過去の記者会見

令和5年度

令和5年8月7日 人事院勧告・報告における川本総裁記者会見の概要

 
令和5年人事院勧告総裁記者会見

【冒頭発言】

 本日はお越しくださり、ありがとうございます。
 先ほど、国会と内閣に対しまして、国家公務員の給与の改定、そして勤務時間の改定についての勧告を行い、本勧告どおり実施していただくように要請をいたしました。
 
 本年の給与勧告では、民間が公務を上回る結果となったため、月例給とボーナスともに引き上げることとしています。特に月例給の引上げ率は、民間における大幅な賃上げを反映して、過去5年の平均と比べて、約10倍のベースアップとなります。また、テレワーク中心の働き方をする職員に対して、電気代、ガス代といった光熱費などの負担を軽減するため、新たな手当をつくります。
 給与面では、民間の動向を反映して明るい傾向が見られますが、公務の人材確保は、応募者の減少や若手職員の離職の増加などにより、依然として厳しい、危機的とも言える状況にあります。また、公務の職場環境に対しては、霞が関を中心に「ブラック」というイメージがなかなか払拭されません。
 この「ブラックと言われる状況」を打開しなければならない、ということは、霞ヶ関共通の思いです。その思いを叶えるためにも、人事院は、関係者の皆さんの御理解・御協力をいただきながら、各種の施策の検討を進め、実行してまいりました。
 この国の人々の利益や生活を守り、世界最高水準の行政サービスを提供し、活力ある社会を築く。その実現のため、日々、職務にまい進している国家公務員の皆さんが活き活きと働けるよう、公務員人事管理について制度面からも運用面からも、より良くしていくことが人事院の役割でもあります。
 
 このような認識のもと、本日の勧告と併せてお示しした「公務員人事管理に関する報告」では、職員一人一人が躍動でき、Well-beingが実現される公務を目指すべく、3本の柱を立てて、施策の方向性や具体策を示しています。柱の
 ・1点目は、公務組織を支える人材の確保
 ・2点目は、職員の成長と組織パフォーマンスの向上
 ・3点目は、多様なワークスタイル・ライフスタイルの実現とWell-beingの土台となる環境整備
 です。
 
 まず、1つ目の柱である「人材の確保」についてです。
 これまでの会見でも、行政の担い手となる『人』が最重要課題との認識を示してまいりましたが、そもそも公務組織に『人』が来てくださらなければ、組織運営も成り立ちません。やはり、従来の採用戦略、採用手法を踏襲していては、事態は好転しない、大胆に変えていくことも必要です。昨年から採用試験改革に着手していますけれども、今後もオンライン方式を活用した採用試験の検討など、試験実施に向けた課題などを整理しつつ、不断の見直しを行ってまいります。
 また、社会経済情勢や国際情勢がこれほどまでに変化している状況においては、公務に限らず、どのような組織でも、組織内部で育成した人材だけでは課題に対応しきれません。民間人材を積極的に採用することや、民間と公務の人事交流を促進するといった「民間と公務の知の融合」が鍵となります。公務の魅力や働きがい、人事交流を通じて得られる効果などを言語化、すなわち、言葉で表し、しっかりと広報・情報発信をしていきたいと思っています。
  
 次に、2つ目の柱である、「職員の成長と組織パフォーマンスの向上」についてです。
 民間であろうと公務であろうと、年齢にかかわらず、働く人々にとって、ご自身のキャリアをどのように創っていくのか、能力やスキルをいかに発展させ、仕事に活かしていくか。このような関心が非常に高まっています。そこで、職員のキャリア形成をさらに支援し、また、職員の「学び」を後押しするような取組を進めていきます。
 
 職員が学び、成長し、仕事に対するモチベーションを高め、実績をあげていくことになれば、組織としてのパフォーマンス向上にもつながります。その結果、国民の皆様や社会に対して良い影響をもたらすことになります。いわば、「学びと仕事の好循環」です。
 この好循環を生み出す観点から、民間企業で導入が進んでいる兼業についても避けて通れない論点だと思っています。職員の成長や組織パフォーマンスの向上につながるような兼業の在り方について、検討を進めていきます。
 
