はじめに

人事院は、公務の民主的かつ能率的な運営を国民に対し保障するという国家公務員法の基本理念の下、人事行政の公正の確保と職員の利益の保護等その使命の達成に努めてきており、人事院勧告制度を始めとする公務員制度は、行政運営の基盤として重要な機能を果たしている。

令和4年8月の人事院勧告では、行政の担い手となる「人」をどうするか、という点に着目しつつ、公務人材の確保、公正な人事評価と人への投資、勤務環境の整備、適正な給与の確保について課題と対応策を示した。

近年、若年層職員の退職者数は増加傾向にあり、民間企業等との人材獲得競争がし烈になる中で国家公務員採用試験の申込者数も減少傾向にあるなど、公務における人材の確保は厳しい状況にある。このような状況を打開するため、本院は、採用試験改革を推進するとともに、多様な経験と高い専門性を有する民間人材の誘致に取り組んでいる。さらに、職員のWell-beingの実現を図り、一人一人が意欲とやりがいを持って生き生きと働き続けられる職場環境を整えることにより、公務全体のパフォーマンスが向上するとともに公務職場の魅力が高まり、より多くの人材をひきつける。このような好循環を生み出す人事行政の実現に向けて取組を進めている。

同時に、公務員制度については、社会と公務の変化に合わせた現在の仕組みの「アップデート」に加え、公務員の新たな行動規範の確立や公務における人への投資の在り方等を通じ、公務員の職務の品質をいかに向上させるか、いわば「アップグレード」の必要性にも迫られている。

本報告書の構成は、2編からなり、第1編は「人事行政」全般について、第2編は「国家公務員倫理審査会の業務」の状況について記述している。このうち第1編は3部からなり、第1部は、上述の四つの課題への対応を始めとした令和4年度における人事行政の主な動きについて記述している。次いで第2部では、「公務組織の人材マネジメントにおけるデータやデジタルの活用の可能性」と題し、民間企業や諸外国等において、データやデジタルを活用して個々の職員の希望や事情に応じたきめ細かな人材マネジメントを実現している事例を収集し、公務において検討に着手すべき論点の整理を行っている。第3部では、令和4年度の人事院の業務状況について、各種資料を掲載して記述している。

本報告書により、人事行政及び公務員に対する理解が一層深まることを願うものである。

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