第28回(平成27年) 人事院総裁賞「職域部門」受賞

水産庁

九州漁業調整事務所 漁業取締船白鴎丸

 我が国の排他的経済水域内において無許可操業を行った中国虎網漁船を我が国で初めて拿捕したほか、収集した情報を基に中国政府による虎網漁業への実効ある規制・管理措置につなげるなど、東シナ海における水産資源の保護及び漁業秩序の維持に大きく貢献したことが認められました。

 
 

☆漁業調整事務所ではどのような業務を行っているのでしょうか。また、漁業取締船ではどのように取締り等を行っているのでしょうか。
 九州漁業調整事務所は、山口県から九州各県の地先海面を管轄し、我が国排他的経済水域(EEZ)における水産資源の適切な保存及び管理を図るための業務を行っています。
 漁業取締船は、我が国EEZの広範囲に分布する多種多様な漁船を対象に、国籍や漁業種類、操業許可の有無、操業ルールの遵守を確認するなど、常に24時間体制で洋上の監視や立入検査を行い、違反の防止に努めています。また、違反を発見すれば、司法警察権を行使して、違反漁船を捜査、拿捕して被疑者を逮捕するなど、実効ある取締りを行っています。

☆外国漁船の違法操業は悪質・巧妙化しているとのことですが、苦労されている点や留意されている点などがあればお聞かせください。
 漁業取締りは、漁業に関する専門知識と取締りのスキルを持った漁業監督官が行っていますが、近年の違反は組織的に行われるほか、漁獲量の偽装工作を行うなど、その手口が巧妙化しています。白鴎丸では、外国漁船に関する情報の収集や分析を多角的に行って違反を暴く独自の手法を開発するなど、高度で徹底した取締りを実施しています。
 しかしながら、無許可外国漁船への取締りでは、漁船員から包丁を投げ付けられるなど激しい抵抗を受けることもあり、危険を伴います。私たちは、銃器等の装備は認められていなくても実効ある取締りを行う必要があるため、強い使命感と覚悟をもって対応していますが、安全性と実効性の両立を図ることに苦労しています。

☆平成25年2月に我が国EEZで無許可操業を行った中国虎網漁船を初めて拿捕されたとのことですが、大変緊迫した状況であったと思われますが、どのように拿捕するに至ったのでしょうか。
 我が国EEZ間際で警戒を強めて取締りに当たっていたところ、強風と荒波の中、虎網漁船1隻の我が国EEZ内での違法操業を現認しました。本船は直ちに被疑船に対し停船命令を発しましたが、これにも応じず逃走を続けましたので、本船搭載艇により決死の覚悟で本船乗組員が虎網漁船に移乗しました。虎網漁船は、様々な捜査妨害を行った上、本船乗組員を乗せたまま逃走を図るなど、極めて悪質で危険な行為に及びました。孤立した本船乗組員の身の安全確保と捜査の確実な遂行のため、最終手段として本船を虎網漁船へ強行接舷して虎網漁船を鎮圧、拿捕しましたが、荒天で虎網漁船側の激しい抵抗がある中、非常に緊迫した厳しい状況でした。

☆我が国にとって水産資源の保護と漁業秩序の維持のための漁業取締りは重要な業務だと思われますが、今後の課題や見通しについてお聞かせください。
 近年、洋上では中国の虎網漁船や灯光かぶせ網漁船、さんご密漁船といった新たな漁船が台頭するなど、漁船の種類や違反の態様が時とともに変化していますので、これまでの情報や取締手法だけでは適応できない場合もあります。
 様々な事案へ柔軟かつ的確に対応するため、漁業の現状や変化を鋭敏に把握し、創意工夫と研鑽を重ねながら実効ある取組をしていく必要があります。また、無許可漁船への取締りでは、被疑船から激しく抵抗される可能性があり、危険を伴うため、安全面においても今後更に留意して臨む必要があると考えています。

☆最後に、国民の皆様へメッセージをお願いします。
 日本は、その周囲に世界第6位の広大なEEZを有しており、その中でも日本周辺の太平洋北西海域は世界三大漁場の一つとして知られています。このように条件的に恵まれた海であっても、無秩序に利用すれば、海は荒廃し、資源は枯渇してしまいます。海の中には沢山の魚がいて、国民の皆様の食卓へ魚がいつでも供給される。そのような当たり前の環境を守り続けることが水産庁漁業監督官の使命です。私たちは、これからも一丸となり、我が国の漁業と食の将来を確保するため、水産資源と漁業秩序を守る取組を続けてまいります。

▲逃走する虎網漁船に接舷を試みる白鴎丸

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