 次に、3つ目の柱です。「多様なワークスタイル・ライフスタイルの実現とWell-beingの土台となる環境整備」についてです。
 職員の皆さんが、仕事に対するやりがい、さらには生きがいを感じているかどうかは、職員の成長、パフォーマンスに影響します。公務の職場環境に対しては、「ブラック」と言われることがありますが、人事院としても、いわば「残業Gメン」と言いましょうか、昨年4月に担当部署を設置し、各省庁に出向いて勤務時間が適正に管理されているか調査をし、お話もうかがいながら、必要な指導・助言を行ってまいりました。今後、調査を拡充し、各省庁をサポートしつつ、人事院としてできる対応を進めていきたいと考えています。
 国家公務員の働き方の関係では、国会対応業務の改善を求める声も聞かれます。この点、本年6月に、衆議院の議院運営委員会の理事会において、「速やかな質問通告に努めるとともに、オンラインによる質問レクなどデジタルツールを利用した質問通告の推進に努めるものとする」などを内容とする申合せがなされました。各省庁や職員の声を受け止め、国家公務員の超過勤務の縮減に向けて御協力をいただいたことを非常にありがたく思っています。行政部内で更なる改善に取り組むことは当然ですが、人事院としても、国会を始めとする関係各方面の御理解と御協力を引き続きお願いしていきたいと思っています。
 
 今や、働き方に関する価値観やライフスタイルが多様化しています。個々の職員の成長やキャリア形成の支援という点を考えても、「大量処理型のマネジメント」から、「個人個人に着目したマネジメント」に転換する必要があります。そこで、職員の希望や事情に応じた働き方が可能となるよう、制度改革を進めます。   
 今回の勤務時間に関する「勧告」で示したとおり、一般の職員でも、フレックスタイム制を活用して、勤務時間の総量は維持した上で、週1日を限度に勤務時間を割り振らない日、いわゆる「ゼロ割振り日」を設定できるようにします。また、勤務間のインターバル確保の努力義務を設けます。さらに、民間企業で重要視されている「健康経営」の視点からも、職員が健やかに働くことができるよう、健康管理体制の充実に向けた検討を行うほか、ゼロ・ハラスメントに向けた取組を進めます。
  
 以上、3つの柱をもとに、お話をいたしました。
 今回、「報告」で示した様々な施策は、人材の確保や組織パフォーマンスの向上につながるような給与制度の対応も必要です。それぞれの施策を連係しながら、重層的に取り組んでまいります。施策を推進し、職員一人一人が高い意欲とやりがいを持って躍動でき、Well-beingが実現される環境を整備していきたいと考えています。
 
 本日、「勧告」と「報告」を岸田総理大臣にお渡した際に、総理から、
 「民間給与の状況を反映した給与勧告、在宅勤務等を中心とする働き方に対応した手当の新設、フレックスタイム制の見直しなどの勧告をしっかり受け止め、政府部内において議論したい、人事行政に関する様々な課題に係る検討の方向性についても報告いただいており、人事院と関係省庁で連携して取組を進めていただきたい」
 とのお言葉をいただきました。
 
 このような御期待にしっかり応えるべく、対応してまいります。
 
 最後になりますが、先週、「こども霞が関見学デー」が開催され、人事院にも多くの子どもたちが来てくれました。私も子どもたちと色々とお話をしましたが、子どもたちのワクワクしている表情を見て、日本の将来を担う子どもたちのためにも、この国を支える公務組織を、より良いものにしなければならない、と改めて感じました。
 今回、「報告」では、有識者会議を設置し、聖域なく議論をし、新たな時代にふさわしい公務員人事管理を実現していくことも表明しています。「子どもたちの未来への責任」、という点からも、課題解決を先送りせずに、果敢に取り組み、新たな時代にふさわしい公務の世界を実現していきたいと思っています。
 
