人事院規則10―17(カスタマー・ハラスメントの防止等)の運用について
(令和8年4月15日職職―114)
(人事院事務総長発)
 
 
 
 標記について下記のとおり定めたので、令和8年10月1日以降は、これによってください。
 
 
第2条関係
1 この条の「職員の職務に係る行政サービスの利用者等」とは、対面であるか否かにかかわらず、職員が従事する職務に関し当該職員に関わる全ての者をいう。ただし、同一省庁内の職員は、原則として含まないものとする。
2 この条の「職員が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超える」言動とは、社会通念に照らし、この条に規定する行政サービスの利用者等(以下「行政サービスの利用者等」という。)の言動の内容が職員の従事する業務の内容からして相当性を欠くもの又は手段や態様が相当でないものをいう。なお、このような言動に該当するか否かは、次に掲げる事項に留意した上で、具体的な状況(言動の目的、当該言動を受けた職員の問題行動の有無並びにその内容及び程度その他当該言動が行われた経緯及びその状況、業務の内容及び性質、当該言動の態様、頻度及び継続性、職員の属性及び心身の状況、当該言動の行為者との関係性等)を踏まえて総合的に判断するものとする。
 一  「言動の内容」又は「手段や態様」の一方のみが社会通念上許容される範囲を超える場合でも該当することがあり得ること。
 二  組織又は職員の側の不適切な対応が当該言動の原因や背景となっている場合もあること。  
3 行政サービスの利用者等からの苦情の全てがカスタマー・ハラスメントに該当するわけではなく、客観的に見て、社会通念上許容される範囲で行われたものは、カスタマー・ハラスメントには当たらない。
4 この条の「精神的若しくは身体的な苦痛を与えられ、職員の人格若しくは尊厳が害され、又は職員の勤務環境が害される」の判断に当たっては、言動の頻度や継続性を考慮するが、強い精神的又は身体的苦痛を与える態様の言動である場合には、1回の言動であっても該当し得ることに留意するものとする。
5 カスタマー・ハラスメントには、対面で行われるもののみならず、電話やSNS等のインターネット上において行われるものも含まれる。
第4条関係
 1 各省各庁の長の責務には、次に掲げるものが含まれる。
 一 カスタマー・ハラスメントの防止等に関する方針、具体的な対策等を各省庁において部内規程等の文書の形で取りまとめ、職員に対して明示すること。この場合において、対策等については、カスタマー・ハラスメントが生じ、その場で職員から人事院規則10―17(カスタマー・ハラスメントの防止等)第5条第3項に規定する管理又は監督の地位にある職員 (以下「管理監督者」という。)等に報告があった場合や管理監督者等が現認した場合は、当該管理監督者等が直ちに適切な対応を行うことが必要な場合もあることを踏まえ、その内容を定めること。
 二 カスタマー・ハラスメントには毅然とした態度で対応し、職員を保護する旨の方針を明確化し、職員に周知・啓発すること。
 三 カスタマー・ハラスメントに関する苦情相談があった場合に、その内容に応じて、迅速かつ適切な解決を図ること。
 四 カスタマー・ハラスメントが生じた場合には、再発防止に向けた措置を講ずること。
 五 カスタマー・ハラスメントを生じさせる言動の抑止のための措置として、職員に対し過度な要求を繰り返すなど特に悪質と考えられるものへの対処の方針をあらかじめ定め、職員に周知するとともに、当該方針において定めた対処を行うことができる体制を整備すること。
 六 職員に対して、カスタマー・ハラスメントに関する苦情の申出、当該苦情等に係る調査への協力その他カスタマー・ハラスメントが生じた場合の職員の対応に起因して当該職員が職場において不利益を受けないことを周知すること。  
