第1編 人事行政

第3部 令和6年度業務状況

第5章 職員の勤務環境等

第6節 災害補償

災害補償制度は、職員が公務上の災害(公務災害)又は通勤による災害(通勤災害)を受けた場合に、その災害によって生じた損害の補塡(補償)と、被災職員の社会復帰の促進及び職員・遺族の援護を図るために必要な事業(福祉事業)を行うことを目的としている。現在、補償法等において12種類の補償及び18種類の福祉事業が定められている。その直接の実施には各実施機関(各府省等)が当たり、人事院は、補償法の完全な実施のため、実施に係る基準の制定、実施機関が行う補償等の実施についての総合調整等を行っている。

1 災害補償の制度改正

次の事項について改正を行い、令和6年4月1日から施行した。

(1)奨学援護金

奨学援護金の支給月額のうち、小学校等、中学校等及び高等学校等に係る額を次のように改定した(規則16-3(災害を受けた職員の福祉事業)の一部改正)。

奨学援護金の額
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(2)就労保育援護金

就労保育援護金の支給月額を、12,000円から8,000円に改定した。なお、現受給者の生活への影響を考慮し、施行日(令和6年4月1日)の前日から引き続き就労保育援護金の適用を受ける場合については、令和7年3月31日までの間、施行日前から引き続き保育児である者にあっては10,000円とする経過措置を講じた(規則16-3の一部改正)。

(3)特別援護金

公務災害による傷病が治癒したときに一定の障害が残った職員に支給される障害特別援護金の限度額を1,540万円から1,435万円に、通勤災害で死亡した職員の遺族に支給される遺族特別援護金の限度額を1,115万円から1,045万円に改定するとともに、各障害等級の障害特別援護金の額等についても改定した(規則16-3の一部改正等)。

(4)介護補償

介護補償の最高限度額及び最低保障額を次のように改定した(「災害補償制度の運用について」(昭和48年事務総長通知)の一部改正)。

介護補償の最高限度額及び最低保障額
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(5)平均給与額の改定率等

一般職の国家公務員の給与水準の変動等に対応して、次の事項を改正した。

  1. ア 年金たる補償に係る令和6年度の補償額の算定に用いる平均給与額の改定率等(平成2年人事院公示第8号の一部改正)

  2. イ 年金たる補償等に係る令和6年度の平均給与額の最低限度額及び最高限度額(平成4年人事院公示第6号の一部改正)

  3. ウ 令和6年度の遺族補償一時金等の算定における既支給額の再評価率(平成4年人事院公示第7号の一部改正)

  4. エ 平均給与額の最低保障額(平成8年人事院公示第11号の一部改正)

2 災害補償の実施状況

人事院では、毎年、各実施機関から前年度における補償及び福祉事業の実施状況について報告を受け、その結果を人事院ホームページ上で公表している。概要は次のとおりである。

補償法は、常勤職員・非常勤職員を問わず、一般職の国家公務員に適用され、その適用対象職員数は約45.8万人(令和5年7月現在)である。

令和5年度に実施機関が公務災害又は通勤災害と認定した件数は2,150件(公務災害1,301件、通勤災害849件)で、前年度と比べ増加した。

令和5年度における補償及び福祉事業の実施件数は6,802件(補償4,539件、福祉事業2,263件)、実施金額は約54.8億円(補償約43.1億円、福祉事業約11.7億円)で、前年度と比べ、実施件数は減少し、実施金額は増加している。

3 災害補償制度の運営

(1)補償制度の適正な運営

実施機関は、国の機関及び行政執行法人等が指定されており、被災職員等に対し補償及び福祉事業の直接的な実施に当たっている。人事院は、実施に係る基準等を定めるほか、各実施機関における公務災害及び通勤災害の認定、障害等級の決定等について、必要に応じて協議、相談に応じている。

また、実施機関における迅速かつ適正な補償等の実施のために、実施機関の担当者等の災害補償に係る制度や認定実務に対する理解を深めることを目的として、担当官会議(令和6年4月)、災害補償実務担当者研修(基礎)(同年9月~10月)、災害補償実務担当者研修(応用)(同年11月~12月)を開催した。

(2)年金たる補償等の支給に係る承認

各実施機関が年金たる補償又は特別給付金の支給決定を行う場合には、人事院において承認手続を通じて災害の内容や補償額等を確認している。

(3)民間企業の法定外給付調査

毎年人事院が実施している「民間企業の勤務条件制度等調査」の中で、労働者災害補償保険法による給付以外に個々の企業が独自の給付を行ういわゆる法定外給付に関する調査を行っている。この調査の結果を基に、民間企業の法定外給付に当たる特別援護金の支給額の改定を検討している。

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