 私からは以上です。

令和5年6月9日 令和4年度年次報告書に関する川本総裁記者会見

令和4年度年次報告書総裁記者会見
【冒頭発言】 

 川本でございます。本日はお越しいただき、ありがとうございます。
 
 本日、令和4年度の人事院の業務に関する年次報告、いわゆる「公務員白書」を、国会と内閣に提出いたしました。
 
 行政が直面している課題は、社会経済情勢や国際情勢が激変する中で、複雑化・高度化しております。そのような行政を担う人材の確保は国家的課題ですが、それが、現在、危機的な状況となっています。公務組織においては、長時間労働の是正も含め、働き方をどう改善していくか、能力や業績に真に見合った処遇をいかに実現していくか、職員が「やりがい」や「働きがい」を感じて職務に邁進するには何が必要かなど、人材マネジメントをめぐる課題は山積しています。
 
 このような状況の中、人事院では現在、国家公務員制度を時代環境に即したものにアップデートするべく、今回の白書で示したような制度改革や運用改善に取り組んでいますが、人材マネジメントを充実させるためには、データやデジタルを活用していくことが、今や、避けて通れない重要な課題であると認識しており、今回の白書において特集を組んだところです。
 
 今申し上げたとおり、この特集でお伝えしたいメッセージは、「個々の職員に応じた人材マネジメントを実践するには、データやデジタルの活用が不可欠であり、急務である」ということです。
 
 今回の特集をまとめるに当って、国家公務員のほか、企業で働く方々などにもアンケートに御協力をいただきました。
 また、国内の企業や地方公共団体、外国政府、そして各省庁の方々にも、ヒアリングを通じて御協力をいただきました。アンケートやヒアリングに御協力をいただいた皆様には感謝申し上げます。
 
 このアンケート結果を見ますと、例えば、
 ・ 職場では適切な人員配置がなされているか
 ・ 自分自身に対する人事異動や人事評価に納得しているか
 こういった質問項目について、国家公務員の回答は、企業で働く方々の回答と比較して、肯定感が低い傾向が見られました。
 個々の職員に応じたきめ細かい人材マネジメントを行うこと、適切な人事評価を行い、しっかりとフィードバックを行うこと ――― これらの重要性については、これまでも申し上げてきましたが、今回のアンケートを通じて、改めて痛感いたしました。
 
 人材マネジメントをめぐる課題が山積している中で、「これをやれば解決する」という『特効薬』はありません。企業や外国政府など、先進的に取り組んでおられる事例も参考にしながら、日本の公務組織において実現可能性のある取組に挑戦していくことが重要です。その一つが、今回のデータやデジタルの活用です。
 
 先月開催されたデジタル臨時行政調査会において、岸田総理は、国家公務員の人事管理のデジタル化やテレワーク等の柔軟な働き方を推進すると表明されました。政府全体として、デジタルを本格的に活用して人材マネジメントを行っていく機運が高まっていると感じています。人事院としても、その流れを強力に推し進めていきたいと考えています。
 
 人事院としては、内閣人事局やデジタル庁、そして、人材マネジメントの現場をあずかる各省庁と緊密に連携しながら、今回お示しした課題を乗り越えていきたいと思っています。
 
 最後になりますが、世界最高水準の行政サービスを国民の皆様にお届けするためにも、新たな時代にふさわしい人材マネジメントを実現することが必要です。今回の特集で取り上げたデータやデジタルの活用はその一翼を担うと思います。その他の観点からも時代環境に即したものにアップデートしていくとともに、今後は更なるアップグレードに向けて物事を進めてまいります。
 
 私からは以上です。

令和4年度

令和4年8月8日 人事院勧告・報告における川本総裁記者会見の概要

勧告記者会見画像


【冒頭発言】
 川本裕子でございます。本日はおいでいただきまして、ありがとうございます。
 
 先ほど、国会と内閣に対しまして、国家公務員の給与の改定を勧告し、本勧告どおり実施していただくよう要請をいたしました。私から岸田総理大臣に直接お渡ししてきたところです。
 本年の給与勧告においては、月例給・ボーナスともに、民間が公務を上回っていたため、3年ぶりに引き上げることにいたしました。
 月例給について、初任給や若手に重点を置き、30歳台半ばまでの俸給月額を引き上げるとともに、ボーナスを0.10月分引き上げ、年間4.40月分としております。
 