2 この条の第3項の「不利益」には、勤務条件に関する不利益(昇任、配置換等の任用上の取扱い、昇格、昇給、勤勉手当等の給与上の取扱い等に関する不利益をいう。)のほか、同僚等から受ける誹謗や中傷など職員が受けるその他の不利益が含まれる。
第5条関係
 1 この条の第3項の「管理又は監督の地位にある職員」とは、次に掲げる職員をいう。
 一  一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号。以下「給与法」という。)第10条の2第1項に規定する官職を占める職員
 二 給与法別表第11指定職俸給表の適用を受ける職員
 三 前2号に掲げる職員に相当するもの  
2 この条の第3項の「必要な措置」には、カスタマー・ハラスメントが生じた場合において、管理監督者がその場で事実関係を確認したり対処したりすること及び管理監督者が事案の内容や状況に応じてカスタマー・ハラスメントの被害者の上司等に適切な対応をさせることが含まれる。  
3 この条の第3項の「苦情相談に係る問題を解決するため、迅速かつ適切に対処」することとは、自らの権限を行使し得る範囲において、苦情相談を受け、これに迅速かつ適切に対処することをいう。この場合において、必要に応じて相談員や関係当局との連携をとるものとする。
第6条関係
  この条の第1項の人事院が定める指針は、別紙第1のとおりとする。
第7条関係
1 この条の第1項の「職員の意識の啓発及び知識の向上」を図る方法としては、パンフレット、ポスター等の啓発資料の配布、掲示又はイントラネットへの掲載、職員の意識調査の実施等が挙げられる。
2 各省各庁の長は、カスタマー・ハラスメントに関する事項の理解が特に必要と認められる職員に対し、業務の特性等に応じた研修を実施するよう努めるものとする。
第8条関係
1 苦情相談は、カスタマー・ハラスメントによる被害を受けた本人からのものに限らず、次のようなものも含まれる。
 一 他の職員についてカスタマー・ハラスメントが生じているのを見た職員からの相談
 二 部下等からカスタマー・ハラスメントに関する相談を受けた管理監督者からの相談
 三 他の職員から、カスタマー・ハラスメントを生じさせる言動をしている旨の指摘を受けた職員からの相談  
2 この条の第1項の苦情相談を受ける体制の整備については、次に定めるところによる。
 一 本省庁(府、省又は外局として置かれる庁の内部部局その他これに相当する行政機関の部局をいう。)及び管区機関(数府県の地域を管轄区域とする相当の規模を有する地方支分部局その他これに相当する行政機関の部局をいう。)においては、それぞれ複数の相談員を置くことを基準とし、その他の機関においても、カスタマー・ハラスメントに関する職員からの苦情相談に対応するために必要な体制をその組織構成、各官署の規模等を勘案して整備するものとする。相談員の配置の方法の例としては、管理監督者等を相談員として定めることや、職場における他のハラスメントの相談窓口と一体的に相談窓口を設けることが挙げられるが、各部局の業務の特性等に応じた適切な相談体制を整備することに留意するものとする。
 二 相談員のうち少なくとも1名は、苦情相談を行う職員の属する課の長に対する指導及び関係当局との連携をとることのできる地位にある者をもって充てるものとする。  
3 各省各庁の長は、相談員に対し、責任を持って苦情相談に対応するよう指導を徹底するとともに、苦情相談に関する知識、技能等を向上させるため、 相談員に対する研修等を実施し、又は相談員を人事院の研修等に参加させるよう努めるものとする。  
4 この条の第3項の「苦情相談を行った職員等」には、他の職員からカスタマー・ハラスメントに係る言動を受けたとする職員、他の職員に対しカスタマー・ハラスメントに係る言動を行ったとされる職員その他の関係者が含まれる。
第9条関係
  この条の第1項の人事院が定める指針は、別紙第2のとおりとする。

