本報告では、第1章では公務組織をめぐる状況を述べ、第2章で職員意識調査の分析、意識比較アンケートの結果及び各府省人事担当部局に対するヒアリングの概要をまとめ、第3章で民間企業や外国政府等の人材マネジメントにおけるデータやデジタルの具体的な活用事例を紹介した。第4章では、それらの事例等を踏まえ、公務組織の人材マネジメントにおいてデータやデジタルの活用を進めていくため、検討に着手すべき論点等を中心に言及した。
人事院は、令和4年8月の「公務員人事管理に関する報告」等において、公務組織における人材の確保が極めて厳しい状況にあることを述べてきた。公務組織が能率的で活力ある組織であり続けるためには、とりわけ、これからの行政を担う若年層をひきつけることが重要であることは言うまでもない。そのためには、ここまで本報告において述べてきたように、公務組織における人材マネジメントを、個々の職員への配慮と効率性が両立したものへと変革していくことが求められている。
本報告では、そのための方策として、データやデジタルの活用について論じた。当然ながらデータやデジタルの活用自体は手段に過ぎず、目的化してはならないものである。人事院としてもこの点をよく認識しつつ、今後、内閣人事局、デジタル庁や各府省とも連携しながら、まずは第4章で述べた、タレントマネジメントシステム等のように職員に係る諸情報を蓄積して容易に活用できるプラットフォームの導入をはじめとする論点について検討を進めていきたい。
デジタルの発展は日進月歩である。昨今、文章等を自動で生成するいわゆる「生成AI」が大きな注目を集めており、政府においても、その活用に向けて整理が必要な多岐にわたる論点について、検討が進められているところである。機密情報等の取扱いをはじめ、慎重なリスク検討が必要であるが、一方で、技術の活用の可能性を積極的に探索していくことも重要であろう。この点、公務組織の人材マネジメントにおいても同じことが言える。
本報告を契機として、公務組織に求められる人材マネジメントの在り方やそれを実現する手段としてのデータやデジタルの活用に関する議論の進展が期待される。人事院としては、公務組織の人事運営の更なる向上を目指し、その役割を果たしていく。
第2部執筆メンバー(五十音順)
- 岡田 三健
- 久保 花菜子
- 澁木 亮
- 髙田 悠二
- 知念 希和
- 東 寛朗
- 松倉 ルミ
- 丸 千尋
- 宮川 豊治
- 若林 大督