第35回(令和4年) 人事院総裁賞「職域部門」受賞

気象庁 大気海洋部 業務課 父島気象観測所

  明治29年以降、終戦後の米国統治下にあった期間を除き気象業務を継続。厳しい生活環境の中で、北西太平洋上の観測空白域を埋める数少ない観測点として観測業務を実施。貴重な気象データの収集や、自治体への情報提供を通じ、公務の信頼の確保と向上に大きく貢献したことが認められました。

 
 
 
 

☆はじめに、父島気象観測所ではどのような業務を行っているのでしょうか。

父島気象観測所は、東京から南約980㎞の東京都小笠原村父島にあります。地上の気温、風、雨量などを観測する地上気象観測、地上から高度約30㎞までの上空の気温、風、湿度などを観測する高層気象観測を行っています。また、地震、潮位等の観測装置や通信装置の保守点検、各種気象情報の解説等を行っています。

 

☆明治29年の観測開始から、米軍統治下の時期を除き気象観測を継続されていますが、日々の業務の中で、特に御苦労の多い点や御留意されている点をお聞かせください。

本土と父島とを結ぶ交通は、週1便運航し、片道24時間かかる船しかありません。島内には父島気象観測所で使用する機器の修理などを行える専門業者がなく、機器が故障した場合は、部品調達や修理対応のため、本土との間で調整が必要であり、復旧に時間を要するので、障害を未然に防ぐためにも日々の点検等を注意深く行うことに留意しています。
 高層気象観測では、1日2回(9時と21時)、職員が直接気球へ水素ガスを充填して観測機器を吊り下げ飛揚して、上空の気温、湿度、風、気圧を観測します。台風接近時等悪天候の際には水素ガスの取扱いに注意し、風、雨の強弱、風向きを考慮して気球を破損させずに飛揚させ、欠測にならないことに留意しています。
 各種観測機器に塩害、経年劣化で異常がないか、日々点検を実施し、観測精度に問題がないか緊張感を持ってデータを監視しています。台風接近前には機器の設置状況を確認、養生をして台風接近に備えています。もし被災した場合は、台風通過後に素早く予備の機器に交換し、修理の手配をして復旧対応する等、緊張感をもって業務に励んでいます。

 

☆観測点の少ない北西太平洋上の観測所として、父島気象観測所が行う取組や期待される役割などについてお聞かせください。

陸地に比べて海上は、元々観測データが少ないため、気象の世界的枠組みにおいても離島での観測が求められているところです。数値予報における洋上での精度を維持するためには、父島気象観測所の観測データの評価は高く、欠測なく観測データを得ることが重要となります。
 父島気象観測所は、北西太平洋の南からやってくる台風を直接観測することができる最前線の場所にあります。本州に接近する前の台風を地上・高層観測で直接観測した気象データが、スーパーコンピュータで台風の進路を予測する数値予報モデルに使われ、予測精度向上に貢献しています。
 また、チリ沖地震等の南半球から襲来する津波の兆候をいち早く掴むことができる日本の最前線に位置しており、海面の変化をいち早く観測 して防災情報の発信に大いに役立ち、利用されています。

 

☆業務を通じてやりがいを感じたのは、どのようなことでしょうか。

父島気象観測所の観測データが、数値予報の精度向上に寄与していることや、太平洋を伝播する津波をいち早く観測すること等により、防災情報を国民の皆様に適時的確に伝えるというわが国の防災に大きく貢献していることに、職員は誇りを持っております。
 また、父島気象観測所で得られる観測データや情報、特に台風接近時の発生・進路情報等は、地元の島民に対して身近で重要な情報提供となっており、その信頼を得ていることにも、やりがいを感じております。

 

☆最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。

皆様の住む日本周辺の天気予報に、父島気象観測所の観測データが貢献していることにご理解いただけると大変うれしいですし、業務の励みになります。
 今後も皆様の安全安心のために、数少ない北西太平洋上の重要な観測地点として、貴重な観測データの収集、防災情報の発信、地域との協力に取り組んでまいります。

 
▲高層気象観測の気球を飛揚する様子
 
▲台風接近時の海上の様子。手前は観測機器
 
▲地上気象観測装置の職員による保守点検作業の様子
 
 
 
 

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