的に業務に取り組んでいく姿勢を導き出すことが求められる。

さらに、人事評価の面談等の機会を捉えて、管理職員としてそれぞれの職員の能力・スキル向上についてどのように考えているかという、育成に関する自らの方針を丁寧に説明することも効果的であると考える。

これにより、職員が自らの育成に対する管理職員の考えを知ることで、安心感の醸成が図られるとともに、自らが担当する業務に従事することの意義を理解することにもつながる。

あわせて、今後のキャリアを考える機会にもなることから、こうした機会に、職員自身のキャリア形成に対する考えを聴取することも有効な取組である。

特に、自らの専門性や強みを高めていきたいという若手・中堅職員の意識も高い中で、行政官として専門性を向上させていくことは、公務において組織パフォーマンスをより発揮させる上でも、重要となってくるものと思われる。

職員の意向を把握した上で、専門性の向上を意識した業務内容の見直し等を図ることにより、中長期的な能力向上やキャリア形成への更なる意識付けにもつながるものと考える。

○ 民間企業等における取組例

キャリアについて、これまで意識しておらず、部下に話をした経験がない管理職も少なくないとの認識から、管理職に対してキャリアについての意識付けを行ったり、キャリア面談の必要性などについて研修の場で伝えたりするなどの取組がある。

また、社員に対して早い段階からキャリアモデルを持つよう意識付けるために、若手社員も含めてキャリアに関する研修を行う取組もある。

(3)人事評価の適切な活用に係る周知・徹底

(2)のような取組を行っていく前提として、まずは管理職員に対して、人事評価における評価の在り方や手法などについて、十分な理解を得させることが必要である。

具体的には、超過勤務の状況などで評価するのではなく、業務上実際に挙げられた成果など実績そのもので評価するものであること、評価の結果を任用や給与などに反映させるものであること、あわせて、人材育成のツールとして活用することが肝要であることなどが挙げられる。

さらに、管理職員のみならず、評価を受ける職員に対しても、人事評価の意義・目的を十分に理解させることで、業務目標の設定に当たって、自らの考えを管理職員に伝えるなど、人事評価というツールを積極的に活用しようとする意識を醸成する必要がある。

特に、期首や期末の面談については、単に義務付けられているというものではなく、職員本人と管理職員が、目標設定に関する意識を共有したり、特に評価できる点や今後に向けての課題を確認したりすることにより、職員の能力向上やモチベーションを高めるために、非常に有効であることを認識させる必要がある。

なお、管理職員の人事評価については、能力・実績という観点から、所掌事務に関する課題や施策に対する成果ということが、評価の中心となってしまいがちであるところ、これに加えて、マネジメントによってどのような成果が挙げられたかということについても適切に評価する必要がある。

人事院としても、人事評価のプロセスを通じて職員のモチベーション向上が図られるよう、各府省の人事担当者向けに人事評価結果の任用や給与への活用に関して説明する機会を捉えて所属職員の制度理解向上のための取組を促すことや、評価能力向上のための研修の実施を通じて、人材育成の観点も含めた人事評価の活用の徹底を引き続き図ってまいりたい。

○ 民間企業等における取組例

民間企業においても、人事評価における面談等の場を上司と部下との間でコミュニケーションを図る貴重な機会と捉えており、従来は業績管理の観点から期初・期中・期末の3回の面談を行っていたが、形式的な機会だけではお互いの思いが伝わらず、また頻度が少なく適時のフィードバックが十分にできなかったことから、実施頻度を2週間から1か月に1回とする1対1による面談の場を別にセットし、内容としても上司が部下自身に将来のキャリアを考えさせたり、部下の可能性・チャレンジを引き出すようなものとしたりするという取組が行われている。

また、上司である管理職に対して、面談の場における部下とのコミュニケーションの取り方やフィードバックの方法などについて、研修を通じて理解させるという取組もある。