人事院規則10―16(パワー・ハラスメントの防止等)の運用について
(令和2年4月1日職職―141)
(人事院事務総長発)
標記について下記のとおり定めたので、令和2年6月1日以降は、これによってください。
記
第2条関係
1 この条の「職務に関する優越的な関係を背景として行われる」言動とは、当該言動を受ける職員が当該言動の行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものをいう。典型的なものとして、次に掲げるものが挙げられる。
一 職務上の地位が上位の職員による言動
二 同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難な状況下で行われるもの
三 同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの
一 職務上の地位が上位の職員による言動
二 同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難な状況下で行われるもの
三 同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの
2 この条の「業務上必要かつ相当な範囲を超える」言動とは、社会通念に照らし、当該言動が明らかに業務上必要性がない又はその態様が相当でないものをいい、例えば、次に掲げるものが含まれる。なお、このような言動に該当するか否かは、具体的な状況(言動の目的、当該言動を受けた職員の問題行動の有無並びにその内容及び程度その他当該言動が行われた経緯及びその状況、業務の内容及び性質、当該言動の態様、頻度及び継続性、職員の属性及び心身の状況、当該言動の行為者との関係性等)を踏まえて総合的に判断するものとする。
一 明らかに業務上必要性がない言動
二 業務の目的を大きく逸脱した言動
三 業務の目的を達成するための手段として不適当な言動
四 当該行為の回数・時間、当該言動の行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動
一 明らかに業務上必要性がない言動
二 業務の目的を大きく逸脱した言動
三 業務の目的を達成するための手段として不適当な言動
四 当該行為の回数・時間、当該言動の行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動
第4条関係
1 各省各庁の長の責務には、次に掲げるものが含まれる。
一 パワー・ハラスメントの防止等に関する方針、具体的な対策等を各省庁において部内規程等の文書の形で取りまとめ、職員に対して明示すること。
二 パワー・ハラスメントの原因や背景となる要因を解消するため、業務体制の整備など、職場や職員の実情に応じ、必要な措置を講ずること。
三 パワー・ハラスメントが職場で行われていないか、又はそのおそれがないか、勤務環境に十分な注意を払うこと。
二 パワー・ハラスメントの原因や背景となる要因を解消するため、業務体制の整備など、職場や職員の実情に応じ、必要な措置を講ずること。
三 パワー・ハラスメントが職場で行われていないか、又はそのおそれがないか、勤務環境に十分な注意を払うこと。
四 パワー・ハラスメントに関する苦情相談があった場合(次号に規定する場合を除く。)に、その内容に応じて、迅速かつ適切な解決を図ること。
五 職員が担当する行政サービスの利用者等からの言動で、当該行政サービスをめぐるそれまでの経緯やその場の状況により、その対応を打ち切りづらい中で行われるものであって、当該言動を受ける職員の属する省庁の業務の範囲や程度を明らかに超える要求をするものに関する苦情相談があった場合に、組織として対応し、その内容に応じて、迅速かつ適切に職員の救済を図ること。
六 パワー・ハラスメントが行われた場合には、再発防止に向けた措置を講ずること。
七 職員に対して、パワー・ハラスメントに関する苦情の申出、当該苦情等に係る調査への協力その他パワー・ハラスメントが行われた場合の職員の対応に起因して当該職員が職場において不利益を受けないことを周知すること。
六 パワー・ハラスメントが行われた場合には、再発防止に向けた措置を講ずること。