 社会情勢が急速に変化し、行政課題は複雑化・高度化しています。その中にあって、世界最高水準の行政サービスを国民の皆様にお届けするためには、行政を支える公務組織が、国民本位の、能率的で活力のある組織であり続けなければなりません。
 こうした使命に応えるために、給与勧告と併せて行った 「公務員人事管理に関する報告」では、昨年の報告で整理した人事行政が直面している課題と対応策の進展の状況を振り返り、取組を更に前進させるための次の一手を示しています。加えて、昨今の公務を取り巻く状況を踏まえ、これから本格的に改革に着手すべき分野における課題と対応策も明示しています。
 私は、今後の日本の経済社会の最重要課題は『人』だと思っています。組織を支える人材、組織のミッションを実現させる人材をいかに確保し、育てていくのか。そして、組織構成員がWell-beingの実現を図り、パフォーマンスをあげられるような環境を整備し、実績をあげた際には適正に処遇をしていく。これらの視点は、今の公務組織に特に必要なものだと思っています。今回の報告文で示した課題と対応策は、いずれも行政の担い手となる『人』をどうするか、という点に行き着くものであります。
 
 本日は、この会見の場を通じて、次の4点について、課題や対応策に対する私の思いも含めまして、お話ししたいと思います。
 ① 1点目は、人材の確保
 ② 2点目は、公正な人事評価と『人』への投資
 ③ 3点目は、勤務環境の整備
 ④ 4点目は、給与制度のアップデート
です。
 
 まず、1点目の公務における人材確保ですが、危機的な状況にあり、喫緊の国家的課題だと思っています。従来の採用戦略、採用手法を踏襲していては、事態は好転しない、大胆に変えていくことも必要です。そこで、今回の報告文では、国家公務員採用試験の改革について、「いつ」、「何をやるのか」、具体的なメニューを示しました。実現に向けて、既に検討に着手しております。
 
 また、複雑化・高度化する課題の解決には、公務部内で育成した人材だけでは対応しきれません。公務外から人材を一定程度取り込むこと、つまり「クリティカルマス」が極めて大事だと思っています。このため、各府省がタイムリーかつスピーディーに民間人材を採用できるように、この1年間で2回にわたって採用円滑化の措置を講じました。今後、給与についても、民間経験を適切に評価した設定や、高度な専門性や業績に応じた設定を行えるよう、各府省を支援し、民間人材の採用をさらに後押ししたいと考えています。
 
 次に、本日のお話の2点目、公正な人事評価と『人』への投資についてです。
 新卒採用、経験者採用を問わず、多様な人材に活躍していただくためには、組織として明確なビジョンやミッション、これに沿った行動規範が必要となるほか、公正な人事評価がなされることが不可欠です。また、若手職員からは、「成長実感がない」という話をうかがいますが、成長とは人に評価されて実感できるものです。誰もが信頼し、成長を実感できる人事評価を実現するためにも、管理職員のマネジメント能力の向上、さらには若手職員のキャリア形成支援の充実が必要であり、公務における『人』への投資を積極的に進めてまいります。
 
 本日のお話の3点目、勤務環境の整備についてです。
 多様な人材に公務を志望していただくためには、公務職場の働き方に対するマイナスイメージを払拭し、公務の魅力を高める取組も急務です。例えば、長時間労働の是正に関しては、本年4月、人事院に「勤務時間調査・指導室」を立ち上げ、既に各府省への調査を実施しております。各府省の超過勤務時間、在庁時間のデータを把握し、不適切な事例に対してはしっかりと指導し、是正を求めていくこととしています。
 各府省には、業務改革や必要な人員配置など長時間労働の是正に向けた取組を進めていただくことは当然ですが、人事院としても、定員管理を担当する部局に対して必要な働きかけを行ってまいります。また、国会対応業務による超過勤務縮減の観点から、昨年に続き、国会を始めとする関係各方面の御理解・御協力をお願いしていきたいと考えています。
 また、働き方に関する価値観やライフスタイルが多様化する中、職員の希望や事情に応じた働き方が可能となるよう、フレックスタイム制を速やかに柔軟化します。こうした取組とともに、健康管理体制の充実を図ることで、職員一人一人の能力発揮やWell-beingの実現を後押しします。これらにより、国家公務員の働き方改革を強力に推進してまいります。
 
