第1編 人事行政

第3部 令和6年度業務状況

第8章 国際協力

第2節 国際協力・国際交流

1 ASEAN諸国との国際協力

ASEANでは、公務員制度・公務員人事管理に関する地域間協力を推進することを目的に、ASEAN公務協力会議(ASEAN Cooperation on Civil Service Matters,ACCSM)というネットワークを構築している。人事院は、このネットワークに日本、中国及び韓国の三国を含めたASEAN+3公務協力会議(ACCSM+3)に、我が国の代表として参画し、各種協力事業の実施を支援している。

令和6年度は、第7回ACCSM+3閣僚級会議が8月にブルネイで開催され、令和3年から令和7年までの行動計画の進捗状況の確認や、令和8年から令和12年までの次期計画の策定に向けた意見交換等が行われた。

また、令和6年10月に札幌市において、ASEAN諸国、中国、韓国及びオーストラリアの公務員人事管理に携わる課長級職員等と、OECD(経済協力開発機構)、東京大学公共政策大学院の学識経験者を招き、「Work Engagement and Well-being in the Public Service」(公務におけるワークエンゲージメントとウェルビーイング)をテーマとする国際ワークショップを主催した。

2 日中韓人事行政ネットワーク事業

平成17年1月より、人事行政分野における連携及び相互交流を進めるため、中国及び韓国の中央人事行政機関と日中韓人事行政ネットワークを構築し、各種協力事業を実施している。令和6年度は、6月に韓国において「有為な人材の公務への誘致」をテーマとする第16回三国共催シンポジウムが開催されたほか、12月には人事院が、第16回三国若手・中堅職員合同研修を主催した。

3 開発途上国等に対する技術協力

行政の基盤である公務員制度を整備し、ガバナンスを向上させるという開発途上国が抱える共通課題を踏まえ、人事院は、独立行政法人国際協力機構(JICA)が主催する開発途上国の政府職員を対象とした研修の実施等に協力している。

(1)人事管理セミナー

人事管理セミナーは、各国の中央人事行政機関等の管理職員を対象に、我が国の人事行政について、その基本的な考え方や運用、新たな動向等を紹介するとともに、討議や各国との比較研究を通じ、各国の人事行政の実情に適合した人材マネジメントを参加者自らが考える研修である。

(各国の中央人事行政機関等の上級幹部職員を対象とする「上級人事管理セミナー」と、課長補佐級職員を対象とする「人事行政セミナー」の2コースが令和5年度まで実施されていたが、令和6年度に統合された。)

令和6年度は、13か国・地域から13人が来日し、約2週間にわたり実施された。

(2)上級国家行政セミナー

各国の中央政府機関の上級幹部職員を対象に、我が国のガバナンスと社会経済の発展の経緯を紹介しつつ、様々な政策課題についての討議等を通じて、各国の社会経済の発展に資する行政の在り方を考える研修である。

令和6年度は、11か国から13人が来日し、約3週間にわたり実施された。昭和61年度の開始から令和6年度までの参加者は、合計85か国・地域397人である。

(3)ベトナム政府への支援

ベトナム政府の公務員採用試験改革に向けた取組に対し、JICAの技術協力プロジェクトを通じて、人事院は協力・支援を行っている。令和6年度は、同国内務省の職員等10人の訪日研修の際に、面接試験の実施に関する講義を行った。

(4)ウズベキスタン政府への支援

ウズベキスタン政府は、現在、公務員・国民の汚職予防意識向上に取り組んでおり、令和6年度には、人事院はこの取組に対し、JICAが実施する汚職対策促進のための訪日研修を通じて、2回にわたり協力・支援を行った。具体的には、ウズベキスタン汚職対策庁等から来日した研修員18人に対し、我が国の国家公務員倫理制度について紹介する研修を行った。

(5)キルギス政府への支援

キルギス政府は、令和3年度及び4年度にJICAが実施したキルギス・ウズベキスタン国別研修「公務員の採用・選考制度改善」を通じて得た我が国の公務員採用・選考制度の知見を参考に、公務員採用制度改善プロジェクトに取り組んでいる。人事院は、キルギス政府の本件プロジェクトを推進できるよう、令和6年度は、JICA国別研修のフォローアップ事業として、公務員採用制度改善のためのオンライン・セミナーを研修員8人に対し行った。

4 マンスフィールド研修

米国国務省は、マイク・マンスフィールド・フェローシップ法(1994年4月成立)に基づき、我が国に対する深い理解を持つ同国政府職員の育成を図るための研修(マンスフィールド研修)を行っている。

人事院は、外務省と協力して、研修員の各府省等への受入れの協議・調整、オリエンテーション、調査見学等を企画・実施している。

令和6年度は第28期研修員10人が来日し、10か月間の予定で日本の政府機関等での実務研修に参加している。

5 外国からの調査訪問対応等

我が国の公務における人事管理、人材育成等についての実態の把握等のため、令和6年度は、カンボジア、インドネシア、イラク、韓国、キルギス、マレーシア、モンゴル、台湾、タンザニア、タイ、チュニジア、英国、ウズベキスタン、ベトナムの14か国・地域と世界銀行(World Bank)やOECDから合計20 回にわたり外国政府職員等が来訪した。

また、令和7年1月には、JICAが行っている人材育成奨学計画(JDS)により、我が国で留学中の開発途上国の行政官12人が来訪した。

これら訪問者に対しては、それぞれの国・地域における人事行政等の現状や訪問者個々の問題意識に応じて我が国の公務員制度やその運用実態等について説明等を行うとともに、意見交換を行った。

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