第1編 《人事行政》

【第1部】 人事行政この1年の主な動き

第1章 適正な公務員給与の確保等

3 官民の退職給付

(1)民間企業の退職給付調査の実施

国家公務員の退職給付については、「国家公務員の総人件費に関する基本方針」(平成26年7月25日閣議決定)において、「官民比較に基づき、概ね5年ごとに退職手当支給水準の見直しを行うことを通じて、官民均衡を確保する」こととされている。これを受けて、平成28年8月、国家公務員の退職給付制度を所管している内閣総理大臣及び財務大臣から人事院総裁に対し、「本年は、前回の調査から5年後に当たるため、今般、貴院において改めて調査を実施していただくとともに、貴院の見解を承りた」いとの要請があった。人事院は、職員の給与等を担当する専門機関として、平成18年及び平成23年に調査の実施と見解の表明を行っている経緯があること等を踏まえ、平成28年10月から11月にかけて、民間企業の退職給付の制度及び支給額の調査を実施した。

(2)民間企業の退職給付調査の結果と国家公務員の退職給付に係る人事院の見解

平成29年4月19日、人事院は、内閣総理大臣及び財務大臣に対し、民間企業の退職給付調査を取りまとめた結果と国家公務員の退職給付に係る見解を表明した。

その主な内容は、以下のとおりである。

ア 民間企業の退職給付調査を取りまとめた結果

(ア) 調査方法

企業規模50人以上の民間企業41,963社から層化無作為抽出法によって抽出した7,355社を対象に平成27年度における民間企業の退職給付(退職一時金及び企業年金)制度の状況と平成27年度中に退職した勤続20年以上の事務・技術関係職種の常勤従業員の退職給付額を調査し、回答のあった4,647社から企業規模不適又は産業分類不適の企業を除いた4,493社を集計した。

(イ) 退職給付制度の概要

退職給付制度がある企業の割合は92.6%、そのうち、退職一時金制度がある企業が88.0%、企業年金制度がある企業が51.7%となっていた。

① 退職一時金制度について

退職一時金制度がある企業における退職一時金の種類(複数回答)は、「社内準備による退職一時金」を採る企業の割合が80.7%と最も高く、その主な算定方式は、退職時の基本給の全部又は一部に勤続年数別支給率を乗じる方式が44.6%、ポイント制が25.7%となっている。

② 企業年金制度について

企業年金制度がある企業における企業年金の種類別の採用割合(複数回答)は、確定給付企業年金が53.4%と最も高く、次いで確定拠出年金(企業型)が37.7%、厚生年金基金が19.4%となっている。また、退職時以降に企業年金の全部又は一部を一時金として受給することを本人が選ぶことができる選択一時金制度があるものが69.7%を占めている。

イ 退職給付水準の官民比較の結果

公務においては行政職俸給表(一)適用職員、民間企業においては公務の行政職俸給表(一)適用職員と類似すると認められる事務・技術関係職種の常勤従業員について、退職事由別(公務の定年退職と民間の定年退職、公務の応募認定退職と民間の会社都合退職)、勤続年数別に退職給付額(いずれも使用者拠出分)を対比させ、国家公務員の人員数のウエイトを用いて比較(ラスパイレス比較)を行ったところ、図1に示すとおり、1人当たり平均の退職給付額は、公務25,377千円(うち退職手当23,141千円、共済年金給付現価額(退職等年金給付及び旧職域部分の退職時点の現価額)2,236千円)に対して民間24,596千円(うち退職一時金10,061千円、企業年金現価額(年金又は一時金として支給される企業年金の退職時点の現価額)14,535千円)となり、公務が民間を781千円(3.08%)上回っていた。

図1 退職給付水準の官民比較結果
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ウ 国家公務員の退職給付に係る見解

国家公務員の退職給付は職員の退職後の生活設計を支える勤務条件的な性格を有しており、その水準については、同種の給付を行っている民間企業における退職給付の水準との均衡を図ることが社会経済情勢に適応した適正な退職給付を確保することにつながるものである。このため、官民の退職給付水準の比較結果に基づき、国家公務員の退職給付水準について見直しを行うことが適切である。

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