七 職員に対して、パワー・ハラスメントに関する苦情の申出、当該苦情等に係る調査への協力その他パワー・ハラスメントが行われた場合の職員の対応に起因して当該職員が職場において不利益を受けないことを周知すること。
2 この条の第3項の「不利益」には、勤務条件に関する不利益(昇任、配置換等の任用上の取扱い、昇格、昇給、勤勉手当等の給与上の取扱い等に関する不利益をいう。)のほか、同僚等から受ける誹謗や中傷など職員が受けるその他の不利益が含まれる。
第5条関係
1 この条の第3項の「管理又は監督の地位にある職員」とは、次に掲げる職員をいう。
一 一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号。以下「給与法」という。)第10条の2第1項に規定する官職を占める職員二 給与法別表第11指定職俸給表の適用を受ける職員
三 前2号に掲げる職員に相当するもの
2 この条の第3項の「良好な勤務環境を確保する」ことには、自らの権限を行使し得る範囲において、職員間で業務負担が偏らないようにすること、職場における意思疎通の円滑化を図ること等が含まれる。
3 この条の第3項の「苦情相談に係る問題を解決するため、迅速かつ適切に対処」することとは、自らの権限を行使し得る範囲において、苦情相談を受け、これに迅速かつ適切に対処することをいう。この場合において、必要に応じて相談員や人事当局との連携をとるものとする。
第6条関係
この条の第1項の人事院が定める指針は、別紙第1のとおりとする。
第7条関係
1 この条の第1項の「職員の意識の啓発及び知識の向上」を図る方法としては、パンフレット、ポスター等の啓発資料の配布、掲示又はイントラネットへの掲載、職員の意識調査の実施等が挙げられる。
2 この条の第2項の「求められる役割及び技能」には、管理又は監督の地位にある職員がパワー・ハラスメントに関する苦情相談に適切に対応するために必要な知識等が含まれる。
2 この条の第2項の「求められる役割及び技能」には、管理又は監督の地位にある職員がパワー・ハラスメントに関する苦情相談に適切に対応するために必要な知識等が含まれる。
第8条関係
1 苦情相談は、パワー・ハラスメントによる被害を受けた本人からのものに限らず、次のようなものも含まれる。
一 他の職員がパワー・ハラスメントを受けているのを見た職員からの相談
二 他の職員からパワー・ハラスメントをしている旨の指摘を受けた職員からの相談
三 部下等からパワー・ハラスメントに関する相談を受けた管理又は監督の地位にある職員からの相談
2 この条の第1項の苦情相談を受ける体制の整備については、次に定めるところによる。
一 本省庁(府、省又は外局として置かれる庁の内部部局その他これに相当する行政機関の部局をいう。)及び管区機関(数府県の地域を管轄区域とする相当の規模を有する地方支分部局その他これに相当する行政機関の部局をいう。)においては、それぞれ複数の相談員を置くことを基準とし、その他の機関においても、パワー・ハラスメントに関する職員からの苦情相談に対応するために必要な体制をその組織構成、各官署の規模等を勘案して整備するものとする。
二 相談員の指名は、パワー・ハラスメントに関する苦情相談に適切に対応するためには業務内容及びマネジメントについての理解が必要であることを踏まえて行うものとする。
三 相談員のうち少なくとも1名は、苦情相談を行う職員の属する課の長に対する指導及び人事当局との連携をとることのできる地位にある者をもって充てるものとする。
四 苦情相談には、苦情相談を行う職員の希望する性の相談員が同席できるような体制を整備するよう努めるものとする。
五 パワー・ハラスメントは、セクシュアル・ハラスメント(人事院規則10―10(セクシュアル・ハラスメントの防止等)第2条第1号に規定するセクシュアル・ハラスメントをいう。以下同じ。)又は妊娠、出産、育児若しくは介護に関するハラスメント(人事院規則10―15(妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等)第2条に規定する妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントをいう。)と複合的に生じることも想定されることから、セクシュアル・ハラスメント等に関する苦情相談を受ける体制と一体的に、パワー・ハラスメントに関する苦情相談を受ける体制を整備するなど、一元的に苦情相談を受けることのできる体制を整備するよう努めるものとする。
