第36回(令和5年) 人事院総裁賞「職域部門」受賞

法務省 浪速少年院

  大正12年に我が国初の少年院として設置され、以降100年もの長きにわたり、非行少年の改善更生に尽力。少年院の原点としての歴史を継承しつつ、社会情勢の変化も踏まえ、情熱と使命感を持って職務を遂行し、公務の信頼の確保と向上に大きく貢献したことが認められました。

 
 
 

☆浪速少年院ではどのような業務を行っているのでしょうか。

浪速少年院は、大正12年、大阪府茨木市に我が国最初の少年院として、多摩少年院(東京都八王子市)と同時に設置されました。現在は、主として近畿地方の家庭裁判所で少年院送致決定を受けた18歳から19歳までの犯罪・非行少年を収容し、その健全な育成と社会復帰への支援を通じて再犯防止を図っています。2課2部門で構成され、教育部門では、少年の問題性を改善して社会適応を図るための矯正教育を実施し、支援部門では、少年の帰住先の調整、就職、復学・進学など、円滑な社会復帰のために必要な様々な支援を行っています。また、医務課は少年の心身に係る医療及び健康管理を担当し、庶務課は適切な生活・教育環境が保たれるよう、各課部門と連携し、教育・支援の基盤づくりを担っています。

 

☆浪速少年院について、他の少年院と異なる特徴をお聞かせください。

最大の特徴は、長年にわたり、職業訓練の専門施設であったことです。昭和三九年に職業訓練施設として指定されて以降、西日本全域の少年院から訓練生を受け入れ、様々な職業資格・技能を習得させることに取り組みました。平成27年の現行少年院法施行により、職業訓練専門施設の制度はなくなりましたが、再犯防止の前提となる安定した就労生活への足掛かりとして、職業指導はなお重要です。浪速少年院で長年培われてきた指導基盤は現在も健在であり、加えて令和五年度には、PCスキルやプログラミングを学ぶICT技術科を新設するなど、時代のニーズ等を踏まえての改廃・見直しも不断に行っています。

 

☆100年の中で、組織のターニングポイントになった出来事や最近起きている変化があれば、お聞かせください。

100年を概観しますと、少年院の基礎を築いた戦前、戦時動員体制下にありながら少年の健全育成を模索した戦中、極度の混乱下、新たな少年院設置の業務も担った終戦直後、少年院における職業訓練のセンター施設であった昭和中期~平成期、そして現在に至りますが、どの時代も試行錯誤の連続でした。 近年は、発達上の課題等の資質面や生育環境上の課題がある、いわば「生きにくさ」を抱えた少年たちの割合が高まってきていますので、より個別的でケア的な指導や医療・福祉の分野を含めた専門的支援の充実を急いでいるところです。一方で、若者を取り巻く社会経済情勢も変化しています。大学等への進学を視野に入れ、高等学校卒業程度認定試験受験指導等の修学支援に従来以上に注力するとともに、民法上成年となった18歳以上の少年たちに対する社会人教育にも取り組んでいます。

 

☆業務を通じてやりがいを感じられるのは、どのようなことでしょうか。

浪速少年院の創立期、職員たちは悪戦苦闘しつつ、「自他の敬愛」、すなわち、少年も自分も不完全な人間同士との認識を根本としつつ、少年一人一人に向き合う、「手塩に掛ける」教育に努め、今日に続く少年矯正行政の基盤を作りました。「正論」を振りかざすだけでも、「生きづらさ」にただ寄り添うだけでも、少年の健全な育成にはつながりません。日々真剣に向き合い、何が問題で何を改善すべきかを、少年自身に気付かせるしかない。根気と忍耐、心身が消耗する時間が長く続きます。それだけに、少年たちが良い方向に変わっていく姿を見るのは、とても大きなやりがいです。そして、一人の非行少年の更生は、少年自身の利益のみならず、社会の担い手が一人新たに生まれ、将来の犯罪被害の発生が防止されることをも意味します。その重要で困難な役割を担っていることは、職員の誇りであります。

 

☆最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。

少年院に送致される少年の改善更生は容易ではありません。しかし、日々の業務の中で、彼らの確かな変化、未来への可能性を実感する場面は少なくありません。そこに少年院の存在意義があるのだと思います。もっとも、本当の意味での改善更生は、少年院内で完結するものでも、職員のみで可能なものでもありません。浪速少年院が100年にわたり、役割を果たし続けてくることができたのも、地域の方々、民間協力者・支援団体の皆様に支えられてきたからです。心から感謝いたします。 我々職員は、自らも未熟で不完全な存在であることを忘れず、また、犯罪被害者の方を始め国民の皆様からの声に常に耳を傾けつつ、少年たちと共に次の100年を犯罪のない安心・安全な社会の構築へ向かって歩んでまいりたいと思います。

 
▲設置当時の浪速少年院
 
▲現在の授業風景
 
▲昭和後期の授業風景
 

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