はじめに

人事院は、公務の民主的かつ能率的な運営を国民に対し保障するという国家公務員法の基本理念の下、人事行政の公正の確保と職員の利益の保護等その使命の達成に努めてきており、人事院勧告制度を始めとする公務員制度は、行政運営の基盤として重要な機能を果たしている。

近年、就業意識の多様化や勤務環境への関心の高まりなどを背景に、公務の志望者が減少し、若年層職員の離職も増加している。また、専門的な知識や経験を十分に備えた職員が不足するなど、人材の確保は喫緊の課題となっている。新規学卒者を採用して計画的に育成するだけでなく、民間での経験や国際的な知見を有する者など、官民の垣根を越えて時代環境に適応できる能力を有する人材を誘致することが不可欠である。

また、公務職場全体の魅力を高め、個々の職員がその能力や経験を十全に発揮し、意欲を持って全力で働くことのできる環境を実現するためには、幹部職員等の組織マネジメントが極めて重要であることに加えて、仕事と家庭生活の両立が図られるよう、長時間労働の是正が必要である。勤務時間制度の柔軟な運用を通じたテレワークの活用等、個々の職員の事情に応じた働き方が可能となる働きやすい勤務環境の整備が求められている。

本院は、以上のような国家公務員が置かれている現状や課題を認識した上で、多様な有為の人材が、それぞれの能力を十全に発揮し、誇りを持って職務に精励できる公務職場の実現に向けて取組を進めている。

加えて、職員に範を示すべき立場にある幹部職員等による国家公務員倫理法等違反事案が相次いで起き、全体の奉仕者としての強い自覚を促すための対応に努めている。

本報告書の構成は、2編からなり、第1編は「人事行政」全般について、第2編は「国家公務員倫理審査会の業務」の状況について記述している。このうち第1編は3部からなり、第1部は、人材の確保及び育成のための取組、妊娠、出産、育児等と仕事の両立支援や良好な勤務環境の整備のための各施策、適正な公務員給与を確保するための給与勧告など、令和3年度における人事行政の主な動きについて記述している。次いで第2部では、特別テーマとして、「人材確保に向けた国家公務員採用試験の課題と今後の施策」と題し、採用試験の今後の在り方に関し取り組むべき施策について言及している。第3部では、令和3年度の人事院の業務状況について、各種資料を掲載して記述している。

本報告書により、人事行政及び公務員に対する理解が一層深まることを願うものである。

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