一 他の職員がパワー・ハラスメントを受けているのを見た職員からの相談
二 他の職員からパワー・ハラスメントをしている旨の指摘を受けた職員からの相談
三 部下等からパワー・ハラスメントに関する相談を受けた管理又は監督の地位にある職員からの相談
2 この条の第1項の苦情相談を受ける体制の整備については、次に定めるところによる。
一 本省庁(府、省又は外局として置かれる庁の内部部局その他これに相当する行政機関の部局をいう。)及び管区機関(数府県の地域を管轄区域とする相当の規模を有する地方支分部局その他これに相当する行政機関の部局をいう。)においては、それぞれ複数の相談員を置くことを基準とし、その他の機関においても、パワー・ハラスメントに関する職員からの苦情相談に対応するために必要な体制をその組織構成、各官署の規模等を勘案して整備するものとする。
二 相談員の指名は、パワー・ハラスメントに関する苦情相談に適切に対応するためには業務内容及びマネジメントについての理解が必要であることを踏まえて行うものとする。
三 相談員のうち少なくとも1名は、苦情相談を行う職員の属する課の長に対する指導及び人事当局との連携をとることのできる地位にある者をもって充てるものとする。
四 苦情相談には、苦情相談を行う職員の希望する性の相談員が同席できるような体制を整備するよう努めるものとする。
五 パワー・ハラスメントは、セクシュアル・ハラスメント(人事院規則10―10(セクシュアル・ハラスメントの防止等)第2条第1号に規定するセクシュアル・ハラスメントをいう。以下同じ。)又は妊娠、出産、育児若しくは介護に関するハラスメント(人事院規則10―15(妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等)第2条に規定する妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントをいう。)と複合的に生じることも想定されることから、セクシュアル・ハラスメント等に関する苦情相談を受ける体制と一体的に、パワー・ハラスメントに関する苦情相談を受ける体制を整備するなど、一元的に苦情相談を受けることのできる体制を整備するよう努めるものとする。
3 各省各庁の長は、相談員に対し、責任を持って苦情相談に対応するよう指導を徹底するとともに、苦情相談に関する知識、技能等を向上させるため、相談員に対する研修等を実施し、又は相談員を人事院の研修等に参加させるよう努めるものとする。
4 各省各庁の長は、相談員と連携して適切に苦情相談に対応できるよう、人事当局における相談体制の強化にも努めるものとする。
5 この条の第3項の「苦情相談を行った職員等」には、他の職員からパワー・ハラスメントを受けたとする職員、他の職員に対しパワー・ハラスメントをしたとされる職員その他の関係者が含まれる。
第9条関係
この条の第1項の人事院が定める指針は、別紙第2のとおりとする。
4 各省各庁の長は、相談員と連携して適切に苦情相談に対応できるよう、人事当局における相談体制の強化にも努めるものとする。
5 この条の第3項の「苦情相談を行った職員等」には、他の職員からパワー・ハラスメントを受けたとする職員、他の職員に対しパワー・ハラスメントをしたとされる職員その他の関係者が含まれる。
第9条関係
この条の第1項の人事院が定める指針は、別紙第2のとおりとする。
以 上
別紙第1
パワー・ハラスメントを防止しパワー・ハラスメントに関する問題を解決するために職員が認識すべき事項についての指針
第1 パワー・ハラスメントを防止し円滑な業務運営を行うために職員が認識すべき事項
1 基本的な心構え
職員は、パワー・ハラスメントに関する次の事項について十分認識しなければならない。