 

以   上


 
別紙第1
  カスタマー・ハラスメントに関する問題等に適切に対応するために職員が認識すべき事項についての指針
 
第1 カスタマー・ハラスメントに関して職員が認識すべき事項
 1 カスタマー・ハラスメントになり得るもの
  カスタマー・ハラスメントになり得るものとして、例えば、次のようなものがある。 
一 言動の内容が社会通念上許容される範囲を超えるもの
  ⑴ そもそも要求に理由がない又は行政サービス等と全く関係のない要求
 性的な要求や、職員のプライバシーに関わる要求をすること。
  ⑵ 対応が著しく困難な又は対応が不可能な要求
 法令に違反するおそれのある事務の処理を行うことを要求すること。
 二 手段や態様が社会通念上許容される範囲を超えるもの
⑴ 身体的な攻撃(暴行、傷害等)
 ア 殴る、蹴る、叩く等の暴行を行うこと。
 イ 物を投げつけること。
 ウ わざとぶつかること。
 エ つばを吐きかけること。
⑵ 精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要等)
   ア 庁舎の物を壊すことをほのめかす発言やSNS等のインターネット上へ悪評を投稿することをほのめかす発言によって職員を脅すこと。
   イ SNS等のインターネット上へ職員のプライバシーに係る情報の投稿等をすること。
   ウ 職員の人格を否定するような言動(職員の性的指向・ジェンダーアイデンティティに関する侮辱的な言動を含む。)を行うこと。
   エ 土下座を強要すること。
   オ 盗撮や無断での撮影をすること。
   カ 職員の性的指向・ジェンダーアイデンティティ等の機微な個人情報について、当該職員の了解を得ずに他の者に暴露すること又は当該職員が開示することを強要する若しくは禁止すること。
  ⑶ 威圧的な言動
ア 大きな声をあげて職員や周囲を威圧すること。
   イ 反社会的な言動を行うこと。
  ⑷ 継続的、執拗な言動
ア 同様の質問を執拗に繰り返すこと。
イ 当初の話からのすり替え、揚げ足取り、執拗な責め立てをすること。
ウ 同様の電子メール等を執拗に繰り返し送り付けること。
  ⑸ 拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)
 長時間にわたる居座りや電話で職員を拘束すること。
(注)第1号及び第2号のものに該当しなければカスタマー・ハラスメントとならないという趣旨に理解されてはならない。
 2 対処の内容
  カスタマー・ハラスメントが生じた際の対処の内容の例としては、次のようなものがある。ただし、これらはあくまで例示であって、事案の内容や状況に応じて適切に対処する必要がある。
 一 職員から管理監督者等に直ちに報告し、その場の対応の方針について指示を仰ぐこと。
 二 可能な限り職員を一人で対応させないこと。また、必要に応じて当該職員に代わって管理監督者等が対応すること。
 三 行政サービスの利用者等とのやり取りを録音・録画すること。なお、録音・録画に当たっては個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「個人情報保護法」という。)等を遵守し、行政サービスの利用者等の個人情報を適切に取り扱うこと。
 四 職員から十分な説明を行った上で、なお繰り返しの要求が続く場合には、一定の時間の経過をもって退去を求めたり、電話を切ったりすること。
 五 暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動については、警察へ通報すること。
 六 現場対応が困難な場合においては、本省庁等へ情報共有を行い、指示を仰ぐこと。
 七 法的な手続が必要な場合には、弁護士へ相談すること。
 3 特に悪質と考えられるものへの対処の内容
  職員に対し過度な要求を繰り返すなど特に悪質と考えられるカスタマー・ ハラスメントが生じた際の対処の内容の例としては、次のようなものがある。ただし、これらはあくまで例示であって、業務の特性等により必要な対応が異なる場合があることに留意しつつ、それぞれの状況に応じて適切に対処する必要がある。
 一 暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動については、警察へ通報すること。
 二 行為者に対して警告文を発出すること。
 三 行為者に対して庁舎等への出入りを禁止すること。
 四 民事保全法(平成元年法律第91号)に基づく仮処分命令を申し立てること。
 4 留意事項
    職員は、カスタマー・ハラスメントに関する次の事項について留意しなければならない。
 一 カスタマー・ハラスメントは、行政サービスの利用者等とのコミュニケーションの不足が原因や背景となって生じることもあること。
 二 職員が担当する行政サービスをよく理解し、行政サービスの利用者等への対応力の向上を図ることは、カスタマー・ハラスメントの被害者になることを防止する上で重要であること。
 三 行政サービスの利用者等の権利や、行政サービスが途絶すると行政サービスの利用者等の生命や心身の健康に重大な影響が及ぶ場合等があることに留意して適切に対応する必要があること。
 四 障害者から職員に対して、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「障害者差別解消法」という。)で禁止されている不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を必要としている旨の意思を表明すること自体は、カスタマー・ハラスメントには当たらず、障害者差別解消法に基づき、その実施に伴う負担が過重でないときは、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならないこと。また、同法に基づく「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」に即して、行政サービスの利用者等との建設的対話を重ねるなど、事案に応じて適切に対応する必要があること。
 5 関連事項
  職員は、その職務において、カスタマー・ハラスメントを生じさせる言動のみならず、職員以外の者に対してカスタマー・ハラスメントを生じさせる言動に類する言動を行ってはならないことを十分認識しなければならない。
 6 懲戒処分
  職員が、その職務において、カスタマー・ハラスメントを生じさせる言動を行ったとき又は職員以外の者に対しカスタマー・ハラスメントを生じさせる言動に類する言動を行ったときは、信用失墜行為、国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行などに該当して、懲戒処分に付されることがある。
第2 カスタマー・ハラスメントが生じた場合において職員に望まれる事項
 カスタマー・ハラスメントが生じた場合には、その被害を深刻にしないために、問題を自分一人で抱え込まずに、カスタマー・ハラスメントが生じている状況について、上司等に相談するなどの方法をとることをためらわないことや、各職場内において解決することが困難な場合には、内部又は外部の相談機関に相談する方法を考えることが大切である。


