第1編 人事行政

第1部 人事行政この1年の主な動き

第2章 妊娠、出産、育児等と仕事の両立支援

1 男性職員の育児休業取得の促進等

(1)育児休業法改正についての意見の申出

男性職員による育児の促進について、人事院はこれまで、育児と仕事の両立支援制度の累次の改正やその周知などを行ってきた。また、政府においても、男性職員の育児に伴う休暇・休業の取得を促進するための取組が進められている。これらにより、男性職員の育児休業取得率は着実に増加してきているが、女性職員と比べていまだ低い水準にあり、休業期間も短い状況にある。

「少子化社会対策大綱」(令和2年5月29日閣議決定)では、男性の育児休業取得や育児参画を促進するための取組を総合的に推進することとされた。また、令和3年6月9日には、民間労働者について、男性の育児休業取得促進等のための「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律」(令和3年法律第58号。以下「民間育児・介護休業法等改正法」という。)が成立した。

国家公務員についても、夫婦交替等での取得を容易にし、男性職員による育児の促進や女性職員の活躍促進を更に進めるためには、職員の育児と仕事の両立を支援するための休暇や休業をより柔軟に取得できるものとする必要がある。その方策の一つとして、育児休業の取得回数制限を緩和することが適当であると認め、令和3年8月10日、人事院は、国会及び内閣に対して育児休業法の改正についての意見の申出を行った。

意見の申出の概要は、育児休業を原則2回まで(現行:原則1回まで)取得可能とするとともに、この原則2回までとは別に、子の出生後8週間以内に育児休業を2回まで(現行:1回まで)取得可能とするものである。この改正は、民間育児・介護休業法等改正法の改正事項のうち育児休業の分割取得等に係る施行日(令和4年10月1日)から遅れることなく実施することを求めた。

(2)妊娠、出産、育児等と仕事の両立支援のために一体的に講じる休暇・休業等に関する措置

(1)の意見の申出に併せて、人事院は、妊娠、出産、育児等と仕事の両立支援のため、規則の改正等により、休暇・休業等に関する措置を一体的に講じることを表明した。これらの措置の概要は、次のとおりである。

ア 育児休業の取得回数制限の緩和を踏まえた措置

  1. ① 子の出生後8週間以内の育児休業について請求期限を2週間前まで(現行:1月前まで)に短縮
  2. ② 育児参加のための休暇の対象期間を子が1歳に達する日まで(現行:産後8週間を経過する日まで)に拡大
  3. ③ 期末手当・勤勉手当における在職期間等の算定について、子の出生後8週間以内における育児休業の期間と、それ以外の育児休業の期間は合算しないこととする措置

イ 不妊治療のための休暇の新設(2で述べるとおり)

ウ 非常勤職員の育児休業等の取得要件緩和、配偶者出産休暇等の新設等(3で述べるとおり)

エ 各省各庁の長等に対する次の措置等の義務付け

  1. ① 本人・配偶者の妊娠・出産等を申し出た職員に対する育児休業制度等の周知及び育児休業の取得意向の確認のための措置
  2. ② 育児休業を取得しやすい勤務環境の整備に関する措置(研修の実施、相談体制の整備等)
  3. ③ 育児休業の取得状況の報告(人事院により公表)

これらの措置のうち、アは(1)の育児休業の取得回数制限の緩和の実施時期に合わせて実施し、エは令和4年4月1日から実施することとした。

(3)意見の申出の取扱い

人事院の意見の申出に基づき、「国家公務員の育児休業等に関する法律及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案」が令和4年2月1日に閣議決定され、同日、第208回国会に提出された。同法案は、衆議院内閣委員会、参議院内閣委員会における審議を経て、同年4月6日の参議院本会議で可決・成立し、同月13日に「国家公務員の育児休業等に関する法律及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の一部を改正する法律」(令和4年法律第19号)が公布された。

(4)規則等の改正

(2)で述べた規則の改正等により措置を講じることを表明した事項のうち、(2)エの各省各庁の長等に対する措置等の義務付けを実施するため、令和4年2月17日、規則19-0(職員の育児休業等)を改正する規則等を公布・発出し、同年4月1日から施行した。

また、各省各庁の長等が義務付けられた措置を講じる際に活用できるよう、規則等の施行に向けて、制度周知のための資料、研修教材等を作成して各府省等に提供し、各府省等における育児休業を取得しやすい勤務環境の整備に関する措置の円滑かつ効果的な実施を支援した。

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