一 パワー・ハラスメントは、職員に精神的若しくは身体的な苦痛を与え、職員の人格若しくは尊厳を害し、又は職員の勤務環境を害するものであることを理解し、互いの人格を尊重し、パワー・ハラスメントを行ってはならないこと。
二 業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示、指導、調整等についてはパワー・ハラスメントに該当しないこと。一方、業務指示等の内容が適切であっても、その手段や態様等が適切でないものは、パワー・ハラスメントになり得ること。
三 部下の指導・育成は、上司の役割であること。また、指導に当たっては、相手の性格や能力を充分見極めた上で行うことが求められるとともに、言動の受け止め方は世代や個人によって異なる可能性があることに留意する必要があること。
四 自らの仕事への取組や日頃の振る舞いを顧みながら、他の職員と能動的にコミュニケーションをとることが求められること。
五 同一省庁の職員間におけるパワー・ハラスメントにだけ留意するのでは不十分であること。
例えば、職員がその職務に従事する際に接することとなる他省庁の職員との関係にも十分留意しなければならない。
六 職員以外の者に対してもパワー・ハラスメントに類する言動を行ってはならないこと。
2 パワー・ハラスメントになり得る言動
パワー・ハラスメントになり得る言動として、例えば、次のようなものがある。
一 暴力・傷害
ア 書類で頭を叩く。
イ 部下を殴ったり、蹴ったりする。
ウ 相手に物を投げつける。
二 暴言・名誉毀損・侮辱
ア 人格を否定するような罵詈雑言を浴びせる。
イ 他の職員の前で無能なやつだと言ったり、土下座をさせたりする。
ウ 相手を罵倒・侮辱するような内容の電子メール等を複数の職員宛てに送信する。
(注)「性的指向又は性自認に関する偏見に基づく言動」は、セクシュアル・ハラスメントに該当するが、職務に関する優越的な関係を背景として行われるこうした言動は、パワー・ハラスメントにも該当する。
三 執拗な非難
ア 改善点を具体的に指示することなく、何日間にもわたって繰り返し文書の書き直しを命じる。
イ 長時間厳しく叱責し続ける。
四 威圧的な行為
ア 部下達の前で、書類を何度も激しく机に叩き付ける。
イ 自分の意に沿った発言をするまで怒鳴り続けたり、自分のミスを有無を言わさず部下に責任転嫁したりする。
五 実現不可能・無駄な業務の強要
ア これまで分担して行ってきた大量の業務を未経験の部下に全部押しつけ、期限内に全て処理するよう厳命する。
イ 緊急性がないにもかかわらず、毎週のように土曜日や日曜日に出勤することを命じる。
ウ 部下に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせる。
六 仕事を与えない・隔離・仲間外し・無視
ア 気に入らない部下に仕事をさせない。
イ 気に入らない部下を無視し、会議にも参加させない。
ウ 課員全員に送付する業務連絡のメールを特定の職員にだけ送付しない。
エ 意に沿わない職員を他の職員から隔離する。
七 個の侵害
ア 個人に委ねられるべき私生活に関する事柄について、仕事上の不利益を示唆して干渉する。
イ 他人に知られたくない職員本人や家族の個人情報を言いふらす。
(注)第1号から第7号までの言動に該当しなければパワー・ハラスメントとならないという趣旨に理解されてはならない。
3 懲戒処分
パワー・ハラスメントは懲戒処分に付されることがある。職員以外の者に対し、パワー・ハラスメントに類する言動を行ったときも、信用失墜行為、国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行などに該当して、懲戒処分に付されることがある。
第2 職場の構成員として良好な勤務環境を確保するために認識すべき事項
勤務環境はその構成員である職員の協力の下に形成される部分が大きいことから、パワー・ハラスメントが行われることを防ぐため、職員は、次の事項について、積極的に意を用いるように努めなければならない。
1 パワー・ハラスメントについて問題提起する職員をいわゆるトラブルメーカーと見て問題を真摯に取り上げないこと、又はパワー・ハラスメントに関する問題を当事者間の個人的な問題として片付けることがあってはならないこと。
