パワー・ハラスメント(以下「パワハラ」という。)の問題について、民間労働法制においては、パワハラの防止対策が盛り込まれた女性活躍推進法等改正案が令和元年5月に成立した。公務においても、パワハラの防止についてこれまでも啓発資料の配布や講演会の実施などに取り組んできたところではあるが、人事院に寄せられる職員からの苦情相談の事案数(※)を見ると、パワハラを理由とする相談が、平成30年度においては979事案中230事案となっており、理由の中で最も多くを占めているなど、パワハラに関する様々な問題が生じている状況にあった。
これらの状況を踏まえ、人事院では、平成31年3月より「公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会」(座長:荒木尚志東京大学大学院法学政治学研究科教授)を開催し、同検討会は、令和2年1月に報告書を取りまとめ、提出した。人事院では、この報告書も踏まえ、パワハラの防止、救済等に関する措置を講じるため、規則10-16(パワー・ハラスメントの防止等)等を令和2年4月1日に公布した(令和2年6月1日施行)。同規則では、次の事項を定めている。
- (1) 各省各庁の長の責務として、パワハラ防止に関し必要な措置を講じなければならず、パワハラが生じた場合には必要な措置を迅速かつ適切に講じなければならないこと
- (2) 各省各庁の長は、当該府省の職員が行ったパワハラについて他の各省各庁の長から調査又は対応を求められた場合には、これに応じて必要な協力を行わなければならないこと
- (3) 各省各庁の長は、パワハラに対する苦情の申出等に起因して職員が不利益を受けることがないようにしなければならないこと
- (4) 職員はパワハラをしてはならないこと
- (5) 各省各庁の長は、研修を実施しなければならないこと
- (6) 各省各庁の長は、相談体制を整備しなければならないこと
- (7) 職員は、各府省の相談員に苦情相談を行うほか、人事院に対してもパワハラに関する苦情相談ができること
※ 事案数とは、同一人の同一内容に係る相談を、相談の回数にかかわらず1事案として捉えた数。