 最後の4点目は、給与制度のアップデートです。
 今回の報告では、給与制度についても、社会と公務の変化に応じたアップデートに向けて取り組んでいくことを明記しております。これまで申し上げた公務をめぐる様々な課題も念頭に置きつつ、現在の給与制度が、果たして時代に合ったものなのか、職員一人一人が躍動できる公務組織の実現にふさわしいものになっているのか、公務全体のあるべき給与水準や給与カーブも含め、検証してまいります。来年夏には、具体的な措置の骨格案を示したいと思っております。
 
 ただいま御紹介したような、公務員人事管理に関する幅広い分野において、大胆な改革を実行することで、公務が一層魅力的になり、政府の課題解決能力もアップし、その結果として政府や公務員への国民の信頼が高まると期待しています。
 
 本日、給与勧告と「公務員人事管理に関する報告」を岸田総理大臣にお渡ししました。
 プレスの皆さんが退室された後の懇談の場で、次のようなお言葉をいただきました。
 「民間からの円滑な人材確保やフレックスタイム制の柔軟化などの取組に加えて、骨太方針で示したデジタル時代にふさわしい政府への転換をしっかり進めるためにも、デジタル技術を活用した働きやすい職場環境や勤務形態の柔軟化、リスキリングなどの人材の育成について、関係機関が連携して積極的に取組を進め具体化していただきたい。」
とのことでした。
 また、松野官房長官におかれては、会見において、民間からの円滑な人材確保に関する取組、フレックスタイム制の柔軟化など、今回の「報告」について、「前向きな取組方針が示された」との御発言があった、と伺っております。
 牧島デジタル担当大臣からも、デジタル臨調で検討の御要請をいただいていた「民間人材の採用手続や給与決定の柔軟化など、これまで以上に踏み込んだ取組方針が示されたことを歓迎している」、「公務職場がより魅力的になるよう、引き続き人事院などと連携・協力していきたい」との御発言があった、とのことです。
 さらに、こども政策や女性活躍などを担当されている野田大臣からは、こども家庭庁の創設も見据えて、「民間人材の積極的な登用は大事だ」との御認識を示されるとともに、長時間労働の是正や出生サポート休暇など、公務における率先した取組が、日本全体の働き方改革をリードしていくことを期待している、との御発言があった、と伺っております。
 このような御期待にしっかり応えるべく、スピード感をもって対応してまいります。
 
 最後になりますが、冒頭で申し上げたとおり、世界最高水準の行政サービスを国民の皆様にお届けするためには、行政の担い手となる『人』が最重要課題だと思っています。残念ながら、一部の公務員の不祥事により、公務員全体、公務組織全体がネガティブに捉えられてしまうこともありますが、ほとんどの公務員は、国民の安心・安全を確保し、国民生活をより良いものとすべく、日々の職務に邁進しています。そのような公務員の皆さんに、感謝と同時に、敬意を表します。

 公務員一人一人が生き生きと働くことができるよう、また公務組織としてパフォーマンスを最大限発揮し、より一層、国民の皆様に貢献できるよう、関係機関とも連携して、着実に前進させていきたいと思っております。
 
 公務における人的資源管理に関する各種の難題に対して、お二人の人事官、そして人事院事務総局の職員が一丸となって、スピード感を持って果敢に取り組み、物事を大きく前進させ、人事行政に好循環を生み出していきたい、そう思っております。

令和4年6月10日 令和3年度年次報告書に関する川本総裁記者会見

【冒頭発言】
 川本でございます。本日はお越しいただき、ありがとうございます。
 人事院は、先ほど、国会と内閣に対し、令和3年度の年次報告書、いわゆる白書を提出いたしました。また、私が人事院総裁を拝命したのが昨年6月で、間もなく1年となりますので、このような節目のタイミングに当たり、私から直接メディアの皆様へ、そして皆様から情報を受け取る多くの方々に、人事院が何をやってきたか、これからどういう方向に進むか、私がどういうことを考えているか、についてお伝えしたいと思っています。

