調査を行った4社の概要は次のとおりである。
(1)A社(銀行業、グループ全体の社員1万人超)(「社員」は正社員。以下同じ。)
A社は、業態から女性従業員の割合が比較的多く4割を超えている。女性役員はいないが、課長級では女性割合が約2割、部長級では女性割合が約4%と比較的高い。近年、業績悪化に伴う人材流失を背景として、会社再建のために経営トップが潜在力としての女性の活躍を進める方針を明確に打ち出し、勤務本拠地・職種を社員が選択する制度の導入などの施策が展開されるとともに、人事運用面での女性の職域拡大や幹部登用が急速に進んでいる。
(2)B社(証券業、グループ全体の社員1万人超)
B社も女性従業員の割合がおおむね4割に近い。生え抜きの女性役員をこれまで5人登用しており、支店長の女性割合も15%程度と比較的高い。近年、女性について総合職及び転勤のないエリア総合職を中心とする採用に転換するとともに、能力実績主義に基づく女性活躍支援の明確なポリシーを表明し、女性の複数同時登用や、管理職も含めた19時前退社の徹底など、特色のある施策を展開している。
(3)C社(製造業、社員3万人超)
C社は、他の製造業にも共通するように、現段階では、女性従業員の割合は2割を下回るなどそれほど多くはない。しかしながら、事業の海外展開に伴う競争力の強化を図るため、グローバル化・多様化の経営理念を明確に掲げ、女性の採用を強化し、来年までに女性役員登用、数年後までに現在の倍以上の女性管理職登用といった数値目標を内外に明らかにして女性登用に取り組んでいる。
(4)D社(製造業、社員1万人超)
D社も製造業であり、現段階では、女性従業員の割合は約1割と多くはないが、これまでに生え抜きの女性執行役員が1人誕生している。また、女性の採用に力を入れており、大規模な社内保育所を設置するなど、仕事と育児の両立施策の充実を図っているほか、近年、管理職候補層の女性社員に対し、キャリアパスを明確にした計画的な育成施策を進めている。