第35回(令和4年) 人事院総裁賞「職域部門」受賞

法務省 広島刑務所 尾道刑務支所 有井構外泊込作業場

  塀などの物的戒護がない開放的処遇施設において、50年もの間、逃走事故を発生させることなく、受刑者に対し、地域社会の一員として受け入れられ、認められる経験を積ませることで、「犯罪に戻らない、戻さない」社会づくりに大きく貢献したことが認められました。

 
 
 
 

☆はじめに、有井構外泊込作業場ではどのような業務を行っているのでしょうか。

有井構外泊込作業場は、広島刑務所尾道刑務支所が昭和38年から実施していた通役作業(通勤して実施する刑務作業)先である造船工場の敷地内に、同43年に建築された鉄筋二階建ての寮舎(誠心寮)です。
 同作業場には受刑者と刑務官が泊り込み、刑務官が監視する中、受刑者が同工場内へ通勤して鋼材加工の作業を実施していますが、同作業場には塀などの物的戒護がないので、勤務する刑務官は、逃走等の保安事故の防止を念頭に、就業する受刑者の作業及び日常生活の指導監督を行うほか、出所後の生活設計に関する指導なども行います。そのほか、毎月1回ボランティア活動として、受刑者を引率して除草や清掃作業も行っています。

 

☆有井構外泊込作業場は、塀などの物的戒護がない開放的処遇施設ですが、矯正施設としてどのような役割が求められているのでしょうか。

受刑者が再び犯罪に手を染めないよう、健全な社会生活を営む能力を培わせるために、開放的かつ自由度の高い環境下で、しっかりと自分で考えて正しい行動ができるように指導していくことが第一に求められていると考えています。
 また、数少ない開放的施設として50年以上逃走事故を発生させていないことに加えて、当作業場を経験した出所者の再犯率が低いことは、「犯罪に戻らない、戻さない」社会づくりを実現するためのモデルケースであり、今後も継続していけるよう日々の指導を実施していきたいと考えます。

 

☆開放的処遇施設という特殊な環境下で職務を遂行する中で、特に御苦労の多い点や御留意されている点をお聞かせください。

やはりいつでも受刑者が逃走できる環境にあるという緊張感を常に持っています。万が一逃走事故が起きれば、周辺地域への影響は計り知れませんし、これまで長年かけて築いてきた企業や地域との関係性が崩れてしまいます。そうならないためにも、常日頃から、受刑者への声掛けや面接を通して信頼関係を築き、彼らの自主・自立の精神が培われていくよう指導しています。
 また、近年の受刑者の減少等により、当作業場に就業する受刑者の確保に苦慮しており、少ない人員で無理をして事故が起きることがないよう、契約企業と作業量などを協議しながら日々の作業を実施しています。

 

☆今後の業務への抱負をお聞かせください。

今後も逃走事故を発生させないよう、日々の指導を積み重ねていくことはもちろんですが、受刑者が再犯に至らず社会生活を長く継続できるよう、日々彼らと真正面から向き合って、健全な社会人として当作業場から送り出していければと思います。
 また、今回の受賞に当たっては、地域の皆様の御理解と協力企業のバックアップがあったからこその栄誉だと考えております。地域の皆様に受け入れていただいていることに感謝しつつ、今後も皆様の御期待に背くことのないよう地道な努力を重ね、これまで以上に協力企業への貢献も続けていきたいと考えています。

 

☆最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。

当作業場においては、塀などの物的戒護のない自由度の高い環境の中で、受刑者が日夜、自己の犯した罪と向き合い、社会復帰に向けて前向きに努力しています。一般社会に近い環境の中で受刑生活を送ることは、自主性を育み、再犯・再非行の防止に大変有意義なことと自負しています。
 今後も、彼らが円滑な社会復帰ができるよう、必要な援助を行うことに尽力し続け、犯罪のない安心・安全な社会づくりに貢献していく所存です。

 
▲寮内の居室の様子
 
▲工場の様子
 
▲工場の様子
 
 
 
 

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