 国家公務員の使命とは何かを考えた場合、様々な御意見があると思いますが、私は、「世界最高の行政サービスを国民の皆様にお届けすること」、これが国家公務員の使命だと思っています。この使命を果たすためには、行政の担い手となる人材を確保すること、そして公務組織を魅力ある職場とすることが鍵となります。
 この観点から、人事行政分野における、この1年の取組を見ましても、公務人材の確保、長時間労働の是正など、解決が困難な課題に直面していました。今回の年次報告書でお示ししたとおり、長時間労働の是正に関しては、年度が替わって本年4月に、「勤務時間調査・指導室」を新たに設置し、各府省への助言や指導などを強化しているところです。
 公務人材の確保については喫緊の課題であり、さらに言えば危機的状況であると認識しています。公務を志す方々が減り、その一方で、若手職員の離職が増加しています。さらには、デジタル人材も含め、専門人材が不足している状況です。これまでの採用戦略、採用手法を維持しているだけでは、事態は好転しません。

 そこで、昨年度、官民の垣根を超えた人材を誘致して、民間人材が活躍できるよう、各府省限りで採用できる任期付き職員の範囲を拡大しました。当然のことながら、「この取組で終わり」、ではありません。公務組織の活性化、機能強化のためには、民間人材、中途採用の方々を、一定程度取り込むこと、つまり「クリティカルマス」が大事だと思っています。
 民間人材を大いに活用しなければ、現在の日本の行政は十分に機能しない状況になるという懸念もあります。人事院としては、民間人材の採用円滑化に向けた取組をさらに加速させたいと考えています。

 本日の主題として、採用試験の見直しに向けた施策についてお話します。
 先ほど申し上げたとおり、公務人材の確保は危機的状況であり、人事院としても、「何とかしなければ」という強い思いで、「採用試験の課題と今後の施策」を、今回の年次報告書の特集として取り上げました。
 人事院として初めて実施した、公務員を志望しなかった学生も対象に含めた意識調査、大学の教職員の方々や各府省の方々へのヒアリングなどから、学生の間での採用試験に対する負担感を指摘する意見が多く聞かれたところです。さらに、民間企業の採用活動の早期化が進む中、採用試験の時期を早めるべきとの御意見も多くございました。
 こうした調査結果や関係者からの御意見も踏まえ、今回の年次報告書では、採用試験の課題を整理し、人事院として取り組むべき方策について検討の方向性を示したところです。具体的には、採用試験をより早期に受験できるようにしたり、多様な人材が受験しやすいように、採用試験の間口を拡げる施策です。「今年度中を目途に方針を打ち出すべき施策」、「その他検討を行うべき施策」のそれぞれについて、具体的な項目を示しています。
 これらの施策について、スピード感を持って取り組み、公務員志望者の増加につなげていきたいと考えております。

 本日は、公務人材の確保を中心にお話させていただきました。人事行政については、もちろん本日お話ししたことだけではなく、長時間労働の是正などの働き方改革や、人事評価制度の見直しを通じた能力・実績主義の推進などの分野でも、課題は山積しています。
 これらの課題に対し、回避しようとしたり、思考停止に陥ったりせず、関係機関とも連携し、人事院においては、お二人の人事官、そして事務総局の職員が一丸となって、状況改善、課題解決に向けて取り組んでまいります。

令和3年度

令和3年8月10日 人事院勧告・報告時における川本総裁記者会見の概要

総裁記者会見の画像


【冒頭発言】
 川本でございます。本日はお越しいただき、ありがとうございます。

 本日、人事院は、国会及び内閣に対し、国家公務員の給与の改定を勧告し、本勧告どおり実施されるよう要請をいたしました。また、公務員人事管理に関する報告を行いまして、国家公務員の育児休業法の改正についての意見の申出をいたしました。先ほど私から菅総理大臣に直接お渡ししてきたところです。 

 本年の給与勧告において、月例給については、民間給与との較差が極めて小さいことから、改定しないことといたしました。ボーナスについては、公務が民間を上回ったことから、年間4.30 月分に引き下げることといたしました。
給与勧告と併せて「公務員人事管理の報告」を行ったところです。この報告では、国家公務員が置かれている課題を捉えた上で、それらにどう対応していくか、といった視点で具体的な取組の方向性を示しています。
 
