第1編 《人事行政》

【第3部】 平成28年度業務状況

第5章 職員の勤務環境等

第9節 服務及び懲戒

2 懲戒

(1)懲戒制度の概要、懲戒処分に関する指導等

各府省等の任命権者は、職員が、①国公法若しくは倫理法又はこれらの法律に基づく命令に違反した場合、②職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合、③国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合のいずれかに該当するときは、当該職員に対し、懲戒処分として免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができることとされている(国公法第82条第1項)。その具体的手続は、国公法及び規則12-0(職員の懲戒)に定められている。

任命権者が懲戒処分を行うときは、職員に処分説明書を交付することとされている。人事院は各府省等からその写しの提出を受けて、毎年の懲戒処分の状況を把握・公表するとともに、必要に応じ各府省等に対し指導・助言を行うなど、懲戒制度の厳正な運用について徹底を図っている。

なお、「懲戒処分の指針」について、近年、サイバー攻撃の脅威が増大するなどして、従来以上に厳重な情報管理・保全が求められる状況にあること、また、危険ドラッグ等の薬物に対する防止対策の重要性が高まっていることなどの社会情勢の変化等を踏まえ、所要の見直しを行い、平成28年9月30日に同指針の改正通知を各府省等に発出した。

【改正の概要】

  1. 1 秘密漏えいに係る標準例の追加
    • ・ 職務上知ることのできた秘密を自己の不正な利益を図る目的で漏らし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員…免職
    • ・ 具体的に命令され、又は注意喚起された情報セキュリティ対策を怠ったことにより、職務上の秘密が漏えいし、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員…停職、減給又は戒告
  2. 2 薬物における危険ドラッグ等の標準例の明確化
    • ・ 麻薬、大麻、あへん、覚醒剤、危険ドラッグ等の所持、使用、譲渡等をした職員…免職

(2)懲戒処分の状況

平成28年に懲戒処分を受けた職員総数は263人(免職10人、停職54人、減給137人、戒告62人)であり、前年に比べて21人減少している。

処分数を府省等別にみると、法務省が最も多く、次いで国税庁、厚生労働省の順になっている。また、処分の事由別にみると、公務外非行関係(窃盗、暴行等)、一般服務関係(欠勤、勤務態度不良等)、交通事故・交通法規違反関係の順に多くなっている(資料5-45-5)。

平成28年中において、懲戒処分を行った事例としては、以下のようなものがあった。

  •  公金の不正支出事案

    国公法第103条で禁止されているにもかかわらず、自ら設立した営利企業の役員に就任した。さらに、入札等の公正を妨害し、国から受注した廃棄物処理を実施したように装って公金を不正に支出させたなどとして、経済産業省の職員1人に対して免職処分が行われた。また、管理監督に適切さを欠いたとして管理職級3人に対し戒告処分が行われた。

  •  博物館収蔵の金製品の窃盗事案

    個人的な金融取引による損失を補てんするため、博物館の展示ケースから博物館の収蔵品である金塊1塊(約15kg)を、また、同博物館の収蔵品保管庫から金製品を、それぞれ不正に持ち出し質入れしたとして、独立行政法人造幣局の職員1人に対して免職処分が行われた。また、非違行為を未然に防止できなかった等として、支局長及び支局次長に対し戒告処分、管理職級2人及び担当職員1人に対し減給処分、職員3人に対し厳重注意の措置が行われた。

各任命権者は、懲戒処分が行われるべき事件が刑事裁判所に係属している間においても、人事院の承認を経て、適宜、懲戒処分を行うことができることとされている(職員が、公判廷における供述等により、懲戒処分の対象とする事実で公訴事実に該当するものがあることを認めている場合には、人事院の承認があったものとして取り扱うことができる。)。この手続により、平成28年においては、7府省等で11人(免職5人、停職3人、減給3人)に対して懲戒処分が行われた。

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