職場におけるミーティングを活用することなどにより解決することができる問題については、問題提起を契機として、良好な勤務環境の確保のために皆で取り組むことを日頃から心掛けることが必要である。
2 職場からパワー・ハラスメントに関する問題の行為者や被害者を出さないようにするために、周囲に対する気配りをし、必要な行動をとること。
具体的には、次の事項について十分留意して必要な行動をとる必要がある。
一 パワー・ハラスメントやパワー・ハラスメントに当たるおそれがある言動が見受けられる場合は、職場の同僚として注意を促すこと。
二 被害を受けていることを見聞きした場合には、声をかけて相談に乗ること。
3 パワー・ハラスメントを直接に受けていない者も気持ちよく勤務できる環境をつくるために、パワー・ハラスメントと思われる言動が行われている状況について上司等に相談するなどの方法をとることをためらわないこと。
第3 自分が受けている言動がパワー・ハラスメントではないかと考える場合において職員に望まれる事項
職員は、自分が受けている言動がパワー・ハラスメントではないかと考える場合には、その被害を深刻にしないために、次の事項について認識しておくことが望まれる。
1 一人で抱え込まずに、相談窓口や信頼できる人等に相談すること
問題を自分一人で抱え込まずに、職場の同僚や知人等身近な信頼できる人に相談することが大切である。各職場内において解決することが困難な場合には、内部又は外部の相談機関に相談する方法を考える。なお、相談するに当たっては、パワー・ハラスメントであると考えられる言動が行われた日時、内容等について記録しておくことが望ましい。
2 当事者間の認識の相違を解消するためのコミュニケーション
パワー・ハラスメントは、相手に自覚がないことも多く、よかれと思っての言動であることもある。相手に自分の受け止めを伝えたり、相手の真意を確認したりするなど、話し合い、認識の違いを埋めることで事態の深刻化を防ぎ、解決がもたらされることがあることに留意すべきである。
職員は、パワー・ハラスメントに関する次の事項について十分認識しなければならない。
一 パワー・ハラスメントは、職員に精神的若しくは身体的な苦痛を与え、職員の人格若しくは尊厳を害し、又は職員の勤務環境を害するものであることを理解し、互いの人格を尊重し、パワー・ハラスメントを行ってはならないこと。
二 業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示、指導、調整等についてはパワー・ハラスメントに該当しないこと。一方、業務指示等の内容が適切であっても、その手段や態様等が適切でないものは、パワー・ハラスメントになり得ること。
三 部下の指導・育成は、上司の役割であること。また、指導に当たっては、相手の性格や能力を充分見極めた上で行うことが求められるとともに、言動の受け止め方は世代や個人によって異なる可能性があることに留意する必要があること。
四 自らの仕事への取組や日頃の振る舞いを顧みながら、他の職員と能動的にコミュニケーションをとることが求められること。
五 同一省庁の職員間におけるパワー・ハラスメントにだけ留意するのでは不十分であること。
例えば、職員がその職務に従事する際に接することとなる他省庁の職員との関係にも十分留意しなければならない。
六 職員以外の者に対してもパワー・ハラスメントに類する言動を行ってはならないこと。
2 パワー・ハラスメントになり得る言動
パワー・ハラスメントになり得る言動として、例えば、次のようなものがある。
一 暴力・傷害
ア 書類で頭を叩く。
イ 部下を殴ったり、蹴ったりする。
ウ 相手に物を投げつける。
二 暴言・名誉毀損・侮辱
ア 人格を否定するような罵詈雑言を浴びせる。
イ 他の職員の前で無能なやつだと言ったり、土下座をさせたりする。
ウ 相手を罵倒・侮辱するような内容の電子メール等を複数の職員宛てに送信する。
(注)「性的指向又は性自認に関する偏見に基づく言動」は、セクシュアル・ハラスメントに該当するが、職務に関する優越的な関係を背景として行われるこうした言動は、パワー・ハラスメントにも該当する。
三 執拗な非難
