上記のほか、ヒアリングを行った民間企業等からは、データやデジタルの活用自体はあくまで手段であるため、データやデジタルを活用して達成したい目的を設定することが重要であり、目的によってデータやデジタルの活用の在り方(例えば、収集すべきデータや使用するシステムの種類等)は異なるといった意見が見られた。また、人材に関する情報には機微な内容もあることから、あらかじめ部内でガイドラインを整備するなどして、利用目的やその取得・活用の在り方等について整理しておくことが必要であるという意見もあった。
以上を踏まえ、次章では、公務組織の人材マネジメントにおけるデータやデジタルの活用について検討していくこととする。
【コラム】「人給システム」導入時の教訓
令和5年4月現在、国家公務員の給与支給事務等を処理するため、府省共通システムである「人事・給与関係業務情報システム」(以下「人給システム」という。)が47府省等*1において利用されている*2。
人給システムの設計は平成15年から開始されたが、性能面、品質面及び機能面に様々な問題が発生し、各府省等での導入は予定どおり進まなかった。その原因として、例えば、各府省等が共通して利用する機能の洗い出しが不十分であったり、システムを利用する職員数や必要な保存データ量などの運用予測を適切に行わないままにシステムの開発を進めたことが挙げられる。その結果、各府省等への導入過程において、システム運用・改修コストが積み上がるとともに、職員数が多い府省の導入時には業務処理が滞るなどの問題が生じた。
これらの問題を解決するため、運用ルールの統一、システムの性能の向上、運用体制の強化等が行われた。これらの取組により、各府省等での導入が進み、現在のように多数の府省等で利用されるに至っている。
人給システム開発・導入から各府省における普及までの経験から、システムを設計する前に、目標実現の妨げとなる運用ルール等を見直すことや、システムの要件定義(完成後の姿)について全ての関係者に十分説明し合意を得ること、目的を共有し、関係者に主体的に取組を進めてもらうことが重要であるという教訓を得た。本章で紹介した民間企業の事例においても、この点を強く意識して取り組んでいることを確認した。
なお、人給システムの開発・導入から安定的な運用に至るまでには、様々な改善が必要であり、各府省等や当時の内閣官房情報通信技術総合戦略室等の多大な支援や協力が不可欠であったことを述べておきたい。