今回調査に係る結果の概要は次のとおりである(結果全体については、資料1及び2を参照。)。
(1)モチベーション関係
30代職員のモチベーションを特に維持・向上させているものとしては、全体としては「仕事のやりがい」(42.0%)、「給与・賞与等の処遇」(40.5%)、「業務遂行による自身の成長」(36.6%)、「社会への貢献の意識」(36.3%)を挙げた者の割合が高かった〔図7-1〕。
役職段階別にみると、課長補佐級では約6割が「仕事のやりがい」「社会への貢献の意識」と回答し、仕事の意義や貢献意識をより高く評価している一方、係長級等では、「給与・賞与等の処遇」と回答した者の割合も高くなっている。なお、本質問に対しては、回答を五つまで選択可能としていたが、平均の回答項目数は、課長補佐級は3.9となっているのに対し、係長級は3.2、その他は3.1となっており、係長級等のモチベーションを特に維持・向上させているものが少ないという差異もみられた。
30代職員のモチベーションを特に低下させたことがあるものとしては、全体として「業務多忙や長時間勤務等によりワーク・ライフ・バランスが保てないこと」「業務に社会への貢献、やりがいを感じられないこと」「上司等からの支援の欠如」「給与・賞与等の処遇」「上司からの否定的な評価」を回答した者の割合が高かった。
特に「業務多忙や長時間勤務等によりワーク・ライフ・バランスが保てないこと」を回答した者の数が最も多く、約半数となっている〔図7-2〕。
「上司等からの支援の欠如」(31.4%)や「上司からの否定的な評価」(27.0%)の回答も比較的多く、モチベーションを特に維持・向上させているものとして「上司からの評価」(25.3%)に一定程度の回答があったことも合わせると、上司の指導・育成等も30代職員のモチベーションに影響を与える大きな要素となっていると考えられる。
一方で、「同僚等との昇進の差異」は低い値(9.9%)であり、モチベーションを特に維持・向上させているものについての回答でも「昇進に対する意欲・期待」が最も低い値(7.8%)であったことから、30代職員は、将来高い地位に就くことをモチベーションとして強く意識していないと考えられる。
なお、「行政や公務員への批判」も、課長補佐級及び係長級で25%超の回答があった。
役職段階別にみると、「業務多忙や長時間勤務等によりワーク・ライフ・バランスが保てないこと」「業務に社会への貢献、やりがいを感じられないこと」と回答した割合が課長補佐級に若干多かったが、全体の傾向としては大きな差異は認められなかった。
(2)キャリア形成関係
イ 不安の理由等
「少し不安である」又は「不安である」と回答した約7割の30代職員に対し、さらに、不安を感じている点を聞いたところ、「能力開発・専門性習得の方向性(定まっていないことも含む)」(65.7%)が最も多く選択された。なお、「仕事と育児の両立」についても男女ともに5割以上の者が選択している〔図8-3〕。30代職員のうち、仕事の内容が「自分に合っていない」(22.9%)又は「(「合っている」・「合っていない」の)どちらでもない/わからない」(39.0%)と回答した者も約6割おり〔図8-4〕、自分の適性や将来のキャリア形成についてのイメージの有無についても、「あまりない」又は「ほとんどない」と回答した者が約半数を占めていた〔図8-5〕。
自分の適性や将来のキャリア形成に関するイメージの有無と、今後のキャリア形成等に関する安心感について、それぞれの質問項目への回答状況をクロス集計すると、自分の適性や将来イメージがあると回答した者ほど今後のキャリア形成等に関して安心と回答した割合が高い一方、イメージがないと回答した者ほど今後のキャリア形成等に関して不安と回答した割合が高かった〔図8-6〕。
この結果から、キャリア形成に当たって、30代職員は自分の専門性や強みを高めていきたいと考えている一方〔後掲図8-10〕、自分の適性や将来のキャリア形成の内容について現時点で具体的なイメージを持つには至っておらず、それにより、不安を高めている側面もあるものと考えられる。
また、自分の適性や将来のキャリア形成の希望を人事当局に伝える(相談する)機会については、「伝えたいときに伝えられる」(7.5%)は少なく、「ほとんどない」(45.9%)が最も多く回答されていた〔図8-7〕。この質問項目と今後のキャリア形成等に関する安心感についてクロス集計すると、人事当局との相談機会が多いほど、先の質問項目で、キャリア形成等について「安心している」「概ね安心している」と回答した割合が高い一方、人事当局との相談機会が少ないほど「少し不安である」「不安である」と回答した割合が高かった〔図8-8〕。
この結果から、現状では、キャリア形成等に関する人事当局と職員間でのコミュニケーションが不足している場合も少なくない一方、十分な相談機会がある場合は、職員のキャリア形成等への安心感に好影響を与えているものと考えられる。
ウ キャリア形成に関する30代職員の意向
30代職員がキャリア形成において最も重視することは、「やりがいのある仕事をすること」(46.7%)、「自分の能力を活かせる仕事をすること」(39.6%)が多数となっており〔図8-9〕、今後のキャリア形成の方向性については、「どちらかというと自分の専門性・強みを高めていきたい」(50.2%)と回答した者が最も多かった〔図8-10〕。一方、今後関わりたい業務の種類に関しては、「ライン職などマネジメントに関わる仕事をしたい」(27.2%)、「専門職的な仕事をしたい」(37.9%)、「どちらとも言えない」(34.9%)と回答は分かれている〔図8-11〕。役職段階別にみると、課長補佐級では、「ライン職などマネジメントに関わる仕事をしたい」と回答した割合がやや多いが、「専門職的な仕事をしたい」と回答した者も4分の1を超えている。