ア 改善点を具体的に指示することなく、何日間にもわたって繰り返し文書の書き直しを命じる。
イ 長時間厳しく叱責し続ける。
四 威圧的な行為
ア 部下達の前で、書類を何度も激しく机に叩き付ける。
イ 自分の意に沿った発言をするまで怒鳴り続けたり、自分のミスを有無を言わさず部下に責任転嫁したりする。
五 実現不可能・無駄な業務の強要
ア これまで分担して行ってきた大量の業務を未経験の部下に全部押しつけ、期限内に全て処理するよう厳命する。
イ 緊急性がないにもかかわらず、毎週のように土曜日や日曜日に出勤することを命じる。
ウ 部下に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせる。
六 仕事を与えない・隔離・仲間外し・無視
ア 気に入らない部下に仕事をさせない。
イ 気に入らない部下を無視し、会議にも参加させない。
ウ 課員全員に送付する業務連絡のメールを特定の職員にだけ送付しない。
エ 意に沿わない職員を他の職員から隔離する。
七 個の侵害
ア 個人に委ねられるべき私生活に関する事柄について、仕事上の不利益を示唆して干渉する。
イ 他人に知られたくない職員本人や家族の個人情報を言いふらす。
(注)第1号から第7号までの言動に該当しなければパワー・ハラスメントとならないという趣旨に理解されてはならない。
3 懲戒処分
パワー・ハラスメントは懲戒処分に付されることがある。職員以外の者に対し、パワー・ハラスメントに類する言動を行ったときも、信用失墜行為、国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行などに該当して、懲戒処分に付されることがある。
第2 職場の構成員として良好な勤務環境を確保するために認識すべき事項
勤務環境はその構成員である職員の協力の下に形成される部分が大きいことから、パワー・ハラスメントが行われることを防ぐため、職員は、次の事項について、積極的に意を用いるように努めなければならない。
1 パワー・ハラスメントについて問題提起する職員をいわゆるトラブルメーカーと見て問題を真摯に取り上げないこと、又はパワー・ハラスメントに関する問題を当事者間の個人的な問題として片付けることがあってはならないこと。
職場におけるミーティングを活用することなどにより解決することができる問題については、問題提起を契機として、良好な勤務環境の確保のために皆で取り組むことを日頃から心掛けることが必要である。
2 職場からパワー・ハラスメントに関する問題の行為者や被害者を出さないようにするために、周囲に対する気配りをし、必要な行動をとること。
具体的には、次の事項について十分留意して必要な行動をとる必要がある。
一 パワー・ハラスメントやパワー・ハラスメントに当たるおそれがある言動が見受けられる場合は、職場の同僚として注意を促すこと。
二 被害を受けていることを見聞きした場合には、声をかけて相談に乗ること。
3 パワー・ハラスメントを直接に受けていない者も気持ちよく勤務できる環境をつくるために、パワー・ハラスメントと思われる言動が行われている状況について上司等に相談するなどの方法をとることをためらわないこと。
第3 自分が受けている言動がパワー・ハラスメントではないかと考える場合において職員に望まれる事項
職員は、自分が受けている言動がパワー・ハラスメントではないかと考える場合には、その被害を深刻にしないために、次の事項について認識しておくことが望まれる。
1 一人で抱え込まずに、相談窓口や信頼できる人等に相談すること
問題を自分一人で抱え込まずに、職場の同僚や知人等身近な信頼できる人に相談することが大切である。各職場内において解決することが困難な場合には、内部又は外部の相談機関に相談する方法を考える。なお、相談するに当たっては、パワー・ハラスメントであると考えられる言動が行われた日時、内容等について記録しておくことが望ましい。
2 当事者間の認識の相違を解消するためのコミュニケーション
パワー・ハラスメントは、相手に自覚がないことも多く、よかれと思っての言動であることもある。相手に自分の受け止めを伝えたり、相手の真意を確認したりするなど、話し合い、認識の違いを埋めることで事態の深刻化を防ぎ、解決がもたらされることがあることに留意すべきである。
