1 給与勧告制度の仕組み
(1)給与勧告制度の意義と役割
国家公務員は、労働基本権が制約されているため、代償措置としての人事院の勧告(給与勧告)に基づき、給与改定が行われる仕組みとなっている。
国家公務員も勤労者であり、勤務の対価として適正な給与を支給する必要がある。人事院が給与勧告を通じて国家公務員に適正な処遇を確保することは、公務における人材の確保等にも資するものであり、能率的な行政運営を維持する上での基盤となっている。
(2)民間準拠による給与水準の改定等
給与勧告では、情勢適応の原則に基づき、その時々の経済・雇用情勢等を反映して労使交渉等によって決定される常勤の民間企業従業員の給与水準と常勤の国家公務員の給与水準を均衡させること(民間準拠)を基本としている。また、給与勧告では、俸給制度及び諸手当制度の見直しも行っている。

(3)民間給与との比較
民間給与との比較は、人事院が実施する「国家公務員給与等実態調査」及び「職種別民間給与実態調査」の結果に基づいて行っている(図3-1)。
「職種別民間給与実態調査」の調査対象は、企業規模50人以上、かつ、事業所規模50人以上の事業所としている。これは、企業規模50人以上の多くの民間企業は公務と同様の役職段階を有し、公務と同種・同等の者同士による給与比較が可能であることに加え、現行の調査対象となる事業所数であれば、調査の精確性を維持することができること等によるものである(図3-2)。
〔月例給の比較〕
月例給については、主な給与決定要素を同じくする者同士の4月分給与を比較している。給与は、一般的に、職種を始め、役職段階、勤務地域、学歴、年齢等の要素を踏まえてその水準が定まっていることから、比較に際しては、両者の給与の単純な平均値ではなく、給与決定要素を合わせた精密な比較(同種・同等比較)を行っている(図3-2)。
〔特別給の比較〕
特別給については、前年8月から当年7月までの直近1年間の民間の特別給(ボーナス)の支給実績を、公務員の特別給(期末手当及び勤勉手当)の年間支給月数と比較している。

2 令和6年の給与に関する勧告・報告
令和6年8月8日、人事院は国会及び内閣に対し、一般職の職員の給与について報告及び勧告を行った。その内容は第1部Ⅱ第1章に掲げるとおりである。
3 公務員給与の実態調査
民間給与との比較のための基礎となる国家公務員の給与の状況を把握するため、各府省の協力を得て実施した「令和6年国家公務員給与等実態調査」の概要は、次のとおりである。
(1)令和6年調査の概要
ア 調査の対象
令和6年1月15日現在に在職する給与法、任期付研究員法、任期付職員法の適用を受ける職員(休職者、派遣職員(専ら派遣先の業務に従事する職員に限る。)、在外公館勤務者等を除く。)
イ 調査項目
俸給、諸手当の受給状況、年齢、学歴、採用試験の種類等
ウ 調査の集計
令和6年4月1日における給与等の状況を集計
(2)令和6年調査結果の概要(定年の段階的な引上げに伴い、給与法附則第8項の規定に基づき
俸給月額が決定される職員を除く)
ア 職員の構成
国家公務員の人数は、250,434人となっている(図3-3)。また、全職員の平均年齢は42.0歳であり、昨年と比べ0.3歳低くなっている(図3-4)。
イ 職員の給与
令和6年4月1日における平均給与月額及び諸手当の受給状況は、表3-1及び表3-2のとおりである。
4 民間給与の実態調査
公務員給与を適切に決定するための基礎資料を得ることを目的として、都道府県、政令指定都市等の人事委員会と共同で実施した「令和6年職種別民間給与実態調査」の概要は、次のとおりである。
(1)令和6年調査の概要
ア 調査対象事業所
企業規模50人以上、かつ、事業所規模50人以上の全国の民間事業所58,405事業所。
イ 調査事業所
調査対象事業所を都道府県、政令指定都市等別に組織、規模、産業により911層に層化し、これらの層から無作為に抽出した11,686事業所。
ウ 調査方法・内容
令和6年4月22日から同年6月14日までの間において、令和6年4月分として支払われた給与月額等について、人事院及び人事委員会の職員による調査を実施。
エ 集計の方法
総計及び平均値の算出に際しては、母集団に復元。
(2)令和6年調査結果の概要
ア 調査完了事業所
調査完了事業所は、資料3-1のとおりであり、調査完了率は82.5%となっている。
イ 調査実人員
公務と類似すると認められる76職種(行政職(一)相当職種22職種、その他の職種54職種)の調査実人員は、行政職(一)相当職種が423,517人(初任給関係 29,157人、初任給関係以外 394,360人)であり、その他の職種が44,582人(初任給関係 1,942人、初任給関係以外 42,640人)である。
なお、初任給関係以外の調査職種該当者の推定数は4,282,996人であり、このうち、行政職(一)相当職種は3,531,281人である。
ウ 初任給、職種別給与及び給与改定等の状況
初任給、職種別給与及び給与改定等の状況については、資料3-2から資料3-4までのとおりである。



