人事院総裁談話

令和4年8月8日 人事院勧告・報告 総裁談話

1 新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大や大規模な自然災害などへの対応をはじめ、国民生活を守り、安心を確保するため、全国各地で日々職務に精励している公務員各位に対し、心からの敬意を表します。
 社会情勢が急速に変化し、行政課題は複雑化・高度化しています。その中にあって、世界最高水準の行政サービスを国民に提供していくためには、行政を支える公務組織が、国民本位の、能率的で活力のある組織であり続けなければなりません。
 そのためには、能力のある多様な人材を継続的に採用し、戦略的に育成すること、そして、組織の構成員である職員のWell-beingの実現を図り、一人一人が意欲とやりがいを持って生き生きと働き続けられる職場環境を整えることが不可欠です。
 これにより、公務全体のパフォーマンスが向上するとともに公務職場の魅力が高まり、より多くの人材を惹きつける。そのような「好循環」を生み出していきたいと考えます。
 人事院は、その実現に向けて、次のような取組をスピード感を持って進めてまいります。

2 第一に、複雑化・高度化する課題を解決するためには、より多くの識見優れた人材を公務組織に集めることが喫緊の国家的課題となっています。
 民間企業等との人材獲得競争が激化する中、多くの方々に公務を目指していただくため、国家公務員採用試験制度の改革を進めます。すなわち、受験者数の増加に向けて、学生等にとってより受験しやすい試験となるよう、総合職春試験の実施時期の前倒しをはじめとする取組を実施します。
 同時に、多様な経験や高い専門性と公務への意欲を有する民間人材を積極的に誘致することも、国力の要を担う公務組織にとって今や不可欠となっています。各府省において民間人材を円滑に採用できるよう、昨年来、公正性確保等の要件を明示し、各府省限りで採用できる任期付職員の範囲を拡大してきました。給与についても、民間経験を適切に評価した決定や、高度な専門性や業績等に応じた決定を行えるよう、現行制度上可能な柔軟な取扱いの明文化をはじめ、運用・制度の両面で各府省を支援していきます。今後とも、上記の認識に基づき、各府省における民間人材の円滑な採用を積極的に後押しします。

3 第二に、新卒採用、経験者採用を問わず、個々の職員の意欲と能力を引き出し、最大限の組織パフォーマンスを発揮するため、公正な人事評価制度の運用が不可欠です。また、人事評価のプロセス等において管理職員と部下職員が円滑なコミュニケーションを図ることなどにより、職員が自らのキャリアを自律的に考えられるようにするとともに、専門性の向上や能力の伸長を支援する取組が求められます。
 人事評価制度の見直しを踏まえ、制度内容の周知等を進めるとともに、納得感のある人事管理の推進のため、管理職員の評価・育成能力の向上に向けた各府省の研修を支援します。また、管理職を対象とした行政研修におけるマネジメント能力向上のためのコースを新設するほか、若年層職員のキャリア形成支援の充実をはじめ、多様で効果的な研修を幅広く提供し、各府省における人材の育成を促進します。このように、公務における人への投資を積極的に進めてまいります。

4 第三に、公務職場が魅力的であるためには、職員が働きやすい勤務環境を整備し、働き方改革を強力に推進することが喫緊の課題です。
 長時間労働の是正に向けて、本年4月に新設した勤務時間調査・指導室において、各府省に対する超過勤務時間の適正管理等の指導を行ってきています。また、業務改善を図りつつ、業務量に応じた定員・人員を確保することも必要です。人事院として、定員管理を担当する部局に対し必要な働きかけを行うとともに、国会対応業務による超過勤務の縮減に向けて、国会等の一層の御理解と御協力をお願いいたします。
 働き方に関する価値観やライフスタイルが多様化する中、職員がその希望や置かれている事情に応じて能力を発揮できるようにすることも重要です。テレワークをはじめ とする柔軟な働き方を一層促進するため、フレックスタイム制及び休憩時間制度の柔軟化について速やかに措置します。
 健康増進やハラスメントの防止は、職員のWell-being実現の土台となるものです。各府省における健康管理体制の充実を図り、職員一人一人が生き生きと働ける環境の整備に向けて官民の実態等を調査するなど、積極的に取組を進めてまいります。

5 第四に、能率的で活力ある公務組織の実現に向けて様々な取組を進める中で、給与制度についても、社会と公務の変化に応じたアップデートに向けて取り組んでいきます。

6 本日、人事院は、国家公務員の給与の改定について、国会及び内閣に対し、勧告を行いました。
 本年は、民間における賃金の引上げを図る動きを反映して、本年4月分の月例給について、民間給与が国家公務員給与を平均921円(0.23%)上回る結果となりました。そのため、初任給及び若年層について、俸給月額を引き上げることとしました。また、特別給(ボーナス)についても、民間事業所における昨年8月から本年7月までの直近1年間の支給割合が公務を上回ったことから、年間4.40月分に引き上げることとしました。
 人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置として、情勢適応の原則に基づき国家公務員の適正な処遇を確保しようとするものです。勧告を通じて、職務に精励している職員に適正な給与その他の勤務条件を確保することは、職員の努力や実績に報いるとともに、人材確保にも資するものであり、組織活力の向上、労使関係の安定等を通じて、行政の効率的、安定的な運営に寄与するものです。
 国会及び内閣におかれては、人事院勧告制度の意義や役割に深い理解を示され、勧告どおり実施されるよう要請いたします。
 国民各位におかれては、行政各部において多くの公務員がそれぞれの職務を通じ国民生活を支えていることについて、深い御理解を賜りたいと存じます。


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