昇進への意識に関しては、「責任ある立場で仕事をすること」(6.0%)をキャリア形成で重視すると回答した30代職員は少なく〔図8-9〕、将来どこまで昇進したいかという問に対しても「特に考えていない」(57.6%)とする回答が最も多くなっている〔図8-12〕。
エ キャリア形成に係る人事当局、上司の支援等
今後必要と考えるキャリア形成支援策については、「育児や介護等、家庭の事情に配慮した人事」(52.7%)、「キャリアの見える化(今後の考え得る複数のキャリアパスの提示など)」(52.3%)、「職員の今後のキャリア形成に関する上司や人事担当者との面談・意向確認」(40.8%)を挙げた30代職員が多かった〔図8-13〕。
(3)挑戦意欲関係
イ チャレンジ等をしない理由
仕事の内容や進め方についての新たな提案・チャレンジについて「あまりない」又は「ほとんどない」と回答した30代職員に対して、その理由を尋ねたところ、「新たな提案等をする時間的余裕がないから」が最も多く回答され、次いで、「財源や人員に制約があり実現困難だから」「これまでの方向性と異なるなど、業務の継続性の観点から実現困難だから」が上位となっている。
また、「性格上新しいことに挑戦することに向いていないから」「新たな提案等をしても上司に却下されそうだ(又は却下されたことがある)から」とする回答も2割を超えている。
この結果は、仕事量が多いために新たな提案・チャレンジができないとしている30代職員が一定数存在していることを示している。一方で、仕事の量の実感と新たな提案・チャレンジの頻度についてクロス集計すると、「よくある」「たまにある」を合わせてみれば、仕事の量が多いほど、新たな提案・チャレンジを行っている傾向が認められる〔図9-4〕。
また、意思決定への参画の状況についてみると、「十分参画できている」又は「概ね参画できている」と回答した30代職員は約6割いる中、この質問項目と新たな提案・チャレンジの頻度についてクロス集計すると、参画の度合いが高いほど、より新たな提案・チャレンジをする傾向にあることが分かる〔図9-5〕。
(4)業務効率化・人員配置等の勤務環境関係
ウ 自府省に期待する人事管理上の改善等
自府省に今後更なる改善を期待することについての質問でも、30代職員においては、「業務量に応じた職員の配置」(52.9%)、「業務の合理化・超過勤務の縮減」(43.2%)、「偏りのない業務分担」(42.3%)といった業務負荷に関する回答が上位となっている。なお、課長級職員(課長級職員調査における質問は、「30代職員の能力発揮のために組織として取り組むこと」)においては、「偏りのない業務分担」(13.1%)について、30代職員との差異が認められる〔図10-5〕。
また、30代職員には、「育児や介護等、家庭の事情に配慮した人事運用」(31.2%)、「テレワーク、フレックスなど柔軟な働き方の推進」(25.6%)などの両立支援やワーク・ライフ・バランスの実現に向けた対応を求める声も一定数あった。
男女別にみると、両立支援に対する改善については、男性よりも女性の意識が高い結果となっており、「両立支援制度利用中の職員も活躍できる業務体制・方法の構築」では、女性職員が男性職員を10ポイント程度上回っている〔図10-6〕。
(5)上司の指導・育成等関係
イ 上司に求めるもの
ウ 上司から受けた厳しい指導等
(6)世代間の認識ギャップ
30代職員調査と課長級職員調査を照らし合わせてみると、前記のとおり、業務分担の偏りの評価等について差異があったほか、次のような項目についても乖離がみられた。
ア 30代職員の能力発揮に対する認識
課長級職員は30代職員の能力について、前記のとおり、「主体性」(40.0%)、「チャレンジ精神」(39.7%)が物足りないと感じており〔図9-2〕、自府省に今後更なる改善を期待することについても、「新たな取組へのチャレンジ」(22.4ポイント差)、「若手職員の意思決定への参画」(21.5ポイント差)について、課長級職員の回答割合が30代職員と比べて著しく高くなっている〔図10-5〕。
イ 省内のコミュニケーションの変化
省内のコミュニケーションの様子については、業務上・業務外ともに、30代職員は入省時と比べて「変わっていない」との回答が約6割に達しているが、課長級職員はいずれも「希薄になった」と答える割合が比較的高かった。30代職員との回答割合の差をみると、業務上のやりとりについては約15ポイント、業務外のやりとりについては約46ポイントとなっており、認識に大きな乖離がみられる〔図12-1〕。
希薄になった理由としては、30代職員、課長級職員ともに、「懇親会など職務外での付き合いが減ったため」が最も多いが、課長級職員は「メールや電子決裁など業務の電子化により対面で話をする機会が減ったため」(30代職員と24.2ポイント差)、「プライバシーやハラスメントを気にする必要があるため」(30代職員と13.8ポイント差)を多く挙げている〔図12-2〕。
課長級職員(40~50代)が入省してから30代職員が入省するまでの10~20年の間で、業務の電子化・効率化、ハラスメントの概念の普及、仕事と家庭の両立支援の必要性の浸透等、職場環境が大きく変化していることがうかがえる。