上記1の職員の働き方に対する価値観の変化等を踏まえて、各府省において近年実施している人事管理上の取組をヒアリングした。その結果、例えば、面談の機会を増やしたり、人事異動に際して職員一人一人の異動理由・異動の狙いを説明したりする等、いずれの府省においても、何らかの方法により、職員個別の状況に合わせた、よりきめ細かな対応を行っていることが分かった。各府省で実施している主な取組は以下のとおりである。
- ○ 人事担当部局として、職員に寄り添い伴走しようという丁寧さの結果として、対面の面談を実施する機会を増やしている。
- ○ これまで人事担当部局を信頼できずに退職する者がいたことに危機感を覚え、最近は職員にとって何でも相談できる部署となるよう努めており、面談回数を増やしている。
- ○ 1 on 1ミーティングに最近力を入れている。その実施方法も職員任せにするのではなく、管理職員全員にオンライン研修を受講させている。
- ○ 折に触れてキャリアパスに関する情報を職員に提供することで、職員自身及び家庭の将来の姿をイメージしてもらうようにしている。また、採用年次による画一的な人事運用を改め、本人の事情も考慮した柔軟な対応を行うようにしている。
- ○ 身上調書の記載に当たり、実際の業務が分かりにくい部署があるという若年層職員からの声に応えて、部署や係単位で、記載程度の差はあるが、最近の具体的な業務内容、業務に役立つスキル・経験などを紹介する取組を始めた。その結果、職員からは、部署や係の具体的なイメージを把握することができ、異動希望が書きやすくなったという声が得られた。
- ○ 新規ポストの設置や業務内容の拡大や変更が続き、職員に任せたい業務もそれに応じて変化するので、メンバーシップ型雇用が馴染みやすい。職員に対しては、キャリアパス全体を通した情報提供をするようにしている。
- ○ 異動の理由や異動に伴う期待について、職員全員ではないが、職員の状況を踏まえて必要に応じて伝える取組を始めた。その結果、低調だった高齢職員のパフォーマンスが向上するなど一定の効果を感じている。
- ○ 異動先が職員の希望と異なることもあるが、その際は、将来を見据えた異動であることや、今回の異動で期待することなどを個別に伝えるようにしている。職員としても、次があるので頑張ろうという気持ちになる。直近の異動だけではなく、ライフイベントも含めた将来のイメージを持たせることが重要と考えている。
- ○ 職員全員に異動理由を伝える取組を行っている。今まで培ってきた経験、次のポストでの仕事上の期待、これまでの経験と今後の経験を合わせた将来の期待の3点を伝えている。職員からは好評であるが、人事担当部局は大変な労力を要する。しかし、やりがいは異動と密接につながっており、重要視しなければならない。
あわせて、上記の取組を行っていく上で、各府省は以下のような課題を認識していることを確認できた。
- ○ 職員の人事情報のデータが人事業務のプロセス等に応じて別々に保存・管理されており、確認・検索することが大変である。人事案を考えるに当たり、機械的に処理できるところはシステムで行うことができればよいと考えている。
- ○ データやデジタルの活用を進めていくこと自体は良いことだと思う。一方で、システムの導入によって、人事管理において得られる実質的な効果の見通しがなければ意味がないと考えている。
- ○ コロナ禍以前と比べてコミュニケーションの機会が減り、上司・部下の関係が希薄になっていることもあり、モチベーションを維持したり、キャリアパスのビジョンを描いたりすることが難しい者もいると思われる。
- ○ 人事担当部局の人員を増やす必要がある。職員一人一人へのきめ細やかな対応を持続的に運営していくためには、日々の業務にいかに組み込むかが重要である。また、必要がない業務を効率化していくことも重要である。