 
別紙第2
  カスタマー・ハラスメントに関する苦情相談に対応するに当たり留意すべき事項についての指針
 
第1 基本的な心構え
   職員からの苦情相談に対応するに当たっては、相談員は次の事項に留意する必要がある。
 1 被害者にとって適切かつ効果的な対応は何かという視点を常に持つこと。
 2 事態を悪化させないために、迅速な対応を心掛けること。
3 関係者のプライバシーや名誉その他の人権を尊重するとともに、知り得た秘密を厳守すること。
第2 苦情相談の事務の進め方
1 相談者から事実関係等を聴取するに当たり留意すべき事項
 相談者から事実関係等を聴取するに当たっては、次の事項に留意する必要がある。
 一 相談者の求めるものを把握すること。
 将来の言動の抑止等、今後も発生が見込まれる言動への対応を求めるものであるのか、又は過去にあった言動により発生した被害への対処等を求めるものであるのかについて把握する。
 二 どの程度の緊急性があるのかについて把握すること。
 相談者の心身の状態等に鑑み、苦情相談への対応に当たりどの程度の緊急性があるのかを把握する。
 三 相談者の主張等に真摯に耳を傾け丁寧に話を聴くこと。
 特に相談者が被害者の場合、カスタマー・ハラスメントに係る言動を受けた心理的な影響から必ずしも理路整然と話すとは限らない。むしろ脱線することも十分想定されるが、事実関係を把握することは極めて重要であるので、忍耐強く聴くよう努める。また、相談員自身の評価を差し挟むことはせず、相談者の心情に配慮し、その主張等を丁寧に聴き、相談者が認識する事実関係を把握することが必要である。
 四 聴取した事実関係等については、記録して保存しておくこと。
 2 周囲の職員からの事実関係等の聴取等
  事実の確認が十分にできないと認められる場合などは、周囲の職員から事実関係等を聴取したり、録音・録画等の客観的な証拠を確認したりする等の措置を講ずることも必要である。
 この場合、相談者から事実関係等を聴取する際の留意事項を参考にし、適切に対応するとともに、録音・録画等の客観的な証拠を確認するに当たっては、個人情報保護法等を遵守し、行政サービスの利用者等の個人情報を適切に取り扱う。
 3 行為者とされる者からの事実関係等の聴取
  必要かつ可能な場合には行為者とされる者からも事実関係を聴取することが考えられる。
 4 相談者に対する説明
  苦情相談に関し、具体的にとられた対応については、相談者に説明する。
Back to top