パワー・ハラスメント
パワー・ハラスメント(以下「パワハラ」という。)とは
職務に関する優越的な関係を背景として行われる、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動であって、職員に精神的若しくは身体的な苦痛を与え、職員の人格若しくは尊厳を害し、又は職員の勤務環境を害することとなるようなもの
●「職務に関する優越的な関係を背景として行われる」言動
「職務に関する優越的な関係を背景として行われる」言動とは、当該言動を受ける職員が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものをいいます。
●「業務上必要かつ相当な範囲を超える」言動
「業務上必要かつ相当な範囲を超える」言動とは、社会通念に照らし、当該言動が明らかに業務上必要性がない又はその態様が相当でないものをいいます。このような言動に該当するか否かは、具体的な状況(言動の目的、当該言動を受けた職員の問題行動の有無並びにその内容及び程度その他当該言動が行われた経緯及びその状況、業務の内容及び性質、当該言動の態様、頻度及び継続性、職員の属性及び心身の状況、当該言動の行為者との関係性等)を踏まえて総合的に判断します。例えば、一瞬のちゅうちょが人命に関わる場面では、厳しい指示・指導を行うことはパワハラには当たらない場合もあり得ますが、そのような場面が生じることがある職種であっても、そのような切迫性がない場面における言動については、その場面における「業務上必要かつ相当な範囲」を超えたかどうかの判断を行うことになります。職種によって判断基準が異なるものではなく、他の職場においてパワハラとされるものが個別の職場の風土によっては許容されるというものではありません。
●場所的・時間的な範囲
パワハラは、行為者と受け手の関係性に着目した概念であり、言動が行われる場所や時間は問いません。
パワハラになり得る言動
パワハラになり得る言動として、例えば、次のようなものがあります。
1 暴力・傷害
・ 書類で頭を叩く。
・ 部下を殴ったり、蹴ったりする。
・ 相手に物を投げつける。
2 暴言・名誉毀損・侮辱
・ 人格を否定するような罵詈雑言を浴びせる。
・ 他の職員の前で無能なやつだと言ったり、土下座をさせたりする。
・ 相手を罵倒・侮辱するような内容の電子メール等を複数の職員宛てに送信する。
(注)「性的指向又は性自認に関する偏見に基づく言動」は、セクシュアル・ハラスメントに該当するが、職務に関する優越的な関係を背景として
行われるこうした言動は、パワハラにも該当する。
3 執拗な非難
・ 改善点を具体的に指示することなく、何日間にもわたって繰り返し文書の書き直しを命じる。
・ 長時間厳しく叱責し続ける。
4 威圧的な行為
・ 部下達の前で、書類を何度も激しく机に叩き付ける。
・ 自分の意に沿った発言をするまで怒鳴り続けたり、自分のミスを有無を言わさず部下に責任転嫁したりする。
5 実現不可能・無駄な業務の強要
・ これまで分担して行ってきた大量の業務を未経験の部下に全部押しつけ、期限内に全て処理するよう厳命する。
・ 緊急性がないにもかかわらず、毎週のように土曜日や日曜日に出勤することを命じる。
・ 部下に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせる。
6 仕事を与えない・隔離・仲間外し・無視
・ 気に入らない部下に仕事をさせない。
・ 気に入らない部下を無視し、会議にも参加させない。
・ 課員全員に送付する業務連絡のメールを特定の職員にだけ送付しない。
・ 意に沿わない職員を他の職員から隔離する。
7 個の侵害
・ 個人に委ねられるべき私生活に関する事柄について、仕事上の不利益を示唆して干渉する。
・ 他人に知られたくない職員本人や家族の個人情報を言いふらす。
(注)第1号から第7号までの言動に該当しなければパワハラとならないという趣旨に理解されてはならない。
パワハラの禁止
●職員の責務
「職員は、パワー・ハラスメントをしてはならない。」(人事院規則10―16第5条第1項)
パワハラを防止するためには、職員一人一人が、パワハラが、職員の人格や尊厳を害するものであることを理解し、互いの人格を尊重し、自らがパワハラを行わないようにしなければなりません。
●管理監督者の責務
管理又は監督の地位にある職員(管理監督者)は、パワハラの防止のため、良好な勤務環境を確保するよう努めるとともに、パワハラに関する苦情相談が職員からなされた場合には、苦情相談に係る問題を解決するため、迅速かつ適切に対処しなければなりません。
<参考>パワハラに関する人事院規則等
人事院規則10―16(パワー・ハラスメントの防止等)
人事院規則10―16(パワー・ハラスメントの防止等)の運用について(令和2年職職―141)
公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会