 私は、これまでの仕事を通じて、「問題解決」という点に最も関心を持っておりました。問題解決のためには、まずは課題を認識することが重要となります。私は国会での所信表明の際、次の3点を課題認識として表明したところです。1番目は、行政組織の経営管理力を高めることにより、個々の公務員が意欲を持って全力で仕事に取り組める環境を実現することであります。2番目は、時代環境に適応する能力の確保です。また、3番目には国際性と開放性について述べました。今回の「公務員人事管理の報告」においても、これらの課題認識も念頭に置いた上で、お二人の人事官や事務総局と議論を重ね、次の4つの点を具体的な課題として認識し、それらへの対応策を示したところです。その課題とは、1番目に、人材の確保と育成です。2番目に、良好な勤務環境の整備。3番目といたしまして、妊娠、出産、育児等と仕事の両立支援。4番目は、定年の引上げ、能力·実績に基づく人事管理の推進でございます。特に、公務員志望者の減少、若手職員の離職増加、社会全体のデジタル化といった状況において、人材の確保は喫緊の課題であります。国家公務員が社会環境の変化に的確に適応していくためにも、例えば、官民の人材の流動性を高め、民間の知見を積極的に公務に取り入れていくことは重要と考えております。また、長時間労働の是正は当然のことながら、テレワークを積極的に活用するなど、働きやすい勤務環境を整備することが求められております。特にテレワークの推進は、業務プロセスの変革やデジタルトランスフォーメーションの推進を通じた行動変容の観点から重要と考えております。さらに、長時間労働の是正の観点からは、人事院としても最大限努力してまいりますが、国会対応業務の改善を通じた超過勤務の縮減も喫緊の課題です。そこで、今回、国会等の一層の御理解と御協力のお願いを報告文にも記しています。

 今回の給与勧告·報告を菅総理大臣にお渡しした際、総理からは、「勧告については、しっかりと受け止めて、政府内で議論していきたい」とのお話がありました。また、「公務員人事管理に関する報告」については、総理から大変多くのお言葉をいただきました。冒頭、プレスの皆さんがいらっしゃるところですけれども、「新しい時代にふさわしい、例えばデジタル化や不妊治療の休暇を始め、報告で示された取組を、人事院と関係省庁で協議して前に進めていきたい」とのお話がありました。その後さらに加えまして、「働き方改革を進める観点からの長時間労働の是正や、厳しい状況にある公務員の人材確保など、これまで十分に対応できていなかったものも多い」との御認識を示され、「この報告で示された取組は、全てやらなければいけないことばかりであり、これらを、是非、前に進めて欲しい。期待している」とのお言葉をいただきました。
 また、加藤官房長官からは、政府としても、人事院の取組と連携し、魅力ある国家公務員の勤務環境の整備に取り組んでいただける旨のお話があったと聞いております。
 さらに、国家公務員制度担当の河野大臣からも、今回の「公務員人事管理に関する報告」について、先ほど記者会見において、「画期的な報告」、「意欲的取組」として期待を寄せていただき、内閣人事局としても協力し、共に改革を進めていただける旨のお話があったそうです。
 人事行政に関わる様々な取組については、総理、官房長官、河野大臣からのお言葉を受け止めつつ、人事院としてしっかり検討し推進してまいります。

 最後になりますが、今回の報告文で示した各種取組を通じて、国家公務員がその能力を十分発揮し、誇りをもって職務に邁進できる公務職場を実現していくことが人事院のミッションの一つと考えております。人事院は、制度官庁として、各府省相手·職員相手の仕事が多くなりますが、その先には、当然のことですが、行政サービスの受け手、国民の皆様がいらっしゃいます。したがって、「B to B」という意識にとどまらず、「B to B to C」という意識を持って対応していくことが必要と考えております。
 いずれにせよ、今回お示しした具体的な取組については、スピード感を持って着実に前進させていきたいと思っております。私からは以上でございます。

令和3年人事院勧告・報告時における川本総裁記者会見の概要 PDF版(182KB)
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