別紙第2
パワー・ハラスメントに関する苦情相談に対応するに当たり留意すべき事項についての指針
第1 基本的な心構え
職員からの苦情相談に対応するに当たっては、相談員は次の事項に留意する必要がある。
1 被害者を含む当事者にとって適切かつ効果的な対応は何かという視点を常に持つこと。
2 事態を悪化させないために、迅速な対応を心掛けること。
3 関係者のプライバシーや名誉その他の人権を尊重するとともに、知り得た秘密を厳守すること。
第2 苦情相談の事務の進め方
1 苦情相談を受ける際の相談員の体制等
一 苦情相談を受ける際には、原則として2人の相談員で対応すること。
二 苦情相談を受けるに当たっては、苦情相談を行う職員(以下「相談者」という。)の希望する性の相談員が同席するよう努めること。
三 相談員は、苦情相談に適切に対応するために、相互に連携し、協力すること。
四 実際に苦情相談を受けるに当たっては、その内容を相談員以外の者に見聞されないよう周りから遮断した場所で行うこと。
五 行為者とされる者又は第三者からの聴取を行う場合は、相談者の了解を確実に得た上で人事当局と連携して対応すること。
五 行為者とされる者又は第三者からの聴取を行う場合は、相談者の了解を確実に得た上で人事当局と連携して対応すること。
2 相談者から事実関係等を聴取するに当たり留意すべき事項
相談者から事実関係等を聴取するに当たっては、次の事項に留意する必要がある。
一 相談者の求めるものを把握すること。
将来の言動の抑止等、今後も発生が見込まれる言動への対応を求めるものであるのか、又は喪失した利益の回復、謝罪要求等過去にあった言動に対する対応を求めるものであるのかについて把握する。
二 どの程度の緊急性があるのかについて把握すること。
相談者の心身の状態等に鑑み、苦情相談への対応に当たりどの程度の緊急性があるのかを把握する。
三 相談者の主張等に真摯に耳を傾け丁寧に話を聴くこと。
特に相談者が被害者の場合、パワー・ハラスメントを受けた心理的な影響から必ずしも理路整然と話すとは限らない。むしろ脱線することも十分想定されるが、事実関係を把握することは極めて重要であるので、忍耐強く聴くよう努める。また、相談員自身の評価を差し挟むことはせず、相談者の心情に配慮し、その主張等を丁寧に聴き、相談者が認識する事実関係を把握することが必要である。
四 事実関係については、次の事項を把握すること。
(1) 当事者(パワー・ハラスメントの被害者及び行為者とされる者)間の関係
(2) 問題とされる言動が、いつ、どこで、どのように行われたか。
(3) 相談者は、行為者とされる者に対してどのような対応をとったか。
(4) 管理又は監督の地位にある職員等に対する相談を行っているか。
なお、これらの事実を確認する場合、相談者が主張する内容については、当事者のみが知り得るものか、又は他に目撃者はいるのかを把握する。
五 聴取した事実関係等を相談者に確認すること。
聞き間違えの修正並びに聞き漏らした事項及び言い忘れた事項の補充ができるので、聴取事項を書面で示したり、復唱したりするなどして相談者に確認する。
六 聴取した事実関係等については、必ず記録して保存しておくとともに、当該記録を厳重に管理すること。
3 行為者とされる者からの事実関係等の聴取
一 原則として、行為者とされる者から事実関係等を聴取する必要がある。ただし、パワー・ハラスメントが比較的軽微なもの又は行為者とされる者に改善の余地があるもののパワー・ハラスメントとまではいえないようなものであり、対応に緊急性がない場合などは、管理又は監督の地位にある職員の観察又は指導による対応が適当な場合も考えられるので、その都度適切な方法を選択して対応する。
二 行為者とされる者から事実関係等を聴取する場合には、行為者とされる者に対して十分な弁明の機会を与える。
三 行為者とされる者から事実関係等を聴取するに当たっては、その主張に真摯に耳を傾け丁寧に話を聴く、聴取した事実関係等を行為者とされる者に確認するなど、相談者から事実関係等を聴取する際の留意事項を参考にし、適切に対応する。
4 第三者からの事実関係等の聴取
パワー・ハラスメントについて当事者間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合などは、第三者から事実関係等を聴取することも必要である。
この場合、相談者から事実関係等を聴取する際の留意事項を参考にし、適切に対応する。
5 相談者に対する説明
苦情相談に関し、具体的にとられた対応については、相談者に説明する。
第3 問題処理のための対応の在り方
1 基本的事項
相談員が、苦情相談に対応するに当たっては、第2の第2項を踏まえ、相談者からの話を丁寧に聴きながら適切に対処していく必要がある。また、対応に当たって、相談員が相談者に対しパワー・ハラスメントに該当するかどうかに関する心証を伝えてはならない。
2 事案に応じた対処
対応に当たっては、パワー・ハラスメントに該当する蓋然性の程度に応じて次のような対処が考えられる。
一 相談者の話が事実であれば明らかにパワー・ハラスメントに該当すると思料される事案
相談者の了解を得て、速やかに事案を人事当局に知らせる必要がある。人事当局又は相談者の意向によっては、相談員も事実関係等の聴取の実施等に引き続き協力する。なお、相談者が人事当局に知らせることを望んでいない場合でも、相談者が自傷行為に及ぶ可能性がある場合、深刻な状況にあるとうかがわれる場合など、緊急性が高いと考えられる場合には、相談者自身は人事当局に知らせることを望んでいない旨も含めて、人事当局に連絡する必要がある。
二 相談者の話の内容が事実であるとしてもパワー・ハラスメントに該当するかどうか判断が難しい事案
(注)以下の対処は、相談者がこれらの対処を行うことを希望していることが前提であり、相談者の意向を確認せずに相談員限りの判断で行ってはならない。
⑴ 当事者双方の主張を公平かつ丁寧に聴き、隔たりを埋める。
(例)
人事当局と連携して、行為者とされる者からの事実関係等の聴取及びそれを踏まえた相談者からの事実関係等の聴取を実施する(必要があればそれぞれ複数回実施する。)。その際、過去の事実関係を確認していずれの言い分が正しいのかを判定することを目指すのではなく、双方の主張を聴いて、認識の隔たりを埋めつつ、将来に向けて双方がとるべき対応について共通認識に到達することを目指す。
人事当局と連携して、行為者とされる者からの事実関係等の聴取及びそれを踏まえた相談者からの事実関係等の聴取を実施する(必要があればそれぞれ複数回実施する。)。その際、過去の事実関係を確認していずれの言い分が正しいのかを判定することを目指すのではなく、双方の主張を聴いて、認識の隔たりを埋めつつ、将来に向けて双方がとるべき対応について共通認識に到達することを目指す。
⑵ 第三者からの事実関係等の聴取を実施し、その結果を踏まえ、人事当局としての判断を示す。
(例)
⑴の対応を行っても当事者双方が共通認識に到達することが困難な場合には、第三者からの事実関係等の聴取を実施して、事実関係を明らかにした上で、人事当局としての判断を示し、必要な措置を行う。この段階においては、事案への対応は相談員から人事当局に完全に移行していることが多いと考えられるが、人事当局又は相談者の意向によっては、相談員も事実関係等の聴取の実施等に引き続き協力する。
⑴の対応を行っても当事者双方が共通認識に到達することが困難な場合には、第三者からの事実関係等の聴取を実施して、事実関係を明らかにした上で、人事当局としての判断を示し、必要な措置を行う。この段階においては、事案への対応は相談員から人事当局に完全に移行していることが多いと考えられるが、人事当局又は相談者の意向によっては、相談員も事実関係等の聴取の実施等に引き続き協力する。
三 相談者の話が事実であるとしても明らかにパワー・ハラスメントには該当しないと思料される事案
相談者の話の内容からすれば、明らかにパワー・ハラスメントには該当しないと思料される場合であっても、相談者が組織的対応を求めているときには、相談者の了解を得て、事案を人事当局に知らせる必要がある。一方、相談者が、相談員限りでの対処や相談員からのアドバイスを望んでいる場合には、業務遂行やコミュニケーションの在り方の見直しなどによる